ルイ・シュポーア:ヴァイオリンとハープのための小協奏曲

ハープはギリシア神話のオルフェウスの竪琴の末裔。聴くたびに神話の時代の楽器だと思わずにはいられない特別な楽器。古(いにしえ)の楽器という雰囲気がなんとも魅力的。学生時代に小さな竪琴を弾いている音楽科の女子学生と仲良くなってよく聴かせてもらいました。

爪弾く音が魅力のハープは旋律楽器のフルートなどと非常に相性が良く、ヴァイオリンと一緒でも素敵です。この組み合わせでたくさんの作曲をしたのが、ベートーヴェンの友人として知られるルイ・シュポ―ア。

名ヴァイオリニストとして顎当てを発明して普及させ、また名指揮者として指揮棒を使ってオーケストラを指揮した最初の指揮者として音楽史に名を留めています。顎当てがないとヴァイオリンは弾きにくいので、シュポーアなくしてパガニーニもなかったといえるでしょう。

バロックヴァイオリンが肩よりも低く胸の位置で構えていたのも、わけがあるのです。顎当てがあると肩の上に楽器をおいて高く構えることが容易になりますが、楽器が左耳に近くなりすぎて、難聴者がたくさん生まれる要因にもなりました。

ちなみにパガニーニも晩年は難聴になり、聴覚を失いました。ヴァイオリンは過酷な楽器です。バロック式ならば安全なのですが。

シュポ―アの最初の奥さんはハープ奏者だったので、夫婦二人でよく共演したということで、今回紹介するコンチェルタンテ(小協奏曲)が書かれたのでした。CDでよく聴いたのですが、YouTubeでは映像はひとつだけ。録音もごくわずか。

愉しいのは第三楽章のロンド(15:22から)で付点付き音符の跳ねる音がなんともキャッチ―。タータッタッ・タータッタッ・タータッタッ・タタタタという耳に残るメロディ。ハープはチェンバロ同様に最高の伴奏楽器です。もちろんオルフェウスの場合は彼が歌う歌のための伴奏役でした。

ほんの小さなサポートでも、とても嬉しいです。わたしにとって遠い異国からの励ましほどに嬉しいものはないのですから。