シェア
あの人は 言った 何かを 願うということは そこから一歩 踏み出すということだ だから 何かを 願うということは とても 怖いことだ 安定していて 安心できるところから 不安定で 危険な 外に出るのだから 怖い 足が竦む 身体が震える やっぱり やめてしまおうか 心が 挫けそうになる 進みたい 気持ちと 留まろうという 気持ちとが 天秤を 傾け合う けれど あの人の心には 止められない 願いがある いや 願いというよりは 抑えきれない もの まるで 疼き
あの人は ずっともがいていた どうしたら 自分らしく生きることが できるのか 問いばかりが 頭に残った 教育に 厳しい家庭に生まれ 優秀な 兄弟を持った 常に 比較の対象になり 自分は 何のために生きているのか 問い始めるのは 自然のことだった そんな あの人が 目覚めるきっかけに なったのは 大学での 出来事 当時所属していた サークルでは 運営がうまくいかず 停滞していた いつもならば 目立った行動はしない けれど サークルに愛着のあったあの人は 他の人が