「ANIMAX MUSIX」のプロデューサーが語る、「アニメの音楽を世界へ届けたい!」「KOTOKOさんはターニングポイント」<ANIMAX MUSIX・前編>
“アニソン”ライブは好きですか?
アーティストによるパフォーマンスとファンの熱気が一体となる特別なイベント。しかし、その裏側を支える人について知らない方も多いのではないでしょうか。
今回は、2024年11月23日(土・祝)に横浜アリーナで開催される「Lemino presents ANIMAX MUSIX 2024 FALL」のプロデューサーである小島さんにインタビューを実施。イベントへの想いや裏側の工夫をたっぷり語っていただきました!
お話を聞いた人
小島さん
テレビ局、音楽番組事業者を経て2007年にアニマックスに入社。
クリエイティブディレクターとしての業務に当たりつつ、「ANIMAX MUSIX」の第1回目から演出、2020年からプロデューサーを務める。
音楽好きのクリエイティブディレクターから「ANIMAX MUSIX」のプロデューサーへ
――まず、小島さんがアニマックスに入社された経緯を教えてください。
小島さん「前に務めていた会社がスペースシャワーTVで、クリエイティブディレクターとして、オンエアプロモーションという、主にチャンネルロゴを使った映像などでのチャンネルブランディングを担当していました。当時ソニー・ピクチャーズでアニマックスとAXNの2チャンネルのクリエイティブディレクターができる人材を探していたということで、クリエイティブチームの部長として会社を移って来ました」
――スペースシャワーTVご出身ということは、もともと音楽への興味が強い?
小島さん「音楽そのものと音楽をやっている人にすごく興味があります。もともとは名古屋の地方局でADやディレクターを2年程やっていて、旅番組やグルメ番組、情報番組、音楽番組を担当しているなかで、音楽のみをちゃんとやりたくてスペースシャワーTVに転職しました。なので、地上波からスペースシャワーTV、そして今、ですね」
――入社されてからどのような経緯で「ANIMAX MUSIX」に関わることになったのでしょうか。
小島さん「入社してから2チャンネルのクリエイティブディレクターとして仕事をしていました。入社当時、アニマックスは『アニソングランプリ』という、優勝者が必ずアニメ主題歌でプロデビュー出来るイベントをやっていまして、イベント前日にフロアディレクターがいないから手伝って!と言われて(笑)。そうして関わったのがちょうど第1回でしたね」
――前日!急ですね。
小島さん「そうですね。『アニソングランプリ』は編成制作チームが対応していましたが、上手くいっていないのか、プロデューサーをやってほしいと言われてまして。ちょうど同時期にマーケティングチームが『ANIMAX MUSIX』を立ち上げることになり、そちらは演出をやってほしいと言われました。もともとスペースシャワーTVにいたから音楽イベントできますよね?できますか?いや、やってください!みたいなスタートでした (笑)」
――そこからイベントを立ち上げるなんてすごいです。大変なことも多かったのではないでしょうか?
小島さん「当時のアニマックスは、お客さんを入れてのイベントがそんなに多くなく、さらにレーベルの人たちからは、音楽イベントを開催して、さらにライブを撮影して、それを番組にすることがアニメチャンネルにできるのか…と不安視されていたそうです。
けど僕は前職で音楽番組のディレクターやプロデューサーを担当していましたので、『かっこいい映像にするので心配しないでください』と思っていて。1回、2回、3回と回数を重ねていくうちに徐々に『アニマックスさん大丈夫なんだ』という信頼を得ることができて、それは前職での音楽の仕事や経験が役立ったなと思います」
"アニソン"が浸透していない時代に、アニメの音楽を世界へ届ける
――「ANIMAX MUSIX」は2009年からはじまって15年ですが、そもそもなぜアニマックスでライブイベントを始めるに至ったんですか。
小島さん「『クールジャパン』政策は2010年から始まりましたが、
当時は”アニソン”という言葉は海外に浸透していないと思い、海外の人にわかりやすいよう”アニメミュージック”と打ち出しました。イベントのキャッチコピーも”アニメミュージックの魅力を世界へ”として。アニマックスの放送網を使って日本のアニメミュージックシーンを世界中にお届けする!そして日本のアーティストを応援する!そんな目的をもって2009年に立ち上げました。なので”興行”としてスタートしていないんですよね」
――「アニソングランプリ」との違いは何か意識されていましたか。
小島さん「『アニソングランプリ』は審査委員長がレジェンドの水木一郎さんで、いわゆる昭和のアニソンを感じさせる雰囲気がありました。『ANIMAX MUSIX』は、これから人気がでてくる、これからのアニメ音楽シーンを背負ってもらうような人たち応援するために、イベントのヘッドライナーは『マクロスF』で話題のMay'nさんにお願いをしました。
最初はステラボール、その後STUDIO COAST、JCBホールと続き、そして1年後には横浜アリーナで開催させていただきました。その後、関西でもお届けしたいと思い、オリックス劇場、グランキューブ大阪、そののちに大阪城ホールでの開催が実現しました。さらに海外でもやってみようということで、台湾で2回、中国の広州で1回開催しました。広州の評判が良く5,500人のキャパがソールドアウトしたので、その翌年には上海でもやりましょう!と盛り上がっていましたが、ちょうどコロナ禍に突入して、今は横浜アリーナ公演のみになってます…という経緯です」
――海外ファンの方にもしっかり届いたんですね!素敵!
小島さん「昔は、歌手は歌手、声優は声優として活躍される方が多かったのですが、ちょうど『ANIMAX MUSIX』を立ち上げる少し前から、声優の方がキャラクターの声で歌う『キャラソン』が、そして2009年頃からは声優の方が『アーティスト』としても人気を博し始めました。その後、アイドルアニメが盛り上がり、さらにはJ-POPアーティストも参入しと、現在は多様化しています。そんな中、イベントを15年続けさせていただく中で、南條愛乃さんや大橋彩花さんなどは、長くイベントにご出演いただき感謝しております。
お客さんのニーズと、僕らがイベントに出てほしい人たちがマッチしたこともあり、イベントを途切れることなく続けてこられたと思います」
――たしかに、思い返せばその頃、アーティストしても活躍される声優さんにスポットが当たっていた気がします。アニメはかなり詳しい層とライトな層がいるので見せ方が難しそうですよね。
小島さん「コアなお客様だけに寄らないようにするのはずっと考えてますね。コアなお客さんに刺ささりつつ、一方でライトに聞いてるお客さんでも知っている楽曲で楽しんでいただけるよう、イベントのふり幅でバランスを取れるように演出している感じですね」
ターニングポイントはKOTOKOさん!?踊りたくなる神曲
――小島さんご自身がプロデューサーとしてアニソンをより知っていくなかで、好きになったアーティストさんはいますか?
小島さん「初期の頃でいうと、May'nさんは、歌唱力、ダンスともに圧倒的なパフォーマンスで、それまでお仕事していたJ-popのアーティストとは全然毛色が違ってビックリしましたね。そういった素晴らしい方にイベントのトリをやっていただけて、イベントを綺麗に締めていただけたのは本当にありがたいですね。
あと2010年の横浜アリーナ公演に初めて出演いただいたKOTOKOさん。KOTOKOさんはゲームソングのタイアップをたくさん歌われていて”ゲーム音楽の女王”と呼ばれていましたが、北海道の音楽制作クリエイター集団『I've』というチームの楽曲も結構歌われていて。デジタルロックやクラブミュージックよりな曲もある『I've』というクリエイター集団の作る音はファンも多く。
そんなKOTOKOさんのステージを実際に見させていただいたら、踊りたくなるような音がすごくたくさんあったんですよね。本番中に指示をしているインカムを外して自分も 踊りたくなるような演出をアニメ音楽イベントで実現したい!と思うようになりました。もっともっとお客さんを盛り上げて、アップリフトさせるにはどのように演出したら良いのだろうと考えるようになって。なのでKOTOKOさんはターニングポイントになりましたね」
――KOTOKOさんは今回も出演されますよね!ちなみに小島さんが踊りたくなった曲は…?
小島さん「『Re-sublimity』です。他にも好きな楽曲はたくさんありますので今回、出演いただけるのは楽しみです!またその他のアニメ音楽で衝撃的だったのは”電波系”です。 異常にハイテンションなメロディとシュールな歌詞。この中毒性は国内外どちらの音楽シーンにも属さない、強烈なオリジナリティを感じました。2009年当時は”ボカロも盛り上がりムーブメントにもなっていましたので、”電波系”もボカロも、今まで聞いたことないジャンルの音楽という感じで面白かったです」
小島さん「”アニソン”というジャンルは、いろいろな音楽の集合体だったりするんですよね。アニメの音楽=”アニソン”というジャンルだとしたら、その中に正統派のポップスもあれば、電波系もあれば、クラブミュージック寄りもあれば、ハードロックもある。
いろんな音があるので、イベントの演出も撮影もすごく面白くて。ステージ演出をした上で、それをどう撮るかという両方とも同時に考えることがすごく楽しいですね」
――バラエティ豊かだからこそ難しさもあると思うのですが、小島さんは楽しんで演出されているんですね。
小島「単独アーティストのライブ演出は、世界観を創り込んで見せられることが面白いと思います。
『ANIMAX MUSIX』は約6時間と長いイベントですが、セットリストをどんな流れで組んでいくか、バラエティであればあるほど面白いくなると思っています。どのジャンルの音なのか、どれくらいの年齢層の方に刺さる曲なのか、どういう風に組み立てるかは、単体のアーティストとはまた別の面白さが、アニメ音楽イベントにはあると思います」
飽きさせない6時間をつくるために、格闘技好きが高じた演出とは
――ライブを飽きずに楽しめるのはこういった演出の工夫があるからなんですね。他にも工夫されていることはありますか?
小島さん「気をつけてるのはお客さん層ですね。『ANIMAX MUSIX』は20代後半がボリュームゾーンですが、世代としては10代後半から50代ぐらいまでのお客さんが来場されます。来ていただいたあらゆる年代の人たちに刺さるような曲をバランスよく入れていくことを、イベントの立ち上げ当初からずっと意識してます」
小島さん「他にも、音のない時間を極力作らない工夫もしています。イベント内の転換で待ち時間があることが、自分が客として見る時も嫌だったんです。あと当時は生配信をしておりませんでしたが、いつ生中継を出来るように、イベントの始まりから終わりまで、基本的に音はノンストップで続いている状態にしています」
――たしかに!音が途切れてしばらくするとクールダウンする感覚があります。
小島さん「2~3分、転換を無音で待たせるのはNGだと舞台チームに話していました。お客さんのテンションが下がる時間を作りたくないし、そういった時間はテレビ的には”放送事故”だと思っていましたので。
最初は『転換してるからこの時間、何もないのは当たり前ですよね、小島さん』と舞台チームに言われるなか、いつでも生中継できるように、そしてお客様のテンションを考えて『ノンストップで音を繋げたい』ということで、転換してるステージがあるなら別のステージでライブしていただくとか、その時間をVTRで繋いでずっとテンション高く見てもらおうとか提案していました。次第に、舞台チームの方から『ここ転換時間ができちゃいます、どうしますか?』と言っていただけるようになりました」
――だんだんマインドも変わっていったんですね。お客さんがずっと高ぶって盛り上がりながら応援してくれていたら、出演されるアーティストさんもうれしいですよね。
小島さん「そうですね。オープニングから盛り上がって貰いたいと思い、出演者全員ステージに出てもらうということをやっています。アーティストさんからしたら、自分の出番までに準備をすればいいところ、開演時間までに用意しないといけないので大変だと思います。それでも、『今日、出演いただくのはこのアーティストです!』とお客さんに見せることで盛り上がりますし、アーティストさんからは『お客さんの前に歌う前に立つことで心の準備ができていい』と言っていただけたこともあります。イベントの恒例となっていますが、続けてやってきて良かったなと思います」
――「これから始まるんだ!」「この人の歌が聞けるんだ!」ってワクワクしますね。ライブの最後に全員集合はよく見ますが、最初に出てもらうというアイデアはどこから?
小島さん「僕がもともと格闘技好きで(笑)。『PRIDE』というイベントがあったのですが、最初に戦う格闘家が出てくるんですよ。試合で戦うA選手とB選手が並んで、次の試合の選手同士も並んでいって…。すごく高まっていくので、このイベントでも取り入れよう!って」
――ご自身の高まった経験を生かしての演出だったんですね。イベント楽しみです!
(取材・文 ヤマ)