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アルペンスキー-運動の全体像➀

今回はアルペンスキーの運動に大きく関与する様々な要素がどのように関係し合うかを構造的に見ることで全体像を把握し、その中でも起点となるスキーヤーの動きを中心に見ていきたいと思います。

指導の場でコーチはパフォーマンスが上がるための様々なアドバイスをしてくれますが、基本的には競技者の動きに関するものが中心だと思います。これは外側からはっきりと目に見えるものであり、競技者自身の意識によって直接変えることができるものであるため、非常に有効な手段だと考えられます。しかし、アルペンスキーは動きを評価するのではなく、タイムを評価することを忘れてはなりません。よって、指導された動きはスキー板に対してどんな動きなのか、その動きによってスキー板の状態はどう変化するのか、スキー板の状態変化によってどうパフォーマンスにつながるのかを理解する必要があるでしょう。これらは小さいころからスキーをやっている人は体が理解している場合が多いと思いますが、私は言葉で理解することが大切だと思っています。

今回はそれらを理解する・考えるための枠組みを紹介してみたいと思います。ぜひ最後まで読んでみてください。(長くなったので今週と来週に分けます)

運動の全体像

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このnoteで言いたいことのほぼすべてがこの図に詰まっています。(正直これがすっと頭に入ってくるのであればこの先は読む必要ないくらいです。)

この図はNorwayのスキー研究者のReidさんが作成した図を日本語訳したもので、滑走者の動きとパフォーマンスの結びつきの全体像をよく表していると思ったので紹介しようと思います。

特に目新しい要素は無いと思いますが、意外とこのように全体像と要素間の関係性を考えたことがある人は少ないのではないでしょうか。僕もその一人で、なんとなく考えていたものの、図にしたことはありませんでした。

この図では基本的に滑走者の動きが起点となり、矢印が出ています。これは滑走者が直接・意識的に変えられるのが自分自身の運動であるためです。しかし現実では、要素同士は相互的に関係しあうため、一方通行ではないことに注意してください。

これからこの図の説明に入っていきたいと思います。

パフォーマンス(滑走時間)=滑走者の軌道÷滑走者の速度(図の右側)

以前書いたnoteでも触れましたが、アルペンスキーのパフォーマンスは滑走時間のみによって決まります。

そして、滑走時間は単純な算数で(距離÷速度)によって求められ、距離が滑走者の重心軌道で決まる滑走距離、速度は滑走者の平均速度となります。このとき速度を獲得するために必要となるのが重力です。

よって、滑走距離を小さくする⇒旗門に対してまっすぐ滑る
    平均速度を大きくする⇒できるだけ減速しない
ことによって、パフォーマンスが向上すると考えられます。

当たり前のことですが、パフォーマンスに直結する要素はこの二つであり、これらのバランスが大事になります。(これらの関係性について検討している論文は結構あるので後々紹介していきたいと思います。)

※ここでは、スキー板の軌道と滑走者の軌道は若干異なっていて、滑走者の方が速度を考えやすいので、区別しています。

スキー板と軌道、速度(図の中央部)

スキー板の動きは、スキー板の斜面に対する動きスキー板そのものの動きに分類して考えます。

スキー板の斜面に対する動きとは、スキー板の角付けや、スキー板の斜面に対する向き迎え角(スキー板の速度方向とスキー板の向きの角度差のことで、カービングだと0に近く、ズレのあるターンだと大きくなります)などが代表的です。(下図)

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またスキー板そのものの動きとは、スキー板の変形を指していて、主にはたわみとねじれ(トーション)があります。(下図)

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さらにスキー板にかかる力には、大きさとその分布が要素として考えられます。スキー板のどこにどのくらいの大きさの力が作用するのかということです。(下図)

これらのスキー板の動きとそれに作用する力が関係して、雪面との相互作用が決まってきます。この相互作用には雪質道具の特性などが関係してきます。

さらにスキー板の相互作用の変容が、スキー板の軌道・速度に関係してくるはずです。

スキー板の動きと軌道の関係は多数の要素が非常に複雑に絡んでくる上に、状況によって変化するものが多く、大半が計測困難なため現状理解できていない部分が多いと思われます。

終わりに

今回はアルペンスキーの運動構造を示し、その中でもスキー板とパフォーマンスのつながりについて説明してみました。

このように全体的に眺めてみると、新たな気付きや上手くいっていない原因を考えるときの手助けになると思います。

次回は今回触れていないスキーヤーの動きとスキー板の動きの関係性についてまとめたいと思います。

本日も最後まで読んでいただきありがとうございました!
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Reid, R. C. (2010). A kinematic and kinetic study of alpine skiing technique in slalom.

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