焼うどん(映画「福福荘の福ちゃん」)
その昔、うどんとは法事やお葬式で親族が集まる場で食べるものでした。食器が足りなくて、子どもの自分はご飯茶碗にめんつゆ入れて、あまった無造作に盛られたうどんの山にはしを突っ込んで、台所の床に座って頂いていたものです。家に帰ると必ず蓮の焼印のついた大きな葬式饅頭を半分に割って食べていましたっけ。大人になって初めて遭遇した焼うどんは、とある居酒屋のシメで誰かが食べていたのを発見したのでした。自分で作るようになったのは、かなり後です。最後に湯気にまみれてトッピングのかつおぶしが踊りまくるビジュアルも含め、子ども達には大好評のメニューなのでした。
焼うどんは、福ちゃんたちが居酒屋で美味しそうに食べていました。福ちゃんの周りには、少し事情を抱えた人達がいます。引きこもっていて大蛇を飼う人、下着窃盗前科のある統合失調症の人。仲良くなりつつ皆、それぞれの歩みもあります。氷川あさみさん演じる女性フォトグラファーとの出会いは、過去いじめられた心の傷を持つ、女性恐怖症の福ちゃんを大きく変えました。福ちゃん妙に肌が綺麗だなあ、、と思っていたら、森三中の大嶋さんじゃありませんか。福ちゃんの仲間が男性の荒川さん。この塗装職人コンビもまた味わい深いのです。この映画、外すかなあ?と思いつつ見ていましたがなかなか。押しつけがましいものもなく、最後まで想定内の筋運びでした。
福ちゃんは凧作りが趣味です。仕事の合間に凧を作り、凧に絵を描き、本当に楽しそうです。仕事をしながら、オフの時間には好きなこともできる。ささやかな暮らしだけれども、健やかな暮らしとはワークライフバランスと、足るを知ることでもあるように感じます。
そして福ちゃんは誰にでも優しいのです。本当に優しい。びっくりしたのは、自分を刺してしまった統合失調症の青年の父親に、息子さんの病状に気付けなくてごめんなさいと謝っている。そんな人なかなかいませんて。蛇を買う男性を自分の職場に紹介して、アフターフォローもしている。そんな人なかなかいませんって。神様って実は遠い雲の上に綺麗な服を着て、みんなを見下ろしているのではなく、福ちゃんのように人の心の痛みに敏感で、寄り添う術とかける言葉を知り尽くしながら、みんなと等身大の姿で、みんなの住む街のどこかにひっそりと目立たず、歩く依代(よりしろ)として暮らしているのかしらん?と想像してみたりするのです。
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