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青野春秋のマンガの描き方

マンガの描き方と言うと漫画家の数だけあるという元も子もない話になってしまうので、ある程度一般的な描き方と僕の場合を比較しながら紹介できたらと思います。

前提として僕は完全アナログ作業の描き方です。

近年は漫画家の8割以上がデジタル作業を導入している統計が出ているので完全アナログ作業の僕はもう希少な完全アナログ漫画家になっています。

そうは言ってもデジタルアナログ関係なくマンガを完成させるまでの工程は、進め方の違いはあれど目的地は同じと言っても差し支えないと思います。

①何を描くか。

ここから始めるのは当然ですが、ここからもう作家ごとに違いが表れます。作家一人で発案する、編集担当と相談しながら作る、作家と編集者とライターを入れて作る。ストーリー担当と作画担当に分かれて組む。大まかにですが、この4通りの始め方に分かれます。

僕の場合は全ての作品を一人で発案して描いています。

まずはテーマを決めます。大筋ですね。これをもとに登場人物、主人公は男か女か、連載媒体の読者の年齢層などを絞りつつ決めていきます。ある程度設定と話を決めたら最終回、終わりかたを決めてしまいます。これは漫画家としては少数派で間違いありません。

何故ならマンガ作品のほとんどが連載開始後の読者の反応で展開を変更しながら長期連載になるか短期連載(打ち切りも含む)なるかを決めているからです。読者の反応が良くヒットすれば作品の寿命を長くできるので商業的な面でとても大切な作品として出版元から扱ってもらえます。

しかし、僕の場合は人気不人気関係なくその作品ごとに最終回へ向かい描くべきことを描いたら終わりにしてしまいます。

ただし、もう少し続けてほしいと言われたら作品にはよりますが、エピソードを追加して単行本一冊二冊ぶんは増やす場合もあります。

最初に最終回は決めてしまいますが、そこに至るまでならエピソードを追加するのは簡単なことなので。

ただし、頼まれても僕の中で追加エピソードは蛇足だから終わりと決めたら追加に応じない場合もあります。

関係者には、だいぶめんどくさいタイプの漫画家だと自覚はありますが、作品にたいして誠実であることが何よりも読者の方々への僕なりの感謝の気持ちのひとつだと考えているからです。

人気に左右される引き延ばしの長期連載より、作品単体の完成度のほうが僕個人としても大切なことなので。

どんなに頼まれても申し訳ないですが「また別な作品描くので」と言って終わりにします。

完成度が一番ではありますが、僕はとても飽きっぽい性格なので作品にとって本当に必要でなければ無理矢理連載を引き延ばす事は今後もないと思います。

②打ち合わせ。

連載が始まると話の展開を中心に担当編集者と毎回次の展開について打ち合わせをして意見交換しながらストーリーを組み立てていく場合が多いし割とそれが普通みたいな伝統?があります。

僕も最初は打ち合わせをしていましたが、話し合ってもいざ机に向かったら全然変わってしまうことが多いのと、常にその時の120点の内容をという諦めの悪さがあるので、割と早い段階で打ち合わせは廃止しました。

なのでネーム(マンガの設計図のようなもの。ここで内容の良し悪しの殆どが決まる)を描いて、それを担当さんに確認してもらい読みづらいところや問題のある表現があった場合は指摘してもらい描き直して完成度を出来る限り上げます。

作品ごとに担当さんが一番始めの読者になるので、ネームを確認してもらうたびに「今回の中で好きな場面を毎回聞きます」それがストーリー展開の流れを変えるヒントになることもあるので、担当編集者への信頼度はとても高いです。

担当編集者と打ち合わせはしなくとも最終回や大筋は伝えて共有してあります。ただし、これは読むまで知らないでほしいことは聞かれてもはぐらかして教えないこともしばしばあります。ただ、それをすると担当さんが上司に「このあとの展開どうなるの?」と聞かれても「教えてもらえません」と答えることも多くなり担当さんには迷惑をかけるし、上司の方によっては軽く怒る場合もあります。

それでも、担当さんが代わりに頭を下げてくれているので僕が限界まで悩んだり急に展開を変えることに頭を全部使える環境を死守してくれています。

本当に感謝してるし信頼して僕がマンガにのみ向き合えるのは各担当編集者のおかげです。なので、僕のマンガを気に入ってくれた読者さんは作品各々の担当さんにも賛辞の気持ちを贈ってくれたら嬉しいです。

そんなふうに、かなりマンガ制作では異色な担当さんとのタッグの組み方をしているので、初対面のときに上記の僕のマンガの描き方を説明したうえで納得して頂き、それでも面白くなるならと信頼してくれる編集さんとしかタッグは組みません。

③ネームと原稿の描き方。

僕の場合は連載開始されて流れが出来たら締切に合わせて進めます。当たり前のようですが完成度重視なのでギリギリまで粘ります。スケジュールが心配になった担当さんから連絡が来たらあきらめて机に向かいます。

ネームは一編描くのに、週刊連載(基本18ページ前後)は机に向かって2時間〜3時間くらい。

月刊連載(おおよそ30ページ前後)の場合は4時間〜5時間くらい。

漫画家の中では相当速い方かと思います。2、3日かけて分けて描く事は余程の事情がないかぎりしません。一気に描ききります。

その後、担当さんにネームを送り確認してもらい問題がなければ作画作業に入ります。

いつも締切ギリギリ。これが僕の最大の弱点でいつも予定通りに終わらず担当さんも編集部も冷や冷やさせる一番心臓に悪い問題点です。言い訳ぶちかましますが体力と集中力が続かないのと、僕の手にちょっとした問題(自伝的マンガ『スラップスティック』6巻収録の第24話参照)があるので長時間連続で描き続けることが割と困難で休憩を多めに必要としてしまいす。

だったら早めに進めればいいじゃないか。と思われますでしょうが、締切ギリギリにならないと稼働しないという自分でもよくわからない謎で永遠の課題があり。関係各所には大変申し訳ないのですが今のところ解決策は見つけられておりません。

とりあえず、僕の場合はこのやり方でマンガ制作を行なっております。

※もっと具体的な製作法やコツをお求めの方は、note専用のTwitterアカウント・Blue Moon
(@springautumn_15)やこの記事のコメント欄に書いてくれれば可能なことはお答えします。

今後は作品ごとの制作秘話などもご紹介できたらと思います。











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