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[企業研究] 楽天株式会社

激変するコロナ時代、今こそチャレンジし変化し続けている企業は、その文化とビジョンにおいて先見地名のあるものを持っていることが多いと考えます。そのような企業のCEOはご自身の考えをまとめた本を発刊されていることも多く、このNoteはその本を手に取り、また自分の経験と企業ページと照らし合わせながらOutputとしてまとめたシリーズNoteです。

楽天について

ミッション:イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントするビジョン:グローバルイノベーションカンパニー
価値観・行動指針:楽天主義 (「ブランドコンセプト」「成功のコンセプト」の2つで構成)
事業 (四季報情報):インターネットサービス51(5)、フィンテック35(14)、モバイル14(-100)【海外】18 <20・12>  

CEOの著書

発刊されて数年が経った2021年の今読むと、まさに著者が予想していた未来が来ている事に鳥肌が立った本。楽天株式会社の三木谷浩史さんの著書
・楽天流 (2014)(Marketplace 3.0: Rewriting the Rules of Borderless Business)
・競争力 (2013)
・成功の法則92条 (2012)
・人生を切り拓く人のチャンスのつかみ方(2017)
から捌いた、楽天株式会社とその創業者についての企業研究になります。

4冊の本は楽天の文化、そして三木谷さんの信念をまとめたものであるため、基本的にはブレずに類似な要旨を含んでいると言えますが、想定していそうな読み手が下記のように異なっている点で4冊とも重ね読みする価値があったと思います。
・楽天流: 楽天サービス利用者、一般、楽天の社員向けのメッセージ
・競争力:政府、日本政策や企業の決定権者、若者向けのメッセージ
・成功の法則92条:ビジネスマン、社会人、個人・組織・管理職向けのメッセージ(楽天の行動指針でもある)
・人生を切り拓く人のチャンスのつかみ方:若手の社会人・学生向けのメッセージ

三木谷さんについて

・阪神・淡路大震災から、「命の儚さ」、「今の大事さ」に気づき企業することを決めた
・過去10年の間は日本上場企業の売り上げトップ10には銀行、証券といった金融業界の全盛期。三木谷さんは金融業界の全盛期だった頃、興銀の役割は終わりを迎えると考え、入社3年後ハーバードMBAに留学。ニューヨーク証券での経験、M&A・コンサルの経験を積み、その後自ら安定した興銀を飛び出した。
・テニス、ゴルフ、登山上級者
・お父様が経済学者・社会学者の三木谷良一さん
・夢は「地球のすべての人が、幸せになれるようなシステムを築くこと」
・アベノミクスの産業競争力会議メンバー:Japan Again
・官僚主義型産業政策(規制)、経営力不足、無意味な年功序列制が経済と個人の成長の妨げになっていると考える

楽天について

・最初に創業したのは「クリムソングループ」... goo(インクトミ)
・次に、M・D・M(Magical Digital Market) ... 楽天市場の前身

楽天を成している事業のいくつかは、M&A回収により拡大しているもの
・Pinterest、楽天Edy(ソニーから)、楽天カード、楽天銀行、楽天証券等

三木谷さんの事業存続の判断基準
・収益性が高いこと
・コアビジネス(長い目で企業を支える事業)であること
・ミッションクリティカル
e.g. 文化と社会・地域コミュニティーへの貢献活動
・会員サービス、楽天イーグルス・オーケストラ・チャリティー

キーワード:Globalization

・既存のルールを見直し、グローバル展開のため、Englishnization 社内共用語英語化。その日に、思いついたらすぐに。(2010年スタート、2012年7月完全実施)
- Pros: 率直なコミュニケーション(日本語は上下関係を含む表現が多い)
- Cons: 社員のストレス、生産性低下
・日本というガラパゴスから抜け出す。連邦軍の様に、相手を理解し、信頼と実績を作りWINWIN。
・楽天が世界に誇れる2つの強み
  1. 自社開発技術プラットフォーム
  2. 自社開発プラットフォームを活用して運用する管理システム
   (サービスというおもてなし商品)
・国境、国を越えた商取引と思考
・世界のベストプラクティスから勉強せよ

キーワード:Empowerment

・企業を立ち上げるとは、企業の文化を作り上げるということ。
・顧客・社員・自分へのエンパワーメント;自律自走できる様に支援すること
定量的なKPI(目標を定める)
- 買い手と売り手を結び、その後は身を引く。マイクロマネジメントせず、自由化。
- フレックス制度ー上司の呪縛から離れる
-失敗しても何度もチャンスを与えるーギブアップしない、英語
-他人の立場で考える
・月曜朝自分たちの職場を掃除する:経営者意識/当事者意識を持って欲しい
・グローバル研修の機会
・エンジニアのキャリアパス
・楽天は終身雇用制度ではない。退職金もない。
・360°の人事評価制度(上司から部下へ、部下から上司へ)
・与えられた役目を果たすグループ vs カバーしながらチーム

キーワード:Innovation

・イノベーションは新しい組み合わせで実現
・経済成長とは、イノベーションを起こしていくこと。

実現されている/実現される未来

・メディアの変化:TV・広告からネット・「個」にメディア主流変化
・金融の変化:ネットバンキング・仮想通貨
・教育の変化
・医療の変化

5つの楽天主義

・常に改善、常に前進
e.g. 三木谷曲線 1.005^365= 6.17, 1.001^365 = 1.44, 1.01^365 = 37.85
e.g. キュレーション・コマース・改善のためPinterestに出資
e.g. 具体、明確、Detail、数値化:8分の1プロジェクト(=1/2*1/2*1/2)
e.g. 勉強し続ける
e.g. 差分+オジリナリティー=勝利
・Professionalism の徹底 仕事への情熱、仕事が楽しかどうかは気持ち次第
・仮定ー>実行→様々な角度より検証→仕組化(数値化).→ 予測(仮定)
e.g. 2分以内コール
e.g. Reverse engineering、目標より逆算、因数分解
e.g. Strategy-> Execution -> Operation
・顧客満足の最大化
・スピード!!スピード!!スピード!!(速度Velocity、俊敏さAgility)が成功への秘密兵器。まず行動して、改善する。

楽天が考えるEC

・Shopping is Entertainment;
- EC(Electronic commerce)のEはEntertainmentのE
- Discovery shopping (多様性を求める人間の欲求、繋がり、コミュニティー)
- 楽しさは利益を生む
- 人間の心理と調和したものが勝ち残る

・ECの成功に必要不可欠な3つ
1. 利便性
2.妥当な価格
3. 安全性(信頼の力)

日本経済再生への提案 「Japan Again」

1.国家としてローコスト体質にすること
2.新しいアイデアをどんどん出して、イノベーションを起こしていくこと
3.オペレーションできる力があること
- 労働力の流動化
4.国際的な展開力があること
5.ブランド力を持つこと

規制のない政策への提案
「IT autobahn構想(通行料、速度規制のない早くて安い通信インフラ)」
:一番大きな乗数効果を得られるのは通信インフラ(ICT)の国有化、無料化
-> 楽天モバイル(2019~)

労働力の流動化の提案
・問題:雇用のアンバラス(農業・介護、硬直化;終身雇用、年功序列)
・提案:ホワイトカラーエクセプション、女性・外国人労働者の活用
・役員の政策に過大な投資をする国家資本主義(モラトリアム政策)は危険、官僚体制の国際化
・対面原則、書面交付原則を撤廃すべし。
e.g. 非対面教育制度が単位として認められていない、混合診療の問題
e.g. ケインズの乗数効果の需要サイド(建設などへの投資による労働創出)と供給サイド(利用者、建設されたものの消費者)の両方の効果を算出検討する必要がある
e.g. クリエイティブ・ディストラクション。(コロナ以前)開業率も、閉業率も低い政策の助け:LCCによる旅行ビジネスの活性化を妨げ、国家資産によりJAL等の閉業に落ちいそうな企業を救済。年功序列と終身雇用により、腕のある新入り、ベンチャーが参加できないものと同様。
・資本主義に相応する税制の変化を希望
・日銀監督化、緩やかな(2%/年上昇)のインフレが必要がある
・日本人の労働力マーケットを世界へと広げる必要がある

教育に対する投資への提案、競争力=技術を作る人材の育成
・教育のROI(投下資本利益率、費用対効果)>20%
・英語とIT教育への投資
・大学ではリベラルアーツを学ぶべき
・大学教員のPeer to Peer、360°の評価制度を設けるべし
・通信教育にあったプログラムを設けるべし
・創造的な仕事ができるように、専門性を高める必要がある
e.g.ドイツのマイスター制度
・日本の従来の画一的な教育より選択の自由を重視すべき
・日本も大学入試や官僚評価制度にTOEFLを普及させるべき
・日本人が自分の主張を表に出すようにしてほしい

ブランド力を高める
・国の枠を超えて、外国人で優秀な人材が日本で活躍し、いい業績を残すことで、その国民の日本に対する好感度・ブランド力は高められる(プロスポーツ選手の外国人枠をなくす)
→ 一度日本の商品に触れると、日本に対する好感度も、別の商品の購買意欲も上がる(ビザ発給ハードルを下げて、外国人観光客を増やす)
・海外企業の本部を日本に位置されるような優遇制度を作る(次のシンガポールにする)
・デモンストレーション効果(流行りが購買意欲を高める)
・日本の魅力を世界へ発信 (安全、美食、ファッション、優しさ、観光、伝統、技術、医療)
・商品には差別化が必要
・EPAやTPP・FTAへの参加による貿易の自由化(TPP:2013年~)

[日韓中米]
・多様性と文化に包容力を持っている日本。
・インターネットにより高速成長した、企業レベルで国際化と人材育成を推進する韓国
・統制型経済のため外国人によるイノベーションは難しい、国レベルで国際化と人材育成を推進する中国
・優秀な人材を育成する、イノベーションが生まれる場所(大学研究機関、大企業、ベンチャー)を持つアメリカ

本から新しく学んだもの

[M&Aの合併の意味。(証券、クレジットカード、銀行)]
・財務上の意味以外にも、コラボレーションとエンパワーメント(哲学の土台を築き、新たな仲間から新しいインスピレーションを得る)
・新規顧客確保。特に海外マーケットの開拓。
・会社のPRにもなる。人材確保。
・長期的な展望、企業文化の相性、ビジネスの相乗効果

[シュンペーター、ケインズ、デューゼンペリー理論等の経済学用語]
競争が進むと価格競争により超過利潤が少なるのか?現実はどうか?
・シュンペーター:「イノベーションは新結合のことである」
新結合の5つのパターン
1.新しい財貨(商品)の生産
2.新しい生産方式の導入
3.新しい販売先の開発
4.新しい仕入先の獲得
5.新しい産業組織の実現
「クリエイティブ・ディストラクション(創造的破壊)」
c.f. InnovationとInvent は異なる
c.f. 経済成長にはイノベーションによる生産性上昇が伴う
・ケインズ:「失業や不況の克服に、政府が積極的に財政支出・雇用創出」
乗数効果:投資により投資金額より、K倍率の効果を得ること
 1/(1-限界消費性向)=K(乗数)
資本の限界効率
・デューゼンペリー:「デモンストレーション効果(ブランド効果と差別化、総所得と総消費をマクロ統計で分析、価値)、ラチェット効果(上を味わうと下には行かない)、相対所得仮説」のような消費関数論争での消費動向を理論化
c.f. デューゼンペリーはシュンペーターの弟子で、ケインズ派経済学者
・ミルトン・フリードマン:インフレ上等。シカゴ学派
・ラッファカーブ:税率を下げても一定基準を越すと税収が増えること

キュレーション・コマース:まとめサイト/雑誌のような情報の加工売り
(日本興業銀行->富士銀行)、第一勧業銀行が合併しみずほ銀行になったこと
東京フィルとソウルフィルの雇用体系が異なる点

[言葉]
日本の経団連、新経蓮≒アメリカのUSTR
日本語「釈迦に説法」、無謬性
言葉:「WASP」
ゲマインシャフト(共同社会)→ゲゼルシャフト(利益社会)

個人的に好きだった本「競争力」の感想

恐縮ながら私が本から感じたCEOの人柄とイメージを一言でまとめると、
「インターネット×サービスをツールに国境のない世界を作りたいと思いながらも、ちゃんと日本の未来と若者を心配しているリーダー」。
戦後から数えると日本初期世代の経済学者とも言えるお父様との会談をまとめた「競争力」は、日本の現在と今後の経済戦略を経済学理論的な側面で分析・提案し、他国との比較を、お互いをよく知っている親子の語り合いで説明していることで、「経済学」というエンジニアには大学の経済学入門講座くらいで馴染みの少ない分野のトピックと「政策」というお堅いトピックを扱いながらも、とても読みやすい形で書かれていたとても好きな本でした。
 本の内容には芯になる骨組みのキーワードや根本的な概念があり、その周りの肉付け部分の内容は時代を反映するので、本には賞味期限があると思い込んでいた私ですが、2013年に書かれていても、提唱された内容が現在実現されているものも数多くあるという検証を含めて、栄養たっぷりの経験と知識が溶け込んだ知的な会話は会話だけで本ができて、共感できる賞味期限も長いことを初めて知りました。

私が経験した「楽天株式会社」

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楽天株式会社で実際働いている私の友人の言葉を聞く限り、また、楽天の準備しているトレンド技術について知りたくて参加した2018年、2019年のRakuten Technology Conferenceで知り得た楽天の雰囲気をみる限り、楽天株式会社は次のトレンドになる技術をImplementしようと興味を持っており、優秀で多様性のある人材を位置させるために様々なバックグラウンドの社員に優しい文化を作っている企業には間違いなさそうでした。

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楽天を使い始めたのは2013年の楽天市場からで、私が日本に留学して数年が経った頃です。その頃の私自身は日本の楽天についても良くわかっておらず、誠に失礼ながら正直に言いますと楽天市場のウェブページを見てからの初印象は、

「ここ、中国か香港かどこかの怪しい販売サイトじゃない...?」

といった、漢字文字社名のロゴのインパクトが強い(外国人の私には読み方も馴染みがない)、当時無料返品を提供していたAmazonやZOZOTOWN等のECサイトに比べると自己主張が強い広告まみれのウェブサイトでした。


そこから実際使うきっかけになったのは、周りの人々の口コミでした。ポイントが貯まるシステムで金銭還元されているという部分は、学生だった私にはお得に感じられました。また、何度か利用者意見を募集していた際に商品広告バナーが多すぎるとUIの改善を提案し、それを繰り返していたら、いつの間にか今のような少し余白のある楽天市場のウェブサイトに改善されていました。

まさに、知らない技術を恐れているという、上の著書でも出ているよな典型的な消費者でしたね。楽天のECも昔も、今後の自動運転なども、きっと今後も様々な新しい技術やサービスが出てくるにつれて、Early adopterも一定数(Everett M. Rogersによると全体の約13.5%)、口コミで利用者になる人もいる反面、安全面で技術を恐る人もいるはず。技術の安全性を考慮し、改善し続けることは大事で、そのような点でまずスタートし、改善していく仕組みを取る楽天株式会社とテスラは似ているように思えました。

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