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業界全体で抱える課題を解決したい―。不動産業界にいたからこそ見えてきた課題に取り組むB2Bスタートアップ立ち上げの経緯【利用者インタビュー第四弾】RESTAR CEO右納 響

「当時は、不動産売買に必要な情報を紙からExcelに転記するために、打ち込みまくっていました」そう話すのは、RESTAR株式会社 CEOの右納 響さん。

RESTARは、不動産情報に関する情報検索分析プラットフォーム「REMITIS」を開発しているBtoBスタートアップです。不動産投資や用地取得の業務効率化、投資機会を増やすことを目指しており、主に不動産ディベロッパーや不動産ファンド、銀行等の金融機関などが利用しています。

今回は、「知の還流」がコンセプトのインキュベーションオフィス「SPROUND」に入居する企業、通称SPROUNDERの入居者インタビュー第4弾として、RESTAR CEOの右納さんにお話を伺います。右納さんのこれまでのキャリアや起業するに至ったきっかけ、会社のカルチャーなどについてお話しいただきました。

聞き手は、DNX VenturesのPrincipal、向川恭平さんです。

 高校時代から働きたかった、ファンドの世界へ

向川:まずは、RESTAR創業前の話で、これまでどういったキャリアを歩んできたのかをお伺いさせていただきたいなと思います。

右納:高校時代から投資ファンドで働き、投資の仕事をしたいと考えていました。当時、個人的にアパレルやファッションブランドといった、ブランドの世界が好きで、パリコレの写真をよく見ていたんです。ファッションブランドの世界って、M&Aがとても多い業界なんですよね。そこから投資やM&Aに興味を持ち始め、M&Aアドバイザリーの募集をしていた、PwCアドバイザリー合同会社(以下、PwC)へ新卒で就職し、3年間在籍していました。最初の1年くらいは法人のM&Aや企業間の経営統合を担当、後半の2年くらいは、商社や国内のエネルギー会社、金融機関が海外の資源やインフラ投資をするお手伝いをしていました。

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右納 響/Hibiki Uno
RESTAR株式会社 CEO
公認会計士試験合格後、PwCアドバイザリー合同会社にてM&Aアドバイザリー・プロジェクトファイナンスの支援業務等に従事。その後、米国のオルタナティブ運用会社アンジェロ・ゴードンにて、不動産投資業務に従事。
公認会計士/一橋大学経済学部卒

向川:まさに、僕は三菱商事のインフラ部門で水事業にいたので、右納さんが関わっていたかもしれませんね笑

右納:そうですね。そこから、アンジェロ・ゴードンという外資系の投資会社に転職しました。アメリカ法人の日本オフィスで、当時国内には、不動産投資をする部門しかありませんでした。好立地の古くなったビルを買ってリノベーションし、転売するのが主な事業内容でした。

向川:アンジェロ・ゴードンに不動産投資部門しかないということは、PwCから転職を決めた時点で、自分のマーケットは不動産だという決意があったということですか。

右納:転職をするときはなにも考えていませんでした。たまたまエージェントから紹介を受け、話を聞いてみると、その後の上司となる方の説明や話しぶり、会社の投資戦略がすごい面白いなと思いました。正直、それまで不動産には興味が全然なかったのですが、たまたまご縁もいただき、やっている人の話を聞いて、面白みを感じたので転職したというのが経緯ですね。

自分の仕事を楽にしたかった

向川:アンジェロ・ゴードンで仕事をするなかで、そこからRESTAR創業にいたるビジネスモデルを思いついたのかなと思うんですが、そのあたりの話をお伺いしたいです。

右納:仕事自体は面白かったんですが、使っているツールが古く、オンプレのシステムがあったり、FAXを多用していたり、仕事の非効率具合にフラストレーションが溜まっていきました。私は、4人いた日本の投資チームの中で1番若手だったので、手を動かす作業は全部私がやることになります。一方、上司は、パートナーやお客様とミーティングやネットワーキングのために会食に出かけるわけです。はじめのうちは、私にコミュニケーション能力やネゴシエーション能力がなかったからだと思います。とはいえ、作業が多く、留守番することがほとんどで、歯がゆい部分もありました。一人お留守番だと、経験や人的ネットワークという面からみても、永遠に上司との差が埋まりません。資料をつくることは必要ですし、分析も楽しいのですが、3時間かけていることを1時間とかに短縮出来れば、別のことに時間を充てられるのではないかと思いました。そこで、情報収集や分析の仕事を楽にするために休日に始めた活動が、RESTARの原点です。

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向川 恭平/Kyohei Mukaigawa
DNX Ventures Principal
東京大学経済学部経営学科修了後、2009年に三菱商事株式会社に入社。上下水道事業分野において海外設計・運転管理会社のM&A業務に携わった他、国内自治体に対する官民連携コンサルティング業務に従事。2018年にUC Berkeley Haas School of Business MBAを取得。

向川:不動産売買のプロセスにおいて、情報収集は人的ネットワークで入手することが出来ても、情報整理を行い、分析し、意味のあるインサイトを出すのに、すごく時間がかかりそうですね。

右納:当時は、紙に書いてある情報をExcelに打ち込みまくるといった作業も当然していました。僕の転職先が独立系の投資会社だったこともあり、データベースがあまりなく、PwCで働いていた頃に当たり前に使っていた情報分析などの便利ツールも、その会社では簡易なものしか使っていませんでした。このため、リサーチや資料作成はとても時間がかかる作業で、より良くできる部分はあるなと感じていました。個別性が強い内容に関して、そういった作業が残るのは、仕方ないと思います。しかし、不動産業界の全社が必ずやっている手入力の作業時間を有効的に使うことが出来れば、良いことがあるのではないかと考えていました。

向川:最初、週末の活動として始めたプロジェクトが、いよいよ本格的に起業する転機きっかけって、何だったのでしょうか。

右納:メンバーが見つかったことですね。当時大学院生で、現在はCTOである横田と週末プロジェクトとして一緒に始めました。とはいえ、僕の本業が忙しく、会社に所属したままでは永遠にプロジェクトが進まないと思いました。当時いた会社の給料は高く、そのまま頑張ればいい生活が送れましたが、彼と仕事をするほうが楽しくて。横田も「最悪、AIとかの受託を請け負えばメンバーを食わせられるよ」と言ってくれたんですよね。僕は、いま意思決定をしないと、彼のようなエンジニアと一緒に働く機会は今後ないなと思いました。5年後、10年後に経験を積んで始めるというアイディアもありました。そのときに横田のような人間と一緒できる保証はなく、むしろ40歳のおじさんについて来てくれる優秀なエンジニアがいるかと思ったときに、その自信はありませんでした。プロダクトは全然出来ていない状況でしたが、これも縁なのかなと思い、RESTARを始めることにしました。


RESTARに所属する多様なメンバー

向川:現在、会社の規模やメンバー構成はどのようになっていますか。

右納:副業を含めると30人いるんですが、このうちフルタイムは9名です。エンジニアが4人いて、セールスが2人、人事が1人、そしてデータのマネジメント管理や分析をしている人が1人というバランスです。

向川:僕自身、何度かメンバーの方ともお話させていただきましたが、外国籍の方も多数いらっしゃいますよね。社内の意思疎通はどのように図っているのでしょうか。

右納:そうですね、フルタイムメンバー9人のうち、3人が外国籍で、1人は、パスポートが日本なんですが、ほぼ育ちが海外なので、実質外国人といったチーム構成です。なので、社内のチャットは半分日本語、半分英語で混ざっています。一応、外国籍のメンバーも日本語が分かるので、本人が話しやすい言語で話してもらう感じです。あと、資料が英語のときは日本語で話したり、その逆もあったりする中で、分かんなかったら聞いてねという形でやっています。

向川:DNXと似ていて、面白いですね。具体的には、どういったバックグラウンドを持つメンバーがいらっしゃるのでしょうか。また、会社としてどのようなカルチャーができつつあるのでしょうか。

右納:バックグラウンドは金融系が多いですね。なので、真面目な人がほとんどです。ちょうど、今朝副業で手伝ってもらっている方と雑談していたんですが、その方自身はほかのスタートアップも手伝っていて、「他のスタートアップと比べると、RESTARのメンバーは質実剛健な感じがする」と言われました。

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向川:なるほど、そうであればプロフェッショナルファームや大企業から転職してきても、カルチャーギャップはそこまでなさそうですね。

右納:カルチャーギャップは比較的小さいと思います。今いるメンバーは、大企業とスタートアップの違いは理解していますが、働き方自体にあまり大きな違いはないかなと思います。もし、あったとしても、話せば理解してもらえることが多いですね。

向川:会社も成長中と思いますが、今はどのような方に入社してもらいたいと考えておりますか。

右納:エンジニアサイドだと、外国籍のメンバーが増えすぎて、日本語ネイティブの人があまりいないんですよね。社内のコミュニケーションは英語で問題ないですし、開発上も必要ありません。しかし、顧客とミーティングをするときや導入する上での質問があった際に、内容は理解できるものの、日本語で説明したり、文章を書く際のハードルが高いことが多くて。これまでは、エンジニアリング能力があり、カルチャーフィットができれば、年齢や国籍は関係ないよねと採用してきたので、結果的に外国籍の方が多く集まっています。今は、外国籍のメンバーさえ「もう1人くらい日本人がいたほうが良くないか」と言い出している状況です。(笑)

セールス側でいうと、ユーザーの気持ちが分かる方が1番かなと思っています。ユーザーはプロフェッショナルファームや専門性の高い業務をやられている方々です。そういったユーザーの気持ちがわからないと、なかなか営業がしづらいですし、サービスの理解度が高くなりません。金融や不動産のバックグラウンドを持っている方や、不動産の仕組みを理解している方で、我々のサービスや会社の方針に共感していただける方がチームにフィットしやすいかなと思います。

SPROUNDは、エンタープライズ向けのBtoBスタートアップに勧めたい

向川:RESTARさんは、SPROUNDオープン時から入居いただいていますが、当時なぜ入居を決めていただけたのでしょうか。

右納:入居の1年前くらいから、メンバーにオフィスが狭いと言われていました。4人部屋を5人で使っていることが多く、6人目が来たら、私は追い出されてスタバで働いてるみたいな働き方だったんです笑。ただ、我々が引っ越すにあたって1番気にしていたのがセキュリティでした。大企業にサービスを導入するにあたって、オフィスに鍵や監視カメラがついているか、受付に人がいて、人の出入りを目で見て確認しているかなど、セキュリティが担保されていることを言えないと、そもそも導入できないという状況がありました。以前いたところはそういった体制が多少整っていたものの、スタートアップ向けでそうしたセキュリティの機能を持っているオフィスはほとんどないんです。そうした点において、SPROUNDは我々の求める内容に近かったというところが入居の決め手です。

向川:その観点はなかなか新鮮です。ご指摘の通り、受付に常駐の方がいて、SPROUND内と各社の部屋にセキュリティの鍵がついていますからね。

右納:恐らく、ほかのBtoBスタートアップで、エンタープライズに導入しようとしている会社さんは、同じ要求が本質的にはあるはずだと思います。

向川:実際に入居されてみていかがですか。どのような点で魅力に感じられておりますか。

右納:DNXさんが入居者向けに提供してくれるコンテンツに関しては、BtoB SaaSの教科書的な部分もあり、参加して聞いておきたいと思いますね。一方で、他の企業さんに相談したり、お話したりすることができるのが特に魅力です。ネットで検索して出てくる内容ではなく、正解もない中で各社どうしているかを気軽に聞くことが出来ます。Messengerで誰かに聞くほどのものでもないかなということも、気軽に聞けるので、助かっていますね。また、起業家どうしやCXO向けのセッションなどで、登壇者や入居者同士で突っ込んっだ話ができることも魅力の一つです。


既に大手の商社やディベロッパー、金融機関等で活用されている「REMITIS」
今後は、事業領域を不動産・金融業から小売にも広げ、より多くの企業の導入が期待されています。SPROUNDも引き続き、RESTARの飛躍にむけて、支援してまいります!

(文:島袋 響 / 聞き手:向川 恭平 / 編集:上野 なつみ)

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