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仕掛け人が語るSPROUNDオープンまでの軌跡③ CEKAI加藤氏に聞く「コンセプトの言語化からデザイン・コミュニティ試作までクリエイターと共創」

「SPROUNDに関わる人たちの熱量に惹かれ、僕もそれに応えようと思った。」

そう語るのは、SPROUNDのクリエイティブ全般を担ったCEKAIの加藤晃央さんです。

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SPROUNDがオープンを迎えるまでの軌跡、そこに関わる人々の想いを紹介する連載企画「SPROUNDオープンまでの軌跡」

第3回は、株式会社CEKAIよりの加藤晃央さん、インタビュアーにはDNX Venturesより上野なつみさんをお迎えしました。

お二方はかつて、加藤さんが設立された株式会社モーフィングで共に働かれていたこともあり、非常に和やかで暖かい雰囲気の対談となりました。

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加藤晃央(写真左)
世界株式会社/CEKAI 共同代表
1983年、長野県生まれ。2006年、武蔵野美術大学4年在学時に起業し、株式
会社モーフィングを設立。クリエイターと共に商品開発や広告企画制作請負を行う他、美大生のフリーマガジンPARTNERの発行、美大総合展覧会THE SIXを立ち上げる。2013年、同世代のフリーランス化や独立起業の流れの中、個が集結できる場所としてクリエイティブアソシエーションCEKAI / 世界株式会社を井口皓太と共に設立。2018年、クリエイターのためのコレクティブスタジオ「村世界」を開村。2019年、クレジットデータベースBAUSをリリース。クリエイターの可能性を高め、繋げ、拡張させることをミッションとし究極の裏方を目指している。
上野なつみ(写真右)
DNX Ventures Head of Marketing & Ops
多摩美術大学在学中より株式会社モーフィングにて4年間長期インターン。卒業後、2011年に三井物産株式会社へ入社。本店情報産業本部にて液晶パネル事業を担当。その後、株式会社モーフィングへ転職し、同社執行役員として美大生及びその卒業生を対象としたクリエイターネットワーク事業を統括したほか、制作ディレクター、人事広報などのバックオフィス業務、ウェブメディアの編集長などを歴任。2018年10月より現職。DNX日本サイドにて、イベント企画運営を含むミドルバック業務、広報・マーケティング業務、バックオフィス業務を担当。また、その傍らインキュベーションオフィスSPROUND立ち上げ・運営を統括。コミュニティマネージャーとしても活動。

ーーSPROUNDのクリエイティブ全般を担ってみて

DNX上野 ひとまずオープンお疲れ様でした!今日はSPROUNDのクリエイティブ全般について色んなお話ができたら嬉しいです。よろしくお願いします!

CEKAI加藤 お疲れ様です。是非色々とお話しさせてください。こちらこそよろしくお願いします!

DNX上野 さて、早速ですが今回SPROUNDにおけるクリエイティブ全般を担当して頂きました。なぜこのプロジェクトに参加しようと思ったのですか?また、実際にここまで走ってきていかがでしたか?

CEKAI加藤 僕らみたいなクリエイティブチームは、ロゴやネーミング、Webサイトなど、ある程度規格や形式の決まった「モノ」を依頼されて制作するケースが多いのですが、今回のSPROUNDは何も決まっていない真っ新な状態でVISION、コンセプトメイクに携わることが出来たので、いつも以上にチャレンジングで楽しみでした。
なにもないからこそ、なんでもできる。クリエイティブの価値を最大限引き出すことのできるプロジェクトだと感じました。「あれやりたい!」「これ面白そう!」みたいなシンプルな感情で動けちゃうところが嬉しかったですね。

DNX上野 確かに最初にご提案頂いた時、すごい数のアイデアを持ってきてくださいましたね(笑)

CEKAI加藤 懐かしいですね。今振り返ると多少の変更はあれど、最初の提案で考えていったアイデアはほぼ実現できましたね。自分で提案しておいてなんですが、採用されればされるほど大変になっていきました(笑)
ただ、こればかりは僕らのアイデアに対して「いいですね、やってみましょう!」と、それらを実現させてくださった金谷さん含め日鉄興和不動産の方々に感謝です。

DNX上野 すごく良いチームでしたね。短期集中型のプロジェクトということもありましたが、みんなが前向きに柔軟に取り組んでいたと思います。

CEKAI加藤 そうですね。そういった意味では、関わる人たちの「熱量」が非常にこもったプロジェクトだなと感じました。僕は普段から「熱量」「エネルギー」といった言葉をとても大切にしているのですが、今回はそれが凄かった。なつみさんや金谷さんを中心に、熱量が伝播し、その輪が徐々に広がっていく様を目の前で感じましたし、それを見て、僕らはクリエイティブで応えようと思いました。

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ーースタートアップのコアクリエイティブ創り

DNX上野 今回、SPROUNDのコンセプト策定から実際のモノづくりまで幅広く支援して頂きましたが、何か大切にされていたことはありますか?

CEKAI加藤 「誰を巻き込んでいくか」ということを非常に重要視しました。僕らCEKAIはいつも固定のメンバーで仕事をするのではなく、プロジェクトに合わせて柔軟にメンバーを集め、遊軍的にチームを結成していきます。特に今回はB2Bスタートアップ業界という、クリエイターにはあまり馴染みのない分野のプロジェクトだったため、その分野に関心・熱量があるのかどうかを重視しました。

DNX上野 関心・熱量がないプロジェクトだと、ただただビジュアル面に寄っていってしまいますもんね。そういった背景を前提に、今回は小田雄太さん(COMPOUND)山根哲也さん(ライトパブリシティ)にご参画いただきました。

CEKAI加藤 小田さんはこれまでに100BANCHなど、新たなアイデア・ビジネスを生み出す空間をつくるプロジェクトのご経験があったので、今回は白紙の段階から参画してもらうことで、その経験を最大限活かしていただこうと思い、お願いしました。山根さんもクリエイティブ業界の中心にいながら、ベンチャーやスタートアップ業界に関心もある珍しい方です。今回のプロジェクトをお願いした次の日すぐにスタートアップ関連の施設に視察に行かれるなど、その関心・熱量の高さに驚きました。ロゴ・ネーミングからコンセプトまで、お二人にはSPROUNDの大事な根っこの部分をつくっていただきました。

DNX上野 お二方がいなければ確実にSPROUNDは完成していませんでしたね。コアクリエイティブの作成にあたって、意識されていたことはありましたか?

CEKAI加藤 全体を通して意識していたのは、クリエイティブを通して人にどこまでSPROUNDという活動体を想起させることが出来るか?ということです。誰かがSPROUNDのロゴやデザインを観た時に、一体何を感じ、想起するのか。そのことを強くイメージしていました。特にコアコンセプトである「知の還流」を表現しようと挑戦しました。そのため、今回はSPROUNDのメインビジュアルに「ジェネラティブデザイン」を採用しました。

DNX上野 ジェネラティブデザイン、、、。あまり馴染みのない言葉ですが、一体どのようなものなのでしょうか?

CEKAI加藤 ジェネラティブデザインというのは、固定された形を定義するのではなく、あるアルゴリズムを規定し自由に形を変えたり生成するデザインのことを指し、アウトプットは非常に多様性に富んだものになります。日々知を還流させ、変化し続けるスタートアップを表現するために、このデザインを、模索しました。

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また、SPROUNDロゴのモビール、時計、モーショングラフィックにしても、それを平面的なモノではなく、立体的な形にすることで、見る側にも余白が生まれ、意図せずとも裏からも、上からも下からも目に入るように設計しています。このように、多視点・多角的にロゴを表現することで、ただの形で終わることなく、その質感や動きまで感じてもらえるように設計しました。

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SPROUNDロゴの紙モビール
山田明良氏が代表を務める福永紙工に作成いただきました

DNX上野 確かにSPROUNDのロゴは様々な形で表現されていますし、私自身も無意識のうちに立体的なイメージを抱いていました(笑)

CEKAI加藤 様々な形のロゴを仕掛け、そういったイメージを潜在的に刷り込むことで、SPROUNDのロゴを平面で見た時にもその立体感や動きを想起してもらえたら良いです。そして、それぞれがSPROUNDのコンセプトである「知の還流」を自己解釈できるきっかけになり得たら、この仕掛けは成功だと思います。

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SPROUND CLOCK
東京オリンピック2020にて世界初となる動くピクトグラムのモーションデザインを手掛けた映像デザイナー井口皓太氏によるデザイン

ーーコミュニティをデザインするということ

DNX上野 今回、目に見える制作物だけでなく、コミュニティの設計にも携わっていただきました。この面においては何を意識されていましたか?

CEKAI加藤 SPROUNDが掲げるコンセプトや概念がインストールされた場合の具体的な行動や言動はどんなものか?を細かく想定しました。
どんなに考えて創ったモノや仕組みでも、自分たちが望んだ形で運用されずに形骸化してしまったら何の意味もないです。これは、僕らが以前から村世界など、いくつかのコミュニティの立ち上げ・運営を行ってきた中でも強く感じたことでした。

DNX上野 確かに仕組みをつくったところで、上手く活用されなければ意味がないですもんね、、なかなか難しいところですが(笑)

CEKAI加藤 そうですね。なので、オープンを迎えたこれからが勝負だなと感じています。果たして色々な仕掛けが思惑通り上手く活用されるのかどうかですね。うまくいかない部分は軌道修正していけばいいので。


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取材の際に、CEKAIの拠点でもある村世界にお邪魔させていただきました!
クリエイター同士の交流が盛んに行われるこの空間から、SPROUNDの着想が生まれたのだと思うと感慨深いものがありました、、、

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SPROUNDに散りばめられたクリエイティブの数々。

オープンしてから約3ヶ月ですが、早くもSPROUND内の仕掛けから利用者同士のコミュニケーションが生まれています。そんな場面に遭遇する度に、非常に嬉しい気持ちになります。

これからもこれらの仕掛けを活かして、SPROUNDを素敵な場・コミュニティにしていけるよう、我々コミュニティマネージャー陣も頑張っていかねばと改めて思いました!

最後にSPROUND内のクリエイティブをいくつかご紹介させていただきます!そして、CEKAIさんはじめ、SPROUNDにご協力いただいた多くのクリエイターの方々、本当にありがとうございました!!

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SPROUNDスタジオ
SPROUND WALLの写真撮影および、各社自由にここで撮影してもらってます。メンバー同士で賑やかに撮影し合う和やかな光景をよく目にします。

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SPROUND BOOKS
入居者ひとりづつオススメの一冊を選んでいただき、ここに展示・貸し出ししています。本を通しての「知の還流」を生み出します。

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SPROUND WALL
入居者のスタジオで撮影した写真とプロフィールをここに掲示。思わぬ共通点からコミュニケーションが生まれていきます。

(文章・構成:辻良太朗)



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