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シンデレラになりたくなくて、必死にリスを演じた幼少期

どうも、√3です

あなたは昔、幼稚園児でしたか?それとも保育園児でしたか?私は親の都合で両方通いましたが、幼稚園児だったときの記憶しか持っていません。

そんな私が通っていた幼稚園では、定期的に楽器の演奏やら歌や劇の発表会が行われてまして、そんな幼稚園で私は、鉄琴やりたかったけどへたっぴで木琴に追いやられたり、それもどうにも下手なもんだから最終的にトライアングル鳴らしたり、カスタネット鳴らしたりしてたんですけど。

ある発表会でシンデレラの演目を披露する機会がありまして。
そうです、あのシンデレラです。
ガラスの靴履いてカボチャの馬車に乗ってすったもんだの末に玉の輿に乗るあれ。

いいですよね、シンデレラ。伝聞調でも伝わる心の綺麗さ、シンデレラのガラスの靴を手に入れたら、爪の垢を綿棒でそれはそれは綺麗に拭って、煎じて飲み干したい。
そんで、なれるものならなってみたい、お姫様。
けど、子供の頃の私は恥ずかしがり屋さんでもあった。

しかも悲しいかな、私の通っていた幼稚園には私と同じく恥ずかしがり屋な少年少女が沢山いた。

「シンデレラやりたい人ー!」という先生の声に手を挙げる子供は誰一人としていなかった。チューリップ組一同、下を向いて誰かが挙手してくれるのを待ってた。

シンデレラ役が決まらないまま意地悪なお姉さん役や魔女役が決まっていく。
今思い出しても意地悪なお姉さんや魔女役に立候補した彼らの選択は正しかった。
この後起こる熾烈な森のリス役争奪戦のことを思えば、セリフも多くなく、序盤に出番が終わる魔女役に私も立候補しておくべきだった。

一番人気があった役どころは、そう、森のリスだった。
出てたっけね、リス。シンデレラにリス出てた記憶無いんですけど、なぜかあったんです、リス役。

シンデレラが魔女と出会う森の中で、木にしがみついて遊ぶリスを演じる。

登場場面、1幕。
セリフ、無し。
一度に登場するリス役、計6名。

なんて魅力的。
そう思ったのは私だけではない。役が決まっていないチューリップ組の皆が、森のリス役に立候補した。

リス役オーディション開催。

先生の「よーい、はじめ!」の掛け声で
わっ!と木のオブジェに群がるリス。
24年経った今でも思い出せる、皆の鬼気迫る表情、鳴き声。素晴らしかった。

木に飛び移ったり、木から飛び降りたり、キーキー鳴いたり、ともすればサル園と見紛うような騒がしさではあったが、あのときあの場所は確かにリス園だった。

リス園は閉園し、飼育員から結果発表は明日になると伝えられた。
ヒトに戻ったチューリップ組の一同は、ドキドキしながら帰路についた。

私は正直自信がなかった。皆の演技は紛れもなく可愛いリスだったし、ヒトの時だってウサギやハムスターみたいな小動物的可愛さがあったし、勝ち目がないことは初めから感じていた。
だからこそ思っていた、主役のシンデレラ、あんたらやってくれよって。
私の気持ちは素で意地悪なお姉さん役。

オーディション翌日、チューリップ組に入ると先生から呼び止められた。

「√3ちゃん、シンデレラ役やってくれるかな?」
思いもよらない一言に絶句した。頭真っ白、
あのときの私どんな顔してたんだろう、先生隠し撮りしてたりしないかな。持ってたら焼き増しして送ってほしい。

栄えあるシンデレラ役はチューリップ組から二人選ばれた。
私ともう一人の女の子。
彼女も昨日のリス園にいた子だ、
先生曰く、リス役がとっても上手だった二人をシンデレラ役に抜擢したと言う。
あれほどリス役を熱望した私がリス役を勝ち取れず、ちょっと恥じらいが残る半人間・半リスみたいなあいつがリス役!?
また意地悪なお姉さん味がにじみ出してきた。溢れんばかりの不満を顔に出していたはずだが、先生は気づかないふりをしてもう一人のシンデレラに赤紙を渡しに行った。
彼女が少しだけ嬉しそうな表情を見せていた気がするけど、たぶん私の記憶違いだと思う。自分のことで精いっぱいだったし。

その後は練習を重ねて、私は綺麗なドレスを着てシンデレラ役をまっとうした。

動物園に行ってげっ歯類を見るたび、演じられなかったリスを思ってあの頃の自分に謝る。

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