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ArTwins "ロックンロール基地"から発信する極彩色のインディーソウル・ポップ:sprayer Interview

双子であるShowhey・Ikuhoの本間兄弟により結成され、現在は下北沢を中心にライブや楽曲制作の活動を行うインディーソウル・ポップバンド、ArTwins。2月5日に6thシングル「KING・OF・SOUL / 可愛いふたり」をリリースし、2月9日には同作を引っ提げたリリースパーティ『We Are Twins』を東京・下北沢BASEMENT BARにて開催する。往年のブラックミュージックと忌野清志郎をはじめとする日本語ロックに強い影響を受けたサウンド、加えてカラフルでキッチュなアートワークやメンバーのビジュアルからも並ならぬセンスを感じさせる彼らにインタビューした。


双子の"ライブごっこ"が出発点?

[L→R] Ikuho (Gt) | Showhey Honma (Vo)

ーShowheyさんとIkuhoさんは双子の兄弟とのことですが、ArTwins以前からともに音楽活動をなさっていたのでしょうか?

Ikuho (Gt):そうですね、中学3年生ぐらいのときからずっと一緒にバンドをやってます。元々はTHE BLUE HEARTSやRCサクセションをコピーしたり、ストレートなロックバンドって感じで。

Showhey Honma (Vo):オリジナルの楽曲を作り始めたのは大学に入ってからですね。別々に進学したんですけど、結局僕がIkuhoの大学のビートルズ研究サークルに出入りするようになって。僕とIkuho以外のメンバーが入れ替わりつつ、何度か名前を変えて今のArTwinsに固まりました。

ーArTwinsというバンド名は「Art + Twins(双子)」ということだと思うのですが、何か特別な意味が込められているのでしょうか。

Ikuho:「Art Wins=芸術が勝つ」ともかけてますし、みんなが双子のように仲良く活動していけるように、「○○ Are Twins」という意味も込めています。「『Ikuho and Showhey』 Are Twins」の主語の部分に、誰の名前を入れても良いっていう。

ーメンバーの皆さんの音楽ルーツについてお聞かせください。まず、繭さんはどのような音楽に影響を受けてきましたか?

繭(Key/Cho)

繭(Key/Cho):一番初めに興味を持ったのはディズニーの音楽でした。アラン・メンケンっていう作曲家が大好きで。あとはクラシックピアノを弾いてたので、ドビュッシーとかリストとか。バンドっぽい音楽を聴くようになったのは、中学・高校でUKロックを聴くようになってからですね。ここ数年は、ノラ・ジョーンズとかキャロル・キングみたいなシンガーソングライターをよく聴いてます。

ーなるほど。Showheyさんはいかがでしょう?

Showhey Honma (Vo)

Showhey:忌野清志郎さんが大好きな母親に連れられてライブを3回くらい見たことがあって、それが一番大きいですね。それ以外にも、両親ともに洋楽や日本語ロックが大好きだったので、家にあったCDやビデオを漁るように見たり聴いたりして、色んな影響を受けました。幼稚園児の頃、Ikuhoと一緒にライブごっこみたいなこともしましたね。お菓子箱をギター、バケツをドラムに見立てて。で、そのままバンドを組むっていう(笑)。やってることはその頃からあまり変わってないです。

ーやはりボーカリストとして、清志郎さんへのリスペクトは特別なもの?

Showhey:そうですね。シャウトしてる歌が好きだったので、高校生ぐらいまではシャウトしてない歌を全然聴いてなかったんです。歌詞の世界とかも全然意識してなくて、シャウトしてるかしてないかで聴いてるくらいでした。

ーShowheyさんと同じ環境で育ったIkuhoさんは?

Ikuho (Gt)

Ikuho:僕も中学生ぐらいまではシャウトに憧れてボーカリストになりたいと思ってたんですけど、いざちゃんとバンドをやろうとするとシャウトしてるボーカルが2人っていうスタイルは成り立たないなと。そこでギターを持って。それから、小さい頃から好きだったエリック・クラプトンをはじめ、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、ジョン・メイヤーとか、ブルースをルーツに持つギターヒーローに惹かれるようになりました。大学を卒業してからはThe 1975、Rex Orange Countyとか、現行のインディーポップにも注目しています。

ーIkuhoさんとShowheyさんで、性格の違いを感じることはありますか? というのも、今のお話を聞いていると、Ikuhoさんが脇に回る分析派タイプ、Showheyさんがスポットライトを迎えにいく感情派タイプのような気がして。

Ikuho:どうですかね(笑)。自然と今の役割にハマっていったというか。僕は確かに、全部聴きたい、色んなことを知りたいみたいなタイプではあると思います。

ーOkuizumiさんはGi Gi Giraffeで活動するなどバンド歴も豊富ですが、そのルーツは?

Ryo Okuizumi(Syn)

Ryo Okuizumi(Syn):やっぱりビートルズですね。中2の時、出席番号が近くて仲良くなった友達が音楽に詳しくて、色んなCDを貸してくれたんですよ。その中で出会ったビートルズにハマって、価値観が変わったっていうか。音楽でこんなに面白いことができるんだっていう発見があって。ちょうどその頃にギターを始めたんですけど、曲を作り始めたり、宅録をしたりするようになるにつれて、新しい視点でまた発見がありました。

ー最初はやっぱりビートルズだったんですね。

Okuizumi:最初も今もビートルズですね。

ーEmmaさんはアートディレクターという立場ですが、音楽的な嗜好はメンバーと共通するのでしょうか?

Emma(Art Director)

Emma(Art Director):元々のルーツは全然被ってなくて、ゴリゴリのロック畑で洋楽厨、洋楽主義みたいな感じでした。レッチリ、エアロスミス、ツェッペリン、Rage Against the Machineとか、うるさい音楽が大好きで。でも、大学でビッグバンドのジャズサークルに入って、それから往年のブラックミュージックを聞くようになったんです。それから、サークルのライブのときに喫煙所で出会ったIkuhoと仲良くなって。音楽だけでなく、好きな映画やファッション、色んなカルチャーに対する価値観がすごく合うから、絵を描くための世界観の共有がしやすいんですよ。この人たちが描き出そうとしてるものが私なら具体的に表現できるんじゃないかと思って、ディレクターとして参加しています。

タイムレスなサウンドに宿る熱とポップネス

ーメンバーそれぞれが様々なルーツを持っているArTwinsですが、バンドとしてリファレンスにしているアーティストや作品はあるのでしょうか?

Ikuho:楽曲や時期によって変わるんですけど、たとえば来月リリースされるシングルはプリンスの初期、楽曲で言うと「Soft And Wet」とかを意識してますね。あと最近はVulfpeckとか、ジョージ・クリントンらPファンクの影響も受けてます。

ー70年代~80年代を思わせるサウンドが特徴的ですが、敢えてクラシックな、オールディーズな音を鳴らそうという意識はあるのでしょうか?

:逆なんじゃない?

Ikuho:そういうのばっかりコピーしてきたから、そういう風になっちゃうんです。ただ目指す先としては、もっとモダンなエッセンスを取り入れていきたい。なのでシンセサイザーやサンプルを活用したり、あまりない小節数の構成にしてみたりしています。でも、モダナイズしたいのはあくまでパッケージの部分というか。音楽の本質の部分では、ビートルズや清志郎さんに普遍的な良さがあると思うので、その影響を活かしつつ、ガワは現代的にしていきたいですね。

ー楽曲「Moon, Night & C」で"「昔は良かった」なんてむなしい"というフレーズがありますけど、まさにその通り、昔の音をただ再現する以上のところに行きたいという思いがあるんですね。

Ikuho:そうですね。

ーArTwinsの楽曲には、ポップな一面や洒脱なアレンジもありつつもやはりロックな熱さが滲み出ていて、ライブでもファンキーなパフォーマンスを披露しているのが印象的です。

Showhey:僕はライブでメイクもしてるし、やっぱり普段の生活とは違うものを表現したいですね。一昨年くらいに、『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』っていう映画を観たんです。1969年のハーレム・カルチュラル・フェスティバルのドキュメンタリーなんですけど、演奏はもちろんのことお客さんの盛り上がりが凄くて。自分たちが目指しているライブ像がそこにあると思ったんですよね。自由に演奏しつつ、お客さんも巻き込んでいくライブを目指しています。

ーちなみに、ArTwinsの活動を追っているとたびたび目にする「ロックンロール基地」とは一体どこのことなんでしょう?

Ikuho:あれは簡単に言うと僕の家で(笑)。清志郎さんのプライベートスタジオ「ロックンロール研究所」に憧れて名付けました。みんなの集まりやすい場所にあって、音源もドラム以外は全部そこで宅録してます。

ー楽曲制作はどういった流れで行っていますか?

Ikuho:Showheyが歌詞とメロディを持ってきて、アレンジをDTMで加えていったり、スタジオでそれをライブ仕様にしたりっていう感じですね。メロディーが先で、歌詞を後に付けるパターンもあります。アレンジは僕かOkuizumiがメインで考えてます。

ーIkuhoさんとOkuizumiさんで、それぞれアプローチの違いみたいなものは感じたりしますか?

Okuizumi:全然違う(笑)

Ikuho:僕はDTMを始めたのが彼より遅いっていうのもあると思うんですけど、結構足し算で詰め込んでしまいがちで。

Okuizumi:めちゃくちゃ詰め込むよね。トラックが多くて見にくい(笑)。僕は、音を加えすぎて自分が理解できなくなるのがちょっと怖いので。なるべく少ない楽器で有機的な動きをしているのが良いアレンジだという考え方です。

ーそれぞれの美学が、洒脱さとアツさという二面性に表れているのかもしれませんね。

カラフルな世界を描くビジュアルへのこだわり

ー音楽性と同じくらい、ビジュアル面にもこだわりを感じさせるのがArTwinsらしさだと思います。アートワーク、ビデオ、メンバーのルックにまで統一感がありますよね。

Ikuho:個人的には、カラフルなものが好きで。

Emma:絵画や映画もポップで可愛いノリのものが好きだよね。ウェス・アンダーソンとか。

:私、メンバーの服をめっちゃ選んでるんですよ。髪型も、私の行ってる美容院で2人とも同じ人に染めてもらったり。Ikuhoのビジョンが何となく見えてるから、どうやったらそれに近づけるかを考えて。今はだいぶ垢抜けました。

Ikuho:前はもっとむさ苦しくてイモ系だったんで(笑)

ーIkuhoさんの脳内のイメージを形にしてくれるのが繭さんなんですね。

Ikuho:まあ、頭の中自体も結構影響を受けてるんですけどね。

:メンバー間で、相互に色んな方向から矢印が向き合ってるんですよ。音楽的な部分では私はかなり影響を受けた側だし。

ーなるほど。

Ikuho:で、ジャケとかはEmmaちゃんにイラストをお願いしてて。

Emma:彼らがやろうとしていることを私ができるだけ具現化したいと思ってます。みんな頑固で、それぞれこだわりをどこかに持ってる人たちだから、それをちょっとずつかいつまんで描くのを続けてますね。

ーただ依頼されてイラストを描くというわけではなく、しっかりメンバーとしてコミットして、コミュケーションを図りながら制作していると。

Emma:そうですね。ロッ基地に缶詰にされて、ああでもないこうでもないって。全員と話さないとわからないこと、見えてこないことがいっぱいあるので、いつも勉強になってます。

連続リリースの集大成となるニューシングル「KING•OF•SOUL / 可愛いふたり」

ー2月5日には6thシングル「KING•OF•SOUL / 可愛いふたり」がリリースされます。それぞれ温度感がまったく違う2曲が揃いましたね。

Ikuho:去年から毎月のシングルリリースを続けて、今回で半年なので一旦区切りということで、僕とOkuizumiが制作したそれぞれ自分らしい楽曲をパッケージしました。

Okuizumi:以前からライブでやってた曲ですけど、今回満を持してようやくリリースで。

ー「KING•OF•SOUL」はライブの熱狂が伝わるような一曲ですね。

Showhey:さっきもお話したような、1969年頃のブラックミュージックのフェスをイメージしてます。元々「KING OF SOULになりたい」っていう曲があって、その曲の歌詞はまさに「なりたい」っていう内容だったんですけど、今回はもう「自分がKING OF SOULだ!」って宣言してて。

Ikuho:「KING OF SOULになりたい」って歌ってたら、ライブハウスの店長さんに「もうなってるんじゃない?」って言われたんだよね。

Showhey:そもそもの着想は、小学校の文集に書いてたIkuhoの将来の夢からなんですよ。「KING OF SOULになってみたい」って書いてあって、カッコイイなって。

ー「可愛いふたり」は、まずとにかく歌詞が素晴らしい曲だなと思います。街ですれ違うカップルたちそれぞれに、繊細なストーリーと感情があるんだなと感じさせてくれる言葉で。

Showhey:いつも一緒にいる二人(Ikuhoと繭)を見ていて、この関係性を僕が歌詞にしたらどうなるんだろうと思って作りました。普遍的なものを訴られる歌詞にできましたね。

ーアレンジではどういった点にこだわりましたか?

Okuizumi:ちょうどその頃、ベニー・シングスにハマってたんです。彼っぽい、ピアノの繰り返しのフレーズを使ってみようと思って出発しました。でも、全然ベニー・シングスっぽくならなかった(笑)。どっちかっていうとファンキーに仕上がったけど、これはこれで良いかなって感じで。AメロとBメロでボーカルが変わるアイデアとか、Showheyの歌詞の乗せ方とかは僕が全く予想してなかった形になったし、バンドのマジック的なものも感じられた曲です。

核のソウルは持ったままメインストリームへ

ーそして、2月9日には初の自主企画ライブ『We Are Twins』が開催されます。どのようなラインナップになっていますか?

Ikuho:60年代などにルーツを感じながら、それをポップに昇華していこうという姿勢のアーティストと対バンしたいなと思って。たとえば、金子駿平くんは大学時代から一緒に対バンしてたり、僕も彼のバンドをサポートした経験があるような関係なんですけど。清志郎さんや井上陽水さんにも影響を受けてて、ルーツミュージックのような普遍性を持ちながら、ただ古臭くやりたいわけでもなくて、ちゃんと現代に昇華させてるところが好きだったりします。

ーどのような一日にしたいですか?

Ikuho:シンプルに楽しいイベントにしたいですね。ライブ自体もエネルギッシュに。そして、普段僕らのようなルーツを持っている音楽に触れない人にも、こういうスタイルの面白さが伝わるきっかけになったら嬉しい。

Emma:音楽的な楽しさはもちろん、人と人を繋げる場所になれたらいいな。知らない人同士がそこで出会って、仲良くなれるような。

Showhey:ロッ基地にみんなが集まって、家族みたいにワイワイ喋って音楽をやってる雰囲気が好きなんですよ。だから、ライブでもそういう感覚を伝えていきたいですね。ロッ基地にある輪をもっと広げるような一日にしたいです。

ー少し気が早いかもしれませんが、自主企画以降、2024年はどのような活動を計画していますか?

Showhey:自主企画は、年間3本やりたいです。あとは、フェスに出たいですね。

Ikuho:アルバムも出したいし、リリースは継続しつつ。パフォーマンスにもっと磨きをかけていきたいし、色んな場所で演奏してみたいです。3月に和歌山の高校で、特別授業としてライブをする機会があるんですよ。普段は下北沢のライブハウスが中心ですけど、もっと色んな土地や、飲食店みたいなライブハウス以外のべニューでも演奏していきたいですね。

ーでは最後に、ArTwinsが目指すバンド像や目標を教えてください。

Ikuho:ルーツのある渋いソウルを、日本のメインストリームに届けていけたら良いなと思ってます。今も80年代~90年代のディスコ、HIPHOP、ネオソウルに影響を受けたバンドがチャートで活躍してたりしますけど、もっと遡ったサウンドで食い込んでいきたい。大きいライブやフェスにも出たいですね。特にフジロックは、清志郎さんともゆかりが深いし。

Showhey:僕はむしろ逆っていうか、ずっと渋い音楽ばかり聴いてた分、最近の音楽をあんまり聴けてなかったので。その渋味を少しづつ薄めていくのは個人的な目標ですね。

:確かに、同年代に聴いてもらうための取っ掛かりとして、ビジュアルの触れやすさやHi-Fiであることが必要だと思う。

Ikuho:核のソウルは持ったまま、オシャレな皮で包んで行きたいですね。

Text:サイトウマサヒロ(@masasa1to
Edit:sprayer note編集部


Profile:ArTwins

東京・下北沢を中心に活動中の6人組ポップバンド。 60~70年代のソウルミュージックから現代のUKポップシーンまで幅広い音楽性に影響を受け、ルーツと現代的な観点を合わせたオリジナルな楽曲を制作している。 青山学院大学・ビートルズ研究会出身のメンバーを中心に2022年3月に結成し、 2023年4月に1st EP『ふたりはふたご』をリリースし、Spotifyにて3つのパーソナライズドプレイリストに選出された。 2023年9月からは毎月singleを5ヶ月連続でリリース中。

X(Twitter):https://twitter.com/artwins_jp
Instagram:https://www.instagram.com/artwins.jp
YouTube:https://www.youtube.com/@artwins_jp


Special Thanks:孝芳堂

取材撮影にご協力いただきました。ありがとうございます。

孝芳堂は、東京九段にあるジンジャーエール専門店です。土佐の生姜と瀬戸田のレモン、9種類のスパイス・ハーブで作ったアジアンジンジャーエールブランドを展開しています。

孝芳堂のジンジャーシロップは、甘口、辛口、極辛の三種類。瀬戸田レモンの量、スパイスの配合と加工方法にて味を変えています。加水しておらず全て生姜の水分。九段の自社製造所にて一本一本手作業で作っています。


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