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提案する前に、相手の欲しいモノ・コトをきいてみよう

以前、「プレスリリースに書くネタがない人は、周りの人の話を心をこめて聴いてみるといい」という話を書きました。

この「聴く」(聞くではなくてね。理由も過去のコラムで書いているのでご参照下さい)という行為は、インタビュー以外にも、様々なコトに有効な手段だなあと、最近思います。

例えば、「営業」。私もライターとして、新規開拓のために出版社やwebメディアの編集部にプレゼンテーションに行くことがあります。

まあ、この歳なのでたまにですけど。ありがたいことに、すでにレギュラーのお仕事で結構首が回らない状態なので、ご紹介いただいたり、何かのご縁が会ったりした時だけ、「ご挨拶に」という体で初めての編集部にお邪魔することがあります(この辺はPR会社さんや企業広報さんと同じですね)。

そう、それで先日こんな事があったんです。

韓国フライドチキンの記事を書こうと、色々リサーチしていたら、詳しそうなライターさんがいて、その人にコメントをもらおうと思って連絡先を探したのだけど、出てこない。そこで、その人が韓国フライドチキンについての記事を寄稿していたとあるwebメディアの編集部に問い合わせしたんですね。あ、ちなみに、ライター・編集者業界では、執筆者の情報を求める同業者からの問い合わせがあったら教え合うという暗黙の了解があります(あるのか?w)。そしたら、すぐに編集長から、そのライターさんの連絡先を教える返事が来ました。

で、結局そのライターさんからは、「別に韓国フライドチキンに詳しいわけじゃないので」とコメントは固辞されたのですが、その後、問い合わせした編集部の編集長からメールが来たんです。

編集長「どうですか?コメントはとれました?」
いからし「あ、残念ながら専門外だそうで、コメントはいただけませんでした」
編集長「そうですか。ところでいからしさん、うちで書きません?」
いからし「はい?」

と、実際の文面はもっとかしこまったものでしたが、気持ち的にはこんなやりとりがあり、「じゃあ」ということでご挨拶に行くことになったんです。どうも、私のメール定型文の【仕事の実績】を読んで、「あ、なんかうちのメディアと合うかも」と思って下さったようです。

で、それまでだったら、編集部に行って「私はこれまでこんなことをして、こんなことが得意で……」と、自分のアピールポイントを一方的にまくしたてたことでしょう。

ただ、その時は違いました。まず、「ちなみに貴編集部では今どんなネタをお探しですか?」と事前にメールで尋ねたのです。

実は、その1ヶ月ほど前、とあるセミナーを受講しました。それは、経営者向けの心理学的なものなのですが、そこで公認会計士で心理カウンセラーの講師が言ったのです。

「いろんな営業の人が私のところに来るんだけど、大体自分のとこの商品やサービスについてベラベラとまくしたてて、『どうですか?』というだけ。どうですか?も何も、欲しくないんだからしょうがない。どうして最初に私が欲しい物を聴かないのだろう?」

なるほど、と思いました。

記事の提案にしても、その編集者が欲しいと思っているネタに関するものじゃないと、考えるだけ時間の無駄です。

そこで、前記した通り、挨拶に行く前にメールで聴いてみたのです。そうしたら、「こういうネタはうちでは人気です。いからしさんの仕事実績だと、これとこれはうちでは合いそうですね」とヒントをいただけました。それをもとに企画書を書いて、当日お邪魔したのです。

結果は、その企画書通りには行きませんでしたが、お互いの価値観のすり合わせは済んでいたので話は進み、「じゃあこんな感じの主旨でまず1本お願いできますか?」と執筆の仕事を受注することができました。

こうしたことは、PRの仕事にも当てはまるのではないかと、私は思います。

よく、PR会社の方で(だいたい50歳以上のベテランに多いのですが)、取り扱っている企業のプレスリリースを何の脈絡もなくメールで送りつけて来る人がいます。しかもBccで(笑)。こちらは内容的に興味がないし、「どうせBccだから」とスルーしていると、今度は電話がかかって来て「どうですか?読んでいただけましたか?」と。いや読みましたけどちょっとうちでは……と答えると、「今度直接伺ってご説明を」と来る。いやいや、こちらは今必要としていないわけで、それをどう説明されようが、変わりませんよと。でも、そういう人は口が上手いので、「押せばなんとなかる」という成功体験があります。私もかつて「つきあいだから」と無理くり記事にしてみたこともあるのですが、そういう場合はやっぱり無理が出て、面白い記事になりませんでした。

なので今は、絶対自分の仕事と合わないと思ったら、もったいぶらずに「これは無いですね」とハッキリ言います。冷たく聞こえるかもしれませんが、さっさと別のメディアの記者に当たったほうが効率的だと思うのです。

なので、そういう“プッシュ型”のPRマンを見ると、いつも思います。

なんでまず、どういうネタが欲しいか聴いてくれないんだろう?と。

最近、よくお世話になっているPR会社さん、企業広報さんは、皆こういうところをよく分かってくれていて、常に私の仕事内容をFacebookなどで確認し、「こないだ●●社の社長さんのインタビューをやってましたけど、こういう社長さんは合うんじゃないですか?」と提案してくれます。中にはわざわざ僕のためにリリースを書き直してくれているという人もいて、本当に頭が下がるというか、仕事人としてすごいなと尊敬します。

そこにあるのは、「まず相手の声を聴く」という態度です。

そんなことを考えていたら、やはりいつも仲良くしてもらっているシニアジョブの広報・安彦さんが、Facebookで同じようなことをコメントしていたので、「やっぱりそうだよね!」とちょっと安心したので、ご本人の承諾を得てここに記します。

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話術の洗練以上に僕が気をつけてるのは次の4つ
①相手に不快にならないよう品位を保つ
②余計なことは言わない
③話すより聞く、その姿勢を示す
④共感性や相手の思いを常に考える
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安彦さんの仕事ぶりを振り返ってみると、確かにそうだと思い当たります。

ちなみに安彦さんとご一緒したのがコチラの記事。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/274242
ちなみに、最近、この日刊ゲンダイの「人間百景」で取材させてもらった社長さんが、他のライターさんの取材で同じ日刊ゲンダイの「語り部の経営者たち」に掲載されることが増えました。人間百景はどちらかというとベンチャー企業の社長さんが多いので、見事「社長の哲学」をこの人から聴きたいと思わせるくらい成功されているのは嬉しい限りですですが、僕もあと少ししたら語り部で……と思っていたので、ちょっと先越された感もあり、焦ってます(笑)

さて、安彦さんの4か条は、全ての仕事に通じる極意だなと思いますし、自分も常にそうあるべきだと改めて実感しました。

今はFacebookやTwitter、noteなどSNSを通じて、商談相手の情報はたくさん入ります。また、その人とSNSでつながることで、普段からその人とコミュニケーションをとり、自然な流れで提案したりできます。僕もほとんどの仕事をSNSで繋がっている人との間で、SNSのメッセンジャー機能を使って打ち合わせや取材の日程を決めたりします。つまり僕の商圏はSNSの中にあるようなものです。これって今や特別なことではないはずです。

なので、未だにメールや電話だけで売り込みをしてくる人を見ると、「なんでこちらの商圏に入ってこないんだろう」と思うんですよね……。

すみません、偉そうですね。
なんだか話しが長くなっちゃったのでまとめると、

「プレスリリースを送る前には、相手が何を求めているか聴いた方がいい」
(で、その前に、コミュニティ=〈ゆる商圏〉を築いておいた方がいい)

以上、今回の「プレスリリースふむふむ話」でした!



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