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Ugliest English Words! 最も耳障りな英語の言葉たち(2)

前回からの続きです。

発音が難しい上級者向きの単語ばかりを扱っていますが、こういう単語を知ることで単語の意味への知識を深めることを楽しいと思える人は、きっと英語が上手になります。

英語の達人には辞書を読むのが好きだったなんて人もたくさんいたものでした。

そういうアナログな学習もいいものですが、オンライン辞書はAI音声による単語読み上げがあるので、やはり今となってはオンライン辞書を使ってリンクをクリックしまくるという学習法がお勧めです。

「醜い」と認識されている英単語

美しくないとみなされる基準は日本語においても、不快なものを言い表した言葉であることはごく普通なのですが、英語発音的に美しくないものを見つけるというのが本投稿の趣旨なので、吐く(Vomit, Puke) などは当たり前すぎるので新鮮味に欠けます。

どうしてこんな言葉が「醜い」と呼ばれるのか!と訝りたくなるような言葉が見つかると面白い。

前回、crepuscularを見つけたときには唸りました。栄えある最も醜いとされる言葉が「美しい」を意味する言葉だったとは!

<1> pus /pˈʌs /

白血球が外部から体内に侵入したばい菌と戦うと、白血球の死骸は醜い膿(うみ)となります。この単語は膿という意味の一般語。

この言葉は怪我したりすると、頻繁に耳をするようになる嫌な言葉。

Crepuscular の響きが不快なのは、この「Pus」が語中に含まれているからでした。アクセントがこの音の上に落ちるので、嫌でも耳について嫌なイメージが付きまといます。

膿を見た人は Yuck, Gross などと呟いて不快感を露わにしますが、傷口から入ったバイ菌を排除しようとして戦った白血球の残骸ですので、そう無碍むげにするべきものではないのですが。

瘡蓋のScabと同じく、われわれには必要なものです。

<2> ointment /ˈɔɪntmənt /

オインタゥマント(オイントメント)は傷口に塗る塗り薬。傷に関係する言葉。

怪我や病気に関する言葉は不吉で嫌われるということでしょうか。

Ointという部分が自分には豚の鳴き声の日本語の「ブーブー」に当たる「Oink」を連想させますが、 

英語圏で人気キャラのPeppa Pig
豚のブーブーはOink, Oink!

語源的にはラテン語 unguentum (香水、良い香りのするもの)から古いフランス語の oignement (油を注ぐ)を経て、聖書の頻出語である「油を注ぐAnoint」と交わり、Ointmentとなったようです。

豚の鳴き声に傷口に塗る薬というダブルネガティヴなイメージの言葉ですね。

<3> unctuous  / ˈʌŋk tʃu əs /

上記のOintment 同様に、語源はラテン語の「Unguere」の言葉。

本来は「油を注がれた=聖別された=英語のAnointed」という良い意味だったのですが、「油のような、すべすべしている、なめらかな=Oily, Greasy」から、あまりに脂ぎっている、ベタベタ過ぎているとされて、「お世辞だらけの、感動的にみせたような」という否定語になった言葉。

この言葉が人や人の行為に使われると、残念な意味なのです。例えば:

It was an emotional speech, but a delightfully graceful, rather than unctuous and overblown, one

情感あふれるスピーチだったが、大袈裟でわざとらしくなく、とても優雅なものだった

<4> chunk /tʃˈʌŋk/

この「チャンク」というのは割と日常語なのですが、上品さに欠ける言葉。

A chunk of bread, A chunk of meat, A chunk of ice

パンのかたまり、肉塊、氷のかたまり

などなど。

次のように言い換えるともっと上品。

A loaf of bread, A slice of bread, A portion of meat, A block of ice

パン一切れ、パン一斤
肉の一部

Chunk は何にでも使えて便利なのですが、美しい言葉とはいいがたいですね。

言葉の響きも、個人的に語尾に「ŋk」がつく言葉は好みではないです。美しくない。

スピルバーグ監督の往年の名作映画「グーニーズ」より
ほら吹きだけど食いしん坊で憎めないローレンス少年のあだ名は Chunk
もちろんカッコいいあだ名ではなく、
太ってるので「かたまり、でぶ」という意味。
子供のあだ名って残酷です。

<5> regurgitate /rìːgˈɚːdʒətèɪt/

これも「吐く」という意味の言葉。イメージ良くない。

嘔吐関連の言葉は嫌われますが、吐くは吐くでも、この語は吐き戻すという意味で、鸚鵡返しに聞き返すという意味もあります。

For the exam, you must be able to regurgitate What you learned. (試験のために覚えことを反復できるようにならないといけない)

こんなふうに親鳥が雛に餌をあえる場合にも
regurgitate が使われます。
親ペンギンは獲物を飲み込んで持ってきて
子供に吐き出して与えるのです
Punguins feed chicks regurgtated food
(ペンギンは雛に吐いた食べ物を食べさせる)

<6> grotesque /groʊtésk/

この言葉は Gross! (胸糞悪い)という言葉を連想させる響きで嫌ですが、語源的にはGrossではなく洞窟を意味するGrotto (イタリア語ではGrotta) 由来の言葉。

カタカナのグロテスクで知られていますが、英語発音はグロゥスクで、Gro- は二重母音。カタカナ語から知ってるつもりでグロテスクと発音していると、永遠に日本語訛りが消えない要因となります。

カタカナ語は日本語の響きを一切忘れて地道に一つ一つ辞書を引いて覚えなおすしかない。ああカタカナって難しい。英語を長年喋っている日本人の英語をカッコ悪くさせる最大の戦犯ですね。

個人的には語尾の -tesque はフランス語風で優雅なので、-tesque で終わる言葉は好きなのですが、グロ=不気味、不快を連想させるGrotesqueは嫌われます。

語尾の -tesque は本来は芸術様式などを表現する語尾。

Grotesqueも古代ローマのGrottoスタイルという意味で、洞窟風な装飾のことだったのですが。怪奇様式は確かに存在して、唐草模様に悪魔の姿を交えたりした不気味なゴシック的な芸術は立派なグロテスク様式というジャンルです。

グロテスク様式の一例
こういうオカルト的な要素のある芸術スタイル

Arabesque アラベスク(アラブ風幾何模様、優美な唐草模様)
Burlesque バーレスク(滑稽な、風刺的なスタイル)
Picturesque 絵のような、画趣に富む
Statuesque 彫像のような、威厳のある
Romanesque ロマネスク様式 (中世ヨーロッパ様式)
Picaresque ピカレスク(悪漢の)
Junoesque (女神ジュノーのように)堂々として美しい

など、とても素敵な言葉を語尾の-tesque は作り出すのですが。

<7> honk /hάŋk(米国英語), hˈɔŋk(英国英語)/

車のクラクションの音ですね。

chunk 同様に「ŋk」で終わる響きの言葉。

<8> fetid /féṭɪd(米国英語), ˈfetʌd(英国英語)/

悪臭漂うという言葉。

イメージされる意味が最悪。類語にはもちろん Stinky や Smelly がありますが、柔らかなS音とは違う、破裂音のFの言葉。

嫌なイメージしか思い浮かばない。類語に Rancid や Putrid がありますが、これらは腐敗臭。

不快な匂いにもいろいろありますが、この言葉は排泄物の匂い。

<9> harangue /hərˈæŋ(米国英語), hɜ:ˈæŋ(英国英語)/

お説教のこと。退屈な演説、または選挙での相手を攻撃する嫌な演説。

どんな熱弁も嫌はヒトには Harangue になるのです。

この動画、たくさんの例文を教えてくれます。

<10> cacophony /kækάfəni(米語), kəkˈɔfəni(英語)/

‐phony からわかるように、音関連の言葉。

醜い音なので「不協和音、耳障りな音、不快な調べ」。

Kakosが古代ギリシア語のBad。美しい言葉に選ばれていた Euphony(良い調べ)の反対語ですね。

the cacophony produced by city traffic at midday.

真昼時の都会の雑踏の耳障りな音

破裂音の有無?

言葉の美醜の基準は様々かもしれませんが、まず強い音を要求する子音が出てくると、やはり耳障り。

子音のなかでもPlosiveと呼ばれる破裂音を伴う子音は響きを尖らせる役割を果たします。

唾を飛ばすように強く発声する破裂音も、口の中の舌の位置の違いから
Bilabial(両唇の)
Alveolar(歯槽の)
Velar(軟口蓋の)
と専門的に区別されますが、日本語話者はとりあえず、
PとBを日本語のパ行とバ行の音よりも強く発声することを心掛けるといいのでは
唇をかむ Labiodental(FとV)は訓練なしには発音できない音ですが、
これらはあまり美しくない音とは見なされないようです。

「プッ」と強く発音するPが英語の音を濁らせる戦犯なような気がするので、89語を分析してみると、Pから始まる言葉は13語(15%)で14語のCに次いで多く、語頭ではないPを含んだ言葉は37語(42%)という分析結果が得られました。

phlegm、pregnant、puce、pugilist、puke、pulchritude、pus、putrid

Pで始まる「醜い」とされた言葉たち
Puceは暗赤色、pugilistはプロの拳闘家、Pukeは「吐いたもの、へど」
Putridは「腐敗したもの」

CやSは音声的にこれといった個性のない音で、英語アルファベットの頻出語。

C:24語(語頭では14語)
S:62語(語頭では11語)
E:10語(語頭ではゼロ)
P:37語(語頭では13語)

英文の中で最も頻繁に使われるアルファベットはEです。Eは潤滑油のような母音でEそのままではあまり個性はない。ですが分析結果は面白い。「醜い」とされる単語にはあまりEは登場しないのです。ここらへんにも美しくない響きの秘密があるようです。

Eという潤滑油がないと言葉の響きもギシギシしますね。

ラテン的な響きとゲルマン的な響き

やはり美しさはなめらかさと柔らかさ。

美しいものはすべすべしている印象を与えます。

逆に硬さは美しくないと認識される。

その意味で柔らかなラテン系の言葉は美しく、硬派なゲルマン系の言葉は美しくないという偏見が英語世界には根強く残っています。

わたしはバッハやシューベルトの声楽曲に憧れてドイツ語の響きに心酔して第二外国語として学生時代にさんざん勉強しました。

いまでも私はドイツリードのドイツ語が大好きですが、どちらかと言えば、柔らかな心象を持つオーストリアやスイス方言のドイツ語を好みます。

わたしが良く視聴する、言語学学位を持っている語学ユーチューバーのロブさんはドイツの響きが「硬くて美しくない」といわれる。

とにかく英語ネイティブはドイツ語に親近憎悪を抱くというのが一般的なのです。

ドイツ語には濁音が多くて、ラテン系のフランス語やスペイン語やイタリア語とは比較にならないほどに強い発声が要求されます。

日本人にもなかなか難しそうですが、ローマ字読みで読めるので、やはり英語よりはいい言葉にわたしには思えます。

ローマ字読みできないことがわたしには英語の最大の弱点に思えます。

Re-(例えばRecord、Recognize)
De-(例えばDescription, Default)

などの接頭辞は、それぞれ無理やりカタカナで書いて「リ」や「ディ」であって、決して「レ」や「デ」ではない。

でもRecord、名詞の場合はアクセントの位置が変わるので「レコード」の「レ」になるのです。

こういう英語の決まりは慣れれば美しいと思えるのかもしれませんが、自分の個人的な美的嗜好からはほぼ遠い言葉です。

英語が世界共通語でなければ、自分は決して英語を勉強しようなどを思わなかっただろうなとつくづく思うのです。

言葉の硬さと柔らかさ

日本語にも「やまと言葉」と「大陸由来の漢語」の違いがありますよね。

わたしは柔らかな大和言葉の響きの甘美さが大好きなのですが、この感覚はラテン系とゲルマン系の違いにも通じるのかもしれません。

硬い子音と柔らかな子音。この組み合わせの妙が言葉の美しさであり、美しくない音を作り出す要因なのですね。

柔らかさは「美しい」
https://mi-journey.jp/foodie/78516/

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