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新型コロナウイルスが指定感染症に、インフルエンザとの労務上の違いは

本記事は、1月29日に配信したポッドキャストの書き起こしです。


※配信日は1月29日です。新型コロナウイルス感染症にかかる最新情報については、厚生労働省HPや首相官邸HPを必ず確認してください。


新型コロナウイルスが指定感染症になった意味

金山)新型コロナウイルスが指定感染症に閣議決定された、というニュースがあって、今日はそれについて話したいと思います。

1月28日に新型コロナウイルスが指定感染症に閣議決定されて、2月7日から施行されます。

(追記)その後、WHOの緊急事態宣言を受け、施行日は2月1日に前倒しとなりました。

指定感染症とは?

安達)指定感染症って何ですか❓

金山)指定感染症の説明をする前に、まず、感染症法について説明します。

感染症法という法律では、感染力の強い病気を、強い順に1類から5類まで定義づけています。

簡単に紹介すると、🚩1類がウイルス性出血熱、エボラウイルス熱、ペスト、天然痘。🚩2類が結核、MARS、SARS、鳥インフルエンザ。🚩3類がコレラ、腸チフス、赤痢。🚩4類がデング熱、ジカ熱、狂犬病。🚩5類がアメーバ赤痢、麻疹、風疹、季節性インフルエンザなどです。

定義された感染症については、届出義務が課されたり、入院した際の費用が公費で賄われたりなど、国の方で感染症を把握して対処しやすいようにするために、いろいろな定めがあります。

特に重いもの、上から1類と2類については特定の手続きを経て強制的に入院させることができます。また、1類、2類、3類については就業制限の対象となります。

以上が感染症法の説明で、じゃあ指定感染症とは何かということですが、このような法的根拠を与えるのに、今回のようにパンデミック的な広がり方をする場合、迅速に暫定的に対応する必要があります。そのため、一時的に1類から5類のどれかに暫定的に当てはめたものを、指定感染症といいます。

暫定的なものなので原則1年や2年、当てはめを行い、おそらくその後の状況次第では正式に分類される、という流れになると思います。

安達)今回の新型コロナウイルスは❓

金山)おそらく2類、鳥インフルエンザ、SARS、MARSと同じ分類に指定されるのではないかと思います。なので、就業制限の対象となったりします。(※2類感染症と同等の措置の対象です。対象通達において、就業制限の対象とされています。)

そして、それに当たらずとも、非常に感染力が強いものなので、会社としては今後対応を迫られるだろうと。

安達)さすがに出社してはダメですよね。

金山)そうですね。(新型コロナウイルスに)かかったら就業制限となるし、入院の対象にもなります。かかる前のところでも、会社として何らかの動きをする必要が出てきます。

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季節性インフルエンザとの違いは?休業手当の対象について

安達)今の季節流行しているインフルエンザは5類なんですね。

金山)そうですね。季節性インフルエンザは5類なので、感染症法で定められているものの中では一番感染力が低いものに分類されています。

安達)就業制限はないということですか❓

金山)そう。そこが新型コロナウイルスと違うところで、いわゆるインフルエンザは就業制限をする法的根拠がないということになります。

安達)でも、インフルエンザになったら5日間とか休まないといけないですよね。

金山)熱が下がってから2日とかですよね、たしか。それが、法律にもとづく強制力がない状態なんです。だからその前に出社してしまう人もいます。

それで、法律の根拠があって休ませる場合と、法律の根拠がなくて休ませる場合だと、会社が休ませた場合に支払う賃金が変わってきます。

というのは、法律の根拠にもとづいて休ませた場合(※新型コロナウイルスにかかったために休ませる場合)は、会社に責任がないということになるので、無給、つまり、休ませるのに保障はいりません。

ただ、法律の根拠なく休ませる、例えば季節性インフルエンザを理由に休ませる場合には、会社の都合にもとづいて、これ、会社の責めにもとづいてという言い方をするんですが、休ませることになるので、休業手当の支払い義務が発生します。という違いがあります。ちなみに休業手当の金額は平均賃金の100分の60です。

安達)会社が「インフルエンザだから来るな」とは言えないということですか❓

金山)来るなと言えないわけではありません。会社が「来るな」という場合には何らかのルールにもとづく必要があるので、就業規則などに定めておいて。感染症法よりも広めに就業に制限をかけることについては、会社のルールなので。例えば季節性インフルエンザを含む、感染力のあるもので、会社が定めたものについては、罹患した場合には就業を禁止する、などのように定めておいて、それに則って休業を命じると。

ただ、その場合であっても、季節性インフルエンザについては(就業制限にかかる)法律の根拠がないので、会社の方から一方的に休業を命じる場合には、100分の60の休業手当の支払いが必要になります。

ノーワークノーペイの原則と有給消化について

安達)そうすると、インフルエンザで休んでいる人は皆6割の手当を受け取っているということですか❓

金山)いえ。原則は、ノーワークノーペイといって、賃金は労働に対して支払われるものであり、休んだ日は無給です。

休業手当というのは、労働者の方に働く意思働く用意がある場合に、その意思に反して会社側が一方的に命じる場合についてのものです。普通、インフルエンザにかかった場合にはそれらの両方または一方がない状態です。

だから、一般的にインフルエンザにかかって休んでいる場合は無給です。ノーワークなので。

ちなみに、有給休暇が残っている場合に、病気による欠勤で控除されないために、有給を充てることがあります。これは、労働者の意思にもとづく場合はOKです。ただ、会社の側が強制的に、労働者が有給を取得したくないと言っているのに充てろというのはダメです。という違いがあります。

いずれにせよ、労働者の側での対策も必須ということで、手洗いうがいをしっかり行っていきましょう。



傷病手当金について

※本ポッドキャスト内ではふれませんでしたが、病気により欠勤した場合には、要件を満たせば健康保険から傷病手当金を受給することができます。

傷病手当金とは、具体的には、病気やケガで出勤できずに、欠勤日が連続して3日間あった場合に、4日目以降の日に対して支給されるものです。

1日ごとに、給与額(正確には標準報酬日額)の3分の2が支給され、支給期間は最長で1年6ヶ月間です。

上記は協会けんぽの場合です。

健保組合の場合はそれぞれ異なるので、要件や詳細は必ず確認してください。


✅(参考)新型コロナウイルスに関するQ&A

厚生労働省HPで、感染防止に向けた柔軟な働き方、労働者を休ませる場合の措置について、などの事項がまとめられていますので、一読をお勧めします。

雇用調整助成金についても案内があります。新型コロナウイルスの影響を受けて売上が減少し、従業員の休業措置を検討されている事業主の方は、要件を確認してみてください。

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