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ブリの照焼き(映画「南極料理人」)

ブリは冬脂がのってて旬のお魚。冬にはブリ出現率一挙に高くなります。美味しいし安くなりますし。そしてやっぱり照焼き。ブリ大根を作ることもありますが、切り身を照り焼く贅沢。昔仕事していた時のお客さんに「背と腹どっちがうまいと思う?」とたずねられ、「分かりません」と答えると、「垂れてる腹の方が脂のってて美味しいんだ」ほお、いいこと聞きました。それ以来腹側ばっかり買っています。そしてある料理番組で「柔らかく仕上げるには、焼く前にブリの切り身を酢につけておくとよい」と。ほおおお。いいこと聞きました。それ以来焼く1時間前くらいにブリふた切れにお酢大さじ1杯位ふりかけてつけておくのです。おかげで柔らかく脂のってて、最高の夕餉となるのでした。

「南極料理人」は映画版と、テレビの「面白南極料理人」両方を見ました。極寒の地で1年間の任期でつとめる越冬隊。南極の話は「宇宙よりも遠い場所」というアニメもありまして、そちらは夢とロマンあふれる旅に感動のシーンが待ち構えているのです。だって萌えキャラが主人公。間違いなく感動ものなのです。一方こちらは間違いなく、萌えてない男性しか出てこない、別の意味での感動モノ。両方見比べてみると、面白いものがあります。

映画の方の「南極料理人」の冒頭食事シーンにブリの照焼きが出てきます。料理担当の海上保安庁から派遣された主人公が真心込めて作る和食御膳。そのブリの照り焼きに、醤油をちゃあああーっ!とかける隊員。これは波乱の展開を否が応でも期待させてしまうのでした。任務で1年間、マイナス数十度の世界。水も食料も貴重な世界。そこに観測という仕事で居続ける仲間たち。ぎこちないユーモアが余計に極限状態の緊張感を漂わせる展開です。最初は一生懸命料理作りに精を出しつつも、そのうちメンバーたちのほころびが垣間見えてきます。逸脱、ルールを守れない言動を大目に見たり、とめたり、なだめたり。主人公は必死に食事作りを通して和を保とうと努めますけれど、とうとうあることをきっかけに、自身が料理担当の役割をボイコットしてしまうのでした。

残りの男たちで料理を作り、主人公に「どう?」と味を尋ねる。もう、お互い様状態です。この後主人公がラーメンを苦心して作るところで、一気に何かが突き抜けた感がありました。ラーメンを夜な夜な他隊員に食べられちゃったから在庫を切らしてしまったのに、さらに「食べたい」とねだられて、本当に美味しいラーメンを作ってしまうのです。それはプロとしての達成感だったのでしょうか。皆に喜んでもらえた充実感だったのでしょうか。自分も食べたかったラーメンをちゃんと食べられた万能感だったのでしょうか?

そしてテレビ版も映画版もそれぞれに面白かったのですけれど、映画版のラストはホラー映画のエンディングのような不穏感を感じてしまったのは私だけでしょうか。何気ない当たり前の日常が、実は大事なのだと気づかせるエンディングだったのかもしれません。


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