記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

映画「劇場版 呪術廻戦 0」

 原作未読、TVシリーズ途中棄権の私が、前日譚にあたる本作を観た感想を書いていきます。

 公開の数ヶ月前、長年追いかけてきた別作品の最終章が公開されていたので、予告映像は何度も劇場で目にしていました。さすがMAPPAだなぁ。花澤さんの声かわいいなぁ。くらいに受け取っていたと思います。
話題だし履修しておこうか、と見始めたTVシリーズは、確か1クール分ほど見て棄権しました。ちょうど真人の話が終わったあたりです。序盤から残虐なシーンが多く、精神的に削られるため、ここにたどり着くまでにもかなり時間を要しました。ちなみに鬼滅の刃も同じ理由で挫折しています。
高校生の頃は進撃の巨人を一気見していたのですが、どうも20歳を過ぎたあたりから残虐表現への耐性が急激に低下しているようです。

 さて、ではなぜ今回本作を観るに至ったか。きっかけはこちらのツイートです。

 「終映決定」という告知を初めて見ました。映画っていつの間にか終わっていることが多いですよね。
観ようと思っていたのに近場の映画館では終映していて、行ける範囲内で上映している映画館を探す・・・なんて、私は何度も経験しました。
できるだけ来場者数が減る時期を見計らっていたら、ギリギリを狙いすぎたというオチです。(ちなみにFilmarksというアプリを使い始めて以降、そんな失敗は激減しました。とても便利です。)

 MAPPAの作画が美しいこと、劇場版は映画館で観るのが一番だということは重々承知していました。この芸術作品を最も良い形で受け取れる期限は、あと2週間たらず。期間限定にまんまと釣られる人間です。早速近くの映画館の上映スケジュールを確認しました。

 映画館のサービスデーを狙って観に行こうと決めたものの、当日になってもかなり悩みました。そもそもTVシリーズを最後まで観られなかったのに大丈夫?心を抉られる可能性があると知りながら、大画面+大音量で耐えられる?悶々としながらネタバレを踏まない程度に情報収集し、上映時間が105分であることを救いにチケットを購入しました。120分以上なら諦めていたと思います。

 観終わった感想としてはまず、本当に観てよかった。観に行く決断をした私、素晴らしい。
上映後に気付いたのですが、年齢制限がないんですよね。りかちゃんが事故に遭った時「頭がぐしゃぐしゃになって・・・」という台詞がありましたが、通行人の身体に隠れて見えないようになっていました。TVシリーズで描かれた上半身だけベッドに寝かされた遺体は、完全にトラウマです。
今作では金森さんが顔をちぎられるあたりは少し目を背けましたが、あとは直視できないような場面はなかったと思います。(お金持ちの金森さん。というのが単純で、一瞬しか出てこないのに名前を覚えました。)

 ストーリー、作画、演技、すべてにおいて2時間に満たないとは思えないほどの満足感を得られました。
劇場で聴くと、棘の声ってあんなに潰れているんですね。TVシリーズで棘の呪言は一度しか聞いたことがなく、その時は「喋った!」という衝撃で声をしっかり聞けていなかったので、今回劇場で聴いて驚きました。
ラジオでご本人が「喉に負担をかける喋り方をするんだと思って、痛めるような声にした」と仰っていて感動したのですが、劇場だとそれがよく分かります。プロってすごい。
棘といえば、ノドナオルスプレーを飲み干すところも好きです。あっ!それ全部一気にいくんだ!と、思わず突っ込みそうになりました。

 映画の中で、印象的だった言葉がいくつかあります。
まず、パンダが真希の性格について説明した「人を理解したつもりになる癖がある」という言葉。(覚えるのは苦手なのでニュアンスです。ご了承ください。)私自身もそういったきらいがあるので、胸に刺さりました。他人のことはそう簡単に理解できるものではありません。忘れないようにしたいです。

 あとこちらはネタ枠といいますか、先ほどとは違った意味で印象に残った、ミゲルの「見て分かれ!」という台詞。彼の絶妙なイントネーション、たまりません。この台詞っておそらく日本語ネイティブだと「見れば分かるだろ!」になるかと思います。見て分かれ。見て分かれ。文法的に決定的な間違いがあるわけではない(と思う)のですが、なんとも不自然な感じがツボでした。
混雑したカレー屋さんの店内にて。
「俺のカレーまだ?」「イマツクッテル!ミテワカレ!」

 外せないのが、五条先生による「ひとりは寂しいよ」という言葉です。
こちらも深く刺さりました。
私は人付き合いがあまり得意ではなく、誰とも関わりたくないなぁと折に触れて思ってしまいます。ただそれは一人じゃないから思えることなんでしょう。実際にひとりで生きていけるほど強くはないのだと、改めて心に刻まれました。

 さて、見どころはたくさんありますが、やはり殻を破った乙骨くんですね。りかちゃんに「蝶よりも花よりも丁重に扱え」という乙骨くん、大変かっこよかったです。いつもりかちゃんに護られていた軟弱な乙骨くんとは思えませんでした。
同じくジャンプで連載されていた「るろうに剣心」でも、魂の抜けきった剣心が再起するのは仲間を救うためです。
五条先生が言っていた「ひとりは寂しいよ」というのは人間の真理と言いますか、自分のためだけに生きていくって難しいです。ここぞという時に踏ん張れるのは愛すべき他人あってこそなのだと、再確認しました。

 この「ひとりは寂しい」に言い返せなくて五条先生に従うことにした乙骨くんですが、出会う順番が違っていたら夏油側にいたのでしょうか。
今回は「仲間を傷つけるものはゆるさない」という揺るぎない判断基準を持っていたからこそ、迷うことなく夏油を敵に回した乙骨くんですが、そのような心を持つ前に出会っていたら。
このあたりは1回観ただけで考察するのは材料不足かと思いますが、ifを想像したくなる展開だったのでちょっと考えていきます。

 夏油と乙骨くんが初めて対峙した時、夏油は自分の方に来ないかと誘います。乙骨くんはこの時点で、夏油がどれだけ多くの人間に手を掛けたか知らず、夏油の理想を否定も肯定もしません。
五条先生が高専への入学を勧めた時、乙骨くんは閉じこもっていて、おそらく先生についても詳しく知らない状態だったと推測されます。「ひとりは寂しい」という言葉が刺さったからこそ先生に従いましたが、たとえば真人について行った順平のように、逆の立場に身を置いていた可能性は十分あるのではないでしょうか。
今作でも美々子と菜々子は自分たちを救ってくれたのが夏油だったから、彼を慕っていました。彼女たちの過去についてはほんの少ししか描かれていませんが、二人にとっては夏油が絶対的な恩人なのでしょう。
同じくジャンプで連載中の「僕のヒーローアカデミア」でも、ヴィラン=悪だという描かれ方はされていません。(原作未読のアニメ勢なので食い違いがあったらすみません。)誰しもヴィランになりうる可能性があって、ヒーローになりえた道もあって、育ってきた環境や個性によって悲しくもヴィラン側になってしまった。(もちろんこの「悲しい」というのは現代において一般的な倫理観に基づくとそうなるというだけなのですが、やはり多くの人が暮らしやすい世であってほしいものです。)
立場やタイミングが違えば全く別の人生を歩んでいたかもしれない、というのは誰にでも当てはまることですが、だからこそ、理解できない人が現れたとしても、頭ごなしに否定できたものではないなと思います。

 夏油も五条先生が「たった一人の親友」だと言い切る相手です。
高専時代の回想では違った思想を抱いていたようですが、彼の身に一体何があったのでしょう。お風呂でいろいろと想像を巡らせていたら、泡立てていた洗顔料がもっこもこになっていました。あと今回の映画を観るまで夏油をずっと「かゆ」だと思っていました。何故だろう。
殺さないと信用して棘とパンダを送り込んだ五条先生。どうしてこうなってしまったのか気になるので、原作を読んでみようかなぁという気持ちになっています。

 後半重めの話が続きましたが、映像もさすがのクオリティでしたね。
アクションシーンでは子どもの頃のようにワクワクしてしまいました。童心に帰らせてくれる起爆剤って本当に貴重で、ずっと大切にしていきたいです。
自分でも目が輝いているのが分かるくらい、とにかくかっこよかった!語彙力まで子どもに帰ってしまうほど素晴らしかったということです。

 映像面で注目したいのがもうひとつ。乙骨くんが寮から初めて登校する場面で靴紐を結ぶ様子が描かれていました。さらっと流してしまいそうですが、こちらのインタビューで「アニメで紐を結ぶというのはとても難しい」と言われています。

ちなみに冒頭で触れた別作品の最終章というのは「劇場版 Free!-the Final Stroke- 後編」のことで、こちらでも靴紐を結ぶ場面が描かれていました。そうした日常の動作を丁寧に描くところが、世界で愛される理由のひとつなのでしょう。
MAPPAさん、ユーリ!!! on ICEの劇場版も心待ちにしています。(特別内山さんの出演作を追いかけているわけではないのですが、私が好きな作品への出演率が以上に高いことに気付きました。)

 そして先ほど、終映に際して舞台挨拶の開催が発表されました。

関西に住んでいるので現地へは行けませんが、ライブビューイングでしっかりと見届けたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?