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ミュージカル「マイ・フェア・レディ」

 人生で初めてミュージカルを観劇してきました。
もう・・・とにかく素晴らしかったです。
感想をちゃんと残しておきたいと思い、筆を執りました。
(※前半は神田沙也加さんについて語っています。読めない方もいらっしゃると思いますので、各自ご判断のほどよろしくお願いいたします。)

 そもそも私がミュージカルに興味を持ったのは、神田沙也加さんがきっかけです。

こちらの動画。upされたのは約4年前です。
2010年頃ニコニコ動画にどっぷり浸かっていた私は、楽曲の懐かしさとともに、神田沙也加が歌ってみた動画を上げる時代なのかと驚きました。

いざ聴いてみると、聴き慣れた曲なのに、今までとは別の世界が見える。

歌の上手な歌い手さんはたくさんいます。
けれど、彼女の表現力は圧倒的にすごい。
演じるお仕事をされているので当然なのですが、あまりのことに衝撃を受けました。
彼女の歌を初めて聴いたわけではありません。
「アナと雪の女王」や「ソード・アート・オンライン-オーディナル・スケール-」などで、彼女が息を吹き込んできたキャラの歌声を知っています。
それでもこの時、聴き慣れた曲、ミュージカル仕立てのこの曲で、改めてその歌唱力と表現力に気付きました。
そして「生で聴いたらもっとすごいんだろうな」と思ったのが、ミュージカルを観に行こうと初めて思った瞬間です。

 幸運なことに、春から「1789-バスティーユの恋人たち-」というミュージカルに出演されることを知りました。
観たいと思った時にその機会が与えられているというのは、本当にしあわせなことです。
そして、S席チケットの値段に驚きつつ「どうせ観るなら良い席で」と、チケットを購入。
当時の私はとあるバンドのライブを生きがいにしており、劇場と同じ2,000人規模のホールでも7,000円くらいで買えていたんですよね。
初めて触れるミュージカル界の洗礼を受けました。

 そして公演2ヶ月前。
私は病気で観劇できない状態になりました。
生きる活力が枯渇している中、なんとか観に行けないかと直前まで希望を捨てずにいたのですが、残念ながら叶いませんでした。
こればかりは仕方ないです。
ただやっぱり、彼女の訃報を聞いて真っ先に思い出したのが、この舞台でした。
無理をしてでも行けばよかった。
二度と観られなくなるなんて、考えもしなかった。
後悔してもどうにもならない現実が、ただただ悲しいです。
自分にも推しにも、何があるか分かりません。
会いに行けるうちに、気持ちを伝えられるうちに、行動しましょうね。

 それからというもの「一生に一度は沙也加ちゃんの歌を生で聴きたい」「初めての観劇は沙也加ちゃんの舞台を」と思いながら、チケット会社から送られてくる出演情報メールを流し見する日々。
2018年版の「マイ・フェア・レディ」も、第43回菊田一夫演劇賞を受賞した「キューティ・ブロンド」も、観に行きたかった。
特に「キューティ・ブロンド」は映画を知っているので、「絶対似合う!」と母と話したことを覚えています。

 ロキの歌ってみた動画が上がった時は、豪華なコラボ相手とかっこいい歌声にまたしても驚かされたり、一軍スキンケアを真似してみたら肌荒れが治って感動したり。


私が元気になり、ようやく観劇できそうになった頃、世界的に厳しい状況になりました。
そして、情勢が落ち着いたら観に行こうと思っていた矢先のことでした。
今でも心のどこかで信じ切れていない私がいます。

 なかなか寝付けない日々が続く中、縋るような思いで購入したのが今回のチケットです。
まだまだ情勢が落ち着いたとは言えないし、買ったものの直前まで行ってもいいものかと悩みました。
しかし、彼女の想いを連れて演じられる舞台は、この先ないかもしれない。
彼女が愛した舞台を二度と逃すまいと、行くことに決めました。

 劇場内に入った瞬間聞こえてきたのは、オーケストラの皆さんが音出しをしている音。
久しぶりに聴く生の音!
生の音って、本当に素晴らしい。
幕が上がり、オーケストラの生演奏とともに始まる舞台。
最初は明るめの曲だったと思うのですが、急に涙が溢れてとまりませんでした。
以前全く別のオーケストラコンサートに行った時も、始まった瞬間泣いてしまったんですよね。
理由はうまく説明できないのですが、生演奏はそれだけ心に届くのだろうなと思っています。

 初めてミュージカルを観た感想としては、とにかく歌がうまい。
そりゃあそうなんですけれども。
今まで知っている「歌」とは別物なんです。
主演の朝夏まなとさんの歌は、FNS歌謡祭で耳にしていました。
なんとなく「ミュージカル特有の歌い方だな~」くらいに思っていたんです。TVの前では。
それが生で聴いたらもう、聴き慣れない発声だとかそんなこと全く関係ない。
とにかく、歌が、うまい。
下町のがさつなイライザから高貴なイライザまで、話し方はもちろん歌声も全然違う。初観劇で最も衝撃を受けたのがこの歌声です。

 あとはやっぱり、目の前で演じているというのがすごく不思議でした。
私はアニメや実写映画も好きで、広く「創られた世界」に触れる機会は多いんですが、ミュージカルはそのどれとも似ていないように思います。
まず、目の前に映る人々みんなが生きている。
スポットライトを浴びていない人々も、みんながそれぞれ動いて、喋って(いるように見える)、生活しています。
映像作品における「アップ」や「引き」が舞台にはないですよね。
だからなのか、常に舞台上にいる人みんながいきいきと見えました。
すごい。なんだこの空間は。
見えるもの、聞こえるもの、すべてに感動しました。

 芸能界に無知な私は今回のキャストさんを誰も存じ上げておりませんでしたが、母に聞くととても豪華な皆様だったようです。
その中でもひと際輝いていらっしゃる方がいました。

前田美波里さん。

最初はヒギンズ教授の母という高貴な役柄ゆえのオーラなのかなと思っていたのですが、終盤テラスでイライザと話すシーンを見たところ、どうやらそれだけではなさそうだと。
帰宅後母に聞くと「そりゃそうよ!ミュージカル界の大御所やん!」と興奮気味に言われました。
豪華なキャスト陣の中でも、別格のオーラを放つ前田美波里さん。
「世の中こんなに眩しい人がいるのか・・・」と驚きました。

 感動ポイントはまだまだあります。
全編通して、衣装がとても綺麗。
私はもともとクラシカルなお洋服が好きです。
着ていく機会がないからとネットで見るに留めていたのですが、目の前に美しい衣装が次から次へと出てくる。
特に上流階級の方々が集まるアスコット競馬場のシーンは圧巻でした。
イライザの有名なドレスもこのシーンで着用されています。
ヒギンズ教授の母もまた、ドレープが美しいグレーの素敵な衣装をお召しになっていました。
それに、競馬を見るためのオペラグラスも美しい。
ゴールドで長いハンドルがついた、小さなオペラグラス。
思わず帰りの電車で似たものが売っていないか探したほどです。見つかりませんでしたが。
納得いくものが見つかるまで探そうと思っています。
大使館の舞踏会シーンも色とりどりのドレスで、見応えありました。
全体的にパステルカラーが使用されており、ため息が出るほど綺麗な世界。
イライザの白のドレスもとても素敵です。
出番はほんのわずかでしたが、ドレスの上に羽織っていた赤いケープもすごく魅力的でした。
少ししか見られないのがもったいない。

 舞台で披露される衣装はもちろん、来場されているみなさんの服装もすごく綺麗でした。
「マイ・フェア・レディ」だからなのか、ロング丈の上品なスカートを穿いていらっしゃる方が多かったように思います。
中には和服の方もいらっしゃって、なるほどそれもいいなぁ~!とひとり興奮しておりました。
休憩時間が25分間もあることにびっくりしましたが(アニメ1話分!)、トイレの行列を見る限り必要な時間ですね。
何も知らずに10分ほど経ってからトイレへ向かった私は、第2幕が始まる直前にようやく席へ戻れました。
トイレ待ちの列に並んでいる間ずっと周りの方の服装を見ては感動し、今度は私ももっとお洒落してこよう、と胸を膨らませました。
先ほども書きましたが、クラシカルなお洋服ってどこに着ていけばいいか分からなかったんです。
ついにその答えを発見しました。
ここに着て来ればいいんだと!
これからはかわいいと思ったお洋服を買って、実際に着て楽しもうと思います。

 あと、これも印象的でした。カーテンコール。
さっきまで役を演じていた方が今度はご本人として現れる、というのもまた舞台特有ですよね。
なんだか不思議な感覚を覚えつつ、前田美波里さんの美しくかっこいい所作に見惚れ。
何度も捌けては戻って来てくださるのも、初めて見ることで新鮮でした。
豪華な衣装で颯爽と歩く姿、カーテンコールだけでも見応えがあるように思います。
何度目かで朝夏まなとさんが「まだまだ不安な状況ですが、お身体に気をつけて」というような言葉をかけてくださいました。
カンパニーの皆さんにとっても、ただでさえ完走するのが難しい状況です。
役者さん、演奏者さん、そして支えるスタッフのみなさん。
公演自体が中止になりかねない状況で、細心の注意を払いながら生活されていることと思います。
無事に千穐楽を迎えられますように。

 今回の初観劇、あまりにも多くの感動と発見があって、本当に来てよかったです。
マイ・フェア・レディを支えているすべての方に感謝を表します。
全公演引き継いでくれたチームAのみなさん。
観ることはできなかったけれど、これまで彼女とともに舞台を作りあげてきたチームKのみなさん。
そしてなにより、この舞台と出会わせてくれた神田沙也加さん。
これからもあなたのことが大好きです。
あなたのおかげで出会うことができた演劇の世界を、これからも楽しんでいきます。
重ねてにはなりますが、マイ・フェア・レディが無事に千穐楽を迎えられますよう、心からお祈りしております。

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