サブカルで食う
大槻ケンヂ(著)『サブカルで食う 就職せず好きなことだけやって生きていく方法』が面白い。
大槻さんは、バンド、役者、ラジオパーソナリティ、小説家など多方面の「サブカル」的なもので活躍されている方である。私は、小説『グミ・チョコレート・パイン』を読んだことがあり、そのつながりで今回、『サブカルで食う』を手に取った。
この本の中で、何らかの自己表現活動をサブカルに落とし込み、収入を得ていくために必要なことが書かれている。
才能、運、継続
この3つの中で、自分でコントロール可能なものが継続のみであることは驚きである。
大槻さんは「サブカルで食っている人」であり、サブカルを「継続」している人だろう。そんな大槻さんのエピソードや考え方の中から、「継続」することで「食っていける」ようになるために、重要だと思ったことを4つにまとめてみた。
質は気にせずにアウトプットする
1つ目が、「質は気にせずアウトプットする」ことである。
大槻さんのサブカル史の開始点である筋肉少女帯というバンド活動で、とにかく猪突猛進に自己表現している様子が、本作では語られている。当時ライブハウスでの活動が若者文化の中心にあり、そこへ参加するために大槻さんが友人と一緒に始めたバンドが筋肉少女帯だ。バンドというと楽器を演奏するのが当たり前であるが、当時のライブハウスは、音楽を演奏したい人というよりも、とにかくステージに立ちたい、何かすることでライブハウス文化に参加したい、自己表現をしたい、だれかと交流したい、という人たちが集まったよりソーシャルな場所だったそうだ。そういったライブシーンの中で、大槻さんはとにかく何かを表現するために、顔を白塗りにし、訳のわからないことを叫びながら客席に突っ込んでお客さんから悲鳴をあびるようなことをしていた。
質を気にせずアウトプットすることで、表現することに慣れたり、その分野で繋がりができることが、継続に対する1つの大きなメリットだろう。
楽観的になる
2つ目が、「楽観的になる」ことである。
本作に「油揚げ一枚で世界を変えろ」という章がある。簡単に内容を説明すると、大槻さんが日比谷野音でのライブに出掛けようとしたときに、母親に呼び止められ「油揚げ焼いたから食べていきなさい」と言われた、というエピソードをテレビで話したところ無茶苦茶ウケた(私も読みながら笑いが堪えきれなかった)ところから、次々にさんま御殿や徹子の部屋などの出演が決まった、という内容だ。一見どうでもいい話や失敗談も、大槻さんは「良いネタができた」と捉えて、それを自己表現に転換している。
このように、体験しているときはネガティブな経験であっても、楽観的に捉えることが次の表現に繋がることがわかる。
連想を大切にする
3つ目が、「連想を大切にする」ことである。
大槻さんの作詞術について語る章で、「日本印度化計画」という曲の歌詞の作り方を説明している。この歌で大槻さんは「革命」について伝えたかったそうだが、革命をそのまま表現してしまうとアングラすぎて聴いている人に受け入れられないと計算して、「俺にカレーを食わせろ!」という歌詞にして笑いを足している。
勝手な想像だが、表現者を続けているとだんだん言いたいことがなくなっていくのではないだろうか。このように、連想によって当たり前のことを別の視点で捉え直すことで飽きづらくなり、表現の幅にもなるのが良いのだろう。
好きなことはとことんやる
4つ目が、「好きなことはとことんやる」ことである。
自分の好きなものは、とにかく選り好みせずにとことんインプット・アウトプットしてみることが勧められている。これを大槻さんは「自分学校で自習をする」と呼んでいた(この例えも分かりやすく、秀逸)。本、映画、音楽、ファッションといったサブカルに触れながら、自分が何を好きなのか? 何に興味があるのか? 逆に何に興味が持てないのか? という自分の趣向を知ることが、表現の核になっていくのだろう。
ここで大槻さんが1つ注意を促していることがある。「プロのお客さんになるな」ということだ。どういうことかというと、表現者として食っていきたいなら、本質的に重要なのはアウトプットであり、インプットではない、ということだ。自分学校として大量に作品をインプットして、大量の知識(作品そのものだけでなく、チケットの取り方とか、作家周りの人間関係とかの情報も含む)を得たことで、何かを成し遂げたと勘違いしてはいけない。サブカルで食っていくために本当に大切なのは、アウトプットすることだからだ。どれだけ稚拙だとしても、インプットしたものを自分なりに咀嚼しアウトプットすることを忘れてはいけない。
なぜ「サブカルで食う」を読んだのか
まとめではないが、私が『サブカルで食う』を読んだ理由を書いておきたい。
個人的な事情も含まれているので、ここから先は有料記事にしてみる。
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