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社労士のお仕事 申請書類作成の基本

鹿児島で社労士をしています原田です。

前回はパソコン内で顧客情報を管理する手法についてお話しました。

 今回は申請書類作成実務の原則的な話をします。

申請書を読み解く

 よく社労士や総務担当者と行政がもめている話を聞きます。恥ずかしながら私の事務所でも時々あります。基本的に指導しているのは、行政の立場を理解して申請書を書きましょうとお話しています。

 実例を挙げてみましょう。実物の離職証明書(電子申請版)の個人情報等を消したものを参照します。

離職証明書

(1)は被保険者番号が無いと人物を特定できないので記載します。
(2)は事業所の番号で取得情報と照合するために必要です。
これが基本情報になります。
(3)はシステム上で管理されている(1)と同じであれば、件数が多い月初であれば、さっと見るだけで通るでしょう。つまり字が違うとかはチェックをすり抜ける可能性があるので、書く人が注意しなければいけません。
(4)は(8)や(10)と関係があるので、確認されます。
(5)も(2)で確認されるものと相違が無ければ、さっと見るだけでしょう。
(6)はシステムの登録と違う場合は、住所変更届が出ているかを確認されます。
(7)は画面上にありませんが、離職証明書の右側にある離職理由です。これは特定受給資格者とか特定理由資格者に該当する場合は、受給期間と関係性があるので、正しい記載が必要になります。また、労働者からの異議申し立てがありえる部分ですし、ネットには異議を申し立てると得するといったような嘘情報が流れているので重要です(だからできるだけ退職届を添付するように言われるのです)。
(8)対象期間は、本来手書きで書きやすいような書式になっています。退職日の翌日は、その下の左側の日と合うはずですし、右側の日付は1カ月後になるはずです。
(9)は遡って2年以内に12カ月以上の受給者要件確認のために記載します。11日以上が12カ月あれば問題ありません。
(10)、(11)、(12)で、失業等給付の給付額を決定します。11日以下はカウントできないので、(11)の基礎日数が必要。(9)と(11)が相違していると、どちらかが間違っている可能性があるので、確認が必要になります。

 わかっている人には当然ですが、社労士として申請する場合は各項目が何を問われているかを想定して記載する必要があります。要は社労士試験の論点を問われているのと同じです。社労士試験が文章の論点を問うのは、こうした書類について、問われている意味を考えてもらう意味があるものときっと無関係では無いと思います。

 問われていることが記載内容だけでは不明瞭の場合に、備考や特記事項で補足するのです。

 書き方を読んで、書き方通りに記載するのは当然ですが、それだけでは専門家の書類作成ではありません。

 これは取得喪失だけでなく、労災・給付金・助成金等も同じです。
行政の仕事は暇では無いので、必要な情報だけを書くように作られています。

 申請書関係は、原則的に手書きで書くことを前提に作られています。ソフトやe-Gov等は繰り返し記入する手間を簡易化するために作られているだけで、一枚も手書きをしないと、要件を満たしているか否かの意味を知らないままに申請してしまうので、ある意味理解が浅いままになる可能性はあると思います。

 労働局にヒアリングすると、多くのケースで文書出力してから審査する割合が多いと言われています。チェックしながら申請をする場合に、画面だけではチェック漏れが起こることを防げないからでしょう。

相手が人間であることを意識しましょう

私の行政経験は、社労士登録後に年度更新のお手伝いを2カ月程度したぐらいしかありませんが、多くの場合に行政に対して
・上から目線でものを言ってくる
・細かい部分でうるさい
・柔軟さが無い
と散々なことを言われていますが、行政も立場立場で仕事をしているに過ぎません。発言内容にはそれなりの理由がある場合があります。態度が悪いのは個人の問題かもしれませんが、相対する人次第で変わることもあります。

行政対応で社労士がよくやっているダメな行為は、
・細かい言い回しが違うと、「厳密に言うと違う」と指摘する人がいる
・明らかな間違いを指摘しているのに理解してくれない
・スピーディに進めるために、暗にほのめかした物言いをして、理解して欲しい場合があっても、正確な意味を問いただす人がいる。
・一部の行政施設で理解力がある行政官が便宜を図ってあげると、「あそこではやってくれたのだからここでもやれ」と言うおかげで便宜を図ってあげた方が注意される
・指導に対して、地方裁の稀な判例を持ち出してくる
・声が大きいだけで理論的でない話をする人がいる

行政と仲良くする必要はありませんが、申請において行政と戦うことにも意味がありません。クライアントの要望に近づけるために交渉する場合はありますが、戦闘モードで相手が身構えられると、より困難になる場合の方が多いです。

 また、行政は基本的に公務員ですが、労働局は非常に臨時職員が多い職場です。「非正規労働者を最も抱えているのは労働局では?」と思うぐらいに多いです。そのため、担当者に権限が少なかったり、過去の推移を知らない人も少なくありません。

相手がいることを理解した上で、分かりやすく通りやすい書類を作成するのがプロの仕事だと認識するのが社労士らしい書類作成だと思います。


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