見出し画像

さよなら、アメシスト

私が初めてもらったペンダント、初めてもらった石。
それはアメシストだった。

母の知り合いの姉妹のお店。
パワーストーンショップで店主を務めていた妹さん。

母とお姉さんが話している間に(おいで〜)と手招きされたからそばによる。
「今日は来てくれてありがとうね、いい子にしてたね。この中から好きな子選んでいいよ。」と言われたので私はすかさず自分の好きな紫色のゾーンに目をやった。

ショーケースにはペンダントトップに加工された4cmほどの縦長の楕円になった石が所狭しにずらりと並んでいた。
「紫が好きなの?」
そうして2つに絞って「お姉さんはこっちが似合うと思うな〜」と言われたのでそちらを選ぶことにした。

縦長の楕円、その下半分に三角の模様が入っているのがかわいいと思った。
裏返すと三角の頂点は丸みを帯びている。不思議だった。
ペンダントトップなので小さな穴が空いていてチェーンを通すようの紐が通っている。
その日もまでもが紫色なのがさらに気に入ったのを覚えている。

帰る時に手に何か握りしめている私に気づいた母は代金を支払おうとしたけれど「いいんです。安いものなので。」ともらった。

母には帰りの電車でアメシストの意味を教えてもらった。
「紫が好きだから」と言う理由で選んだことはバレていたようだ。
パワーストーンはその日からお守りの代わりになった。

家に帰ったら早速チェーンを、と思ったけれどない。
その上かぶれてしまっては困るので百均で何かの用事で買った時の赤い皮状の紐を通してもらった。
それを首の後ろで結ぶ。

学校には流石につけて行けないから休日に。
小学5年生の頃だったと思う。
まだまだ公園で走り回っている年頃だったので、鬼ごっこなんかするたびに口元に跳ねた石が当たって少し痛かった。
「ペンダントやネックレスをつけているお姉さんたちは困らないのかしら。」なんて考えてた。
ほとんどのお姉さんは公園で全力鬼ごっこなんてしません。って教えてあげたい。

ちょっとしたおしゃれさんになったつもりだった。
つけているとテンションが上がったし、どことなく少し自信が湧いた。
クラスでペンダントをつけている子はいなかったし、他の学年でもパワーストーンみたいな石を持っているような子はいなかったので、アイデンティティのような気もした。
ちゃおの付録のアクセサリーを持っていなくたって、サン宝石のカタログを見たことがなくたって私は「ふふん」って内心思ってた。

中学高校はあまりつける機会がなかったな。
でもそれでも眺めることは好きだった。

先日、クォーツのブレスレットをいただいた。
「これを見た途端にあなたが浮かんだの。あなたしかいないと思ったわ。」
そう言われて手元にきた。

「ハート!」って感じじゃない丸っこいぽてっとした、どちらかといえば「はーと♡」って感じのハートのクォーツ。

語彙力がない。可愛すぎて。

それを小さな丸の、おそらくローズクォーツでサンドしている。
通してある紐までピンクでかわいい。

1つ困ったことは私の管理、お手入れしきれる石は多くても5個まで。
7個にまで増えてしまってどうしよう。

そう思って石たちを見比べると「もう違うな、お別れだな」って思う子たちがいた。
2つ手放したのだけれどその1つがアメシストのペンダントだった。
私にとってすごくたくさんの思い出が詰まっていて、どの子よりも特別だったと思う。

寂しい気持ちになりながらお疲れ様をした。
これを書きながらもう家にはその子はいないことを思うと最後にいた場所に目を何度もやってしまう。

まだ割れずにいてくれただけよかった。
花と違って石は枯れないからいいね。
陶器の置物と違って色褪せもしないし丈夫。
半永久の美しさ。

けれど手放すと他のものと違って自然の作り出した一点ものだからもう2度と同じ状態では巡り会えないのが本当に寂しい。

今の私には違うな、と思っても嫌いになったわけじゃなくてやっぱり大好きなことに変わりはなくて。
まだ石のお手入れの方法も知らなかった子供の元へやってきて、それから8年?
本当に長いことお疲れ様でした。ありがとう。

またどこかでお元気で。


この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?