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非認知能力特集その3 新たな知識や経験を探求する原動力「好奇心」

好奇心って何だ!?

みなさんは好奇心をもっていますか?また、その好奇心はもともと生まれながらにしてもっていたものですか?それとも人生経験の中で培われたものですか?

今回は、好奇心をテーマに、まずはどのようなものであるのか、そして周囲の大人が教育的な介入をすることによって伸ばすことができるのか、またできるとしたらどのような手法がありえるのか、といったところに踏み込んでみたいと思います。

好奇心旺盛な子だと、なんだか色々なことを経験して学びも多そうな気がしてなんとなく「良さそうなもの」といった認識がありますが、実際にはどうなのでしょう。子どもにかかわる学校の先生にもぜひお読みいただければと思います。

心理学の研究ではそれを証明するかのような結果が得られているようです。
好奇心は学力に対し、知能・勤勉さに続く三番目の力を持っている、と。

一方で、過剰な好奇心に警鐘を鳴らすことわざや文学作品も多く存在します。イギリスでは「好奇心は猫をも殺す」と。イギリスで猫とは命が9つもあるくらい簡単には死なないという意味合いをもっているようで、その猫さえも殺してしまうのが好奇心である、とされています。

アウグスティヌスは、人間が人の血や死をみたいという「目の欲」によるものは悪行であるとし、ミルトンの『失楽園』では悪魔であるサタンに触発されてしまったイブの好奇心が禁断の果実を食べさせ、のちの破滅へとつながっていく描写があります。

はてさて、好奇心とは良いものなのでしょうか…。

拡散的好奇心と特殊好奇心

まずは好奇心を大きく2つに分類して捉えてみましょう。

①拡散的好奇心

刺激が少ない、弱いと感じた時に起こる好奇心探索のこと。新奇性が低い環境によって生じる不快感や退屈を解消させようとするもの。この探索には多様な情報を求める特徴があるとされる。筆者はここが強めかもしれません。
新奇な情報を多様に求める傾向をもち、生産的な探索傾向がある。

②特殊的好奇心

一方でこちらの方は、刺激が強いと判断される場合に起こる好奇心探索。複雑性が強い刺激に触れた場面によって生じる不快感や嫌悪状態を解消させようとするもの。特定の情報を求める特徴がある。情報のズレや矛盾に敏感な傾向をもち、不調和の原因となる特定の情報を探索し、解消できるまで持続的かつ積極的な探索をする傾向がある。

認知的動機付け理論

これは日本での好奇心研究のようですが、人の行動原則を以下の3つに分類しました。

①人間を含む高等動物は、好奇心の強い存在である。

人や動物は、目や耳などいろいろな感覚器官を通して、常に情報を欲している存在である。

②情報処理の最適水準をもつ。

人や動物には、それぞれが最も快適だと感じる情報処理の水準(それぞれの最適水準)があり、またこの最適水準を維持しようとする動機づけが備わっている。つまり、外部から入ってきた情報が最適水準を上回っている場合、それを最適水準に下げるための回避行動を起こし、一方で入ってきた情報がこの最適水準以下であるときには、その最適水準に引き上げるために探索行動を起こすようになる。

③不調和を低減しようとする

「不調和」とは新しい知識や情報と、自分が保有している知識(つまりすでに自分が知っている何か)との間でズレ、あるいは既存知識の中での矛盾、知識の不足を感じた状態のこと。よって、「人は、この不調和を確認すると、それを低減または解消しようとする動機づけが備わっている」とした。

                 1971年 波多野・板垣による研究より

好奇心タイプ

1 知的好奇心
 ①興味型
  知識が得られるという期待にワクワク。新奇性を好み、さまざまな物事  
  に対してポジティブ感情を抱きやすい。一方でリスク」や危険を顧みな
  い行動に出やすくなる。
 ②焦燥型
  情報の不一致や剥奪感(あるいはモヤモヤ感)で起きる好奇心探索で、
  ここが高いとネガティブ感情を抱きやすく、衝動を抑制でき自己制御が
  高く、曖昧さを嫌う傾向がある。

 ☆拡散的好奇心は新規で多様な知的な情報を求める好奇心探索であり、こ   
  の特性が高いと幅広い情報を求め、曖昧な情報に対して許容する傾向が
  高くなる。
 ☆特殊的好奇心は、情報の不整合や矛盾を察し、それを解消しようと取り
  組む好奇心探索であち、この特性が高いと秩序を求め、曖昧な情報を嫌 
  う傾向が高いとされている。

2 知覚的好奇心
 知覚刺激情報(光、音、味やにおいなど)に対する好奇心探索。知覚刺激に対する探索。例えば、何かのにおいがしたら原因を必ず突き止めようとすること、何か物音がしたらそれが何であったかを確かめるなど。ここが高い人は芸術作品などに対する美的感覚が鋭いとされている。

3 対人的好奇心
 対人情報を獲得するための対話、詮索や推論などの好奇心探索のこと。新たな社会集団への加入や人間関係の構築、恋人の獲得や社会的地位の獲得のうえで重要な生得的行動。この好奇心は、社会場面を通して培われる言語や非言語のコミュニケーションの発達の要とされている。

☆対人情報の種類を大雑把に分類すると…
 ①感情
  他者の感情など、心理的情報を知りたいと思う。
 ②秘密
  人の秘密や隠し事を知りたいと思う。
 ③属性
  人の出身地や特技、所属情報などの公的な情報を知りたいと思う。

4 好奇心五次元尺度
 さまざまな好奇心領域や好奇心タイプを包括的に捉えるために主要な5つの好奇心にまとめた枠組みのこと。
①探求の喜び
 日常生活の新奇な体験などに喜びを感じ、それを探し求める活動。
②欠乏の感受性
 認知的な矛盾や不一致に敏感で、それを解消させようとする知的活動。
③ストレス耐性
 物事の不確実性に対して受け入れを示す。
④社会的好奇心
 社会、集団や人への好奇心。
⑤スリル探求
 危険な場所や行動を求め、スリルを味わう。

好奇心を伸ばすための介入

情報のズレを活用してみる

まったく予期もしないような過度な情報のズレを与えても、人は怖さや不安からくる回避行動に出てしまい、好奇心探索は起こりにくい。適度な情報のズレを目指そう。日常の表現でいえば、「答えが喉まで出かかっている」という状態を目指す。

ただ、学校現場での集団での授業ともなると知識や経験についてばらつきがあり、全員にとって適度なズレを実現するのは困難であることは想像に難くありません。事前に何となく知っているけど、実際はどうなんだろう?という問いをいかに立てられるかがポイントのような気がします。

仮説実験授業

「適度な情報のズレ」を生み出すため、児童生徒に学習させたい知識をつかませたうえで、展開していく授業実践のこと。
科学上最も基礎的な概念や原理・原則を【問題】→【予想】→【討論】→【実験実証】の四段階にして授業化する。この授業の題材として必要な条件は、
①科学上の最も基礎的な概念や原理原則に従っていること
②常識的な考え方をすると誤りになること
③答え合わせとなる実証実験のセクションで実験が簡単にできること

とありました。

1970年代の研究であるため、答え合わせや答えの検証といった点は現代のVUCAの時代にそぐわない面もあるかもしれませんが、予測できないし答えもない難題に対して、②の常識的な考え方をしていては誤りとなってしまう課題を意図的に設定し、奇抜なアイデアから答えらしいものにたどり着くための複数のルートが、児童生徒によって発掘されていくような授業は魅力的だろうなあ、と感じました。

好奇心について理解を深めることは、Play to learnを標榜する私たちにとっては極めて重要なことだと捉えています。遊びながらも学びの視点を。遊びに向かう好奇心を刺激し続けられる場所であり続けたいと思っています。

長文となりましたがお読みいただきありがとうございました。

今回は第3回として【新たな知識や経験を探求する原動力「好奇心」】についての学びをまとめてみました。

Supportiaでの学びは、こうした非認知能力に関する最新の知見をもとに、教育の責任者と環境設計責任者とが議論を重ねながら学びの環境を整えています。体験イベントも年内は月に2回程度実施していますので、ご参加をお待ちしています。下記フォームからご参加いただくことができます。

https://docs.google.com/forms/d/1_qHGcyQbvZ0dWVjZn7xSClh9egprun34p5J8mTHOCPk/edit

また、HPもマインクラフト教室を中心にリニューアルしましたのでぜひ参考となれば幸いです。

次回もどうぞお楽しみに!