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【DoctorTのスポーツ医学】あなたは見せる派?機能重視派?筋肉の2つの役割。

 こんにちはDoctor Tです。今回は、意外に知られていない筋骨格筋(きんこっかくきん:内臓の筋肉ではない、自分の意思で動かせる筋肉)の役割についてお話します。

 筋肉の働きって、何ですか?

筋肉には2つの主な役割がある
 1つは手足を曲げ伸ばしする(関節を動かす)役割です。これはみなさんがまず思い浮かべるものだと思います。もう一つは、関節を安定させる役割です。え?これを聞いて、言ってることが逆じゃないかと思った人もいるでしょう。

 私は、同じ関節でこれらが同時に起きているとは言っていません。腕相撲の動作を想像してみてください。動きは、肩の内旋(肘から上の腕の位置を変えずに、体の中心に向かって回転させる動き)だけで、肘は曲がったまま、手首はやや手のひら側に傾いて「固定」されていませんか?

 筋肉の種類によって、主な役割は①関節を動かすこと、②関節を安定させること、に分けられます。前者をモビライザー(mobilizer :「動かすもの」の意)、後者をスタビライザー(stabilizer :「安定させるもの」の意)と言います。コアマッスルは基本的にスタビライザーです。

 筋肉の解剖図を見るとわかりやすいです。著作権の関係で図は載せられないので、筋肉名で検索してみてください。

モビライザーは見せる筋
 モビライザーは表面近くにある大きな筋肉であることが多く、いわゆる「見せる(見える)筋肉」です。なので、意識していないと思いますが、ジムでウェイトトレーニングをしている人のほとんどはモビライザーを鍛えています。みなさんが知っている筋肉はほとんどモビライザーに属していると思います。

スタビライザーは縁の下の力持ち
 一方で、スタビライザーは小さく、深いところにあるので外からは見えません。しかし、体の深部で、体の軸を安定させています。地味ですがとても大切です。スタビライザーは体を動かすための基盤なのです。

 土台(スタビライザー)がぐらついていては、その上のクレーン(モビライザー)は安定して重いものを動かせず、ひっくり返ってしまうかもしれませんよね。

よくある落とし穴
 上にも書いたように、ジムへ行って筋トレをしている人を見渡してみると、ほとんどがモビライザーを鍛えているように見えます。でも、土台ができていないのにクレーンをガンガン動かしたらどうなるでしょう?倒れますよね。

 トレーニングでしばしば見かける、腰までの台に乗って上半身を上下に勢いよく振っている人がこれに当たると思います。私も見かけますが、教えてあげたい気持ちを抑えつつ、自分の運動をしています(笑)。

 背筋を鍛えている目的は背骨周囲の安定だろうと推測します。そうであれば、スタビライザーを鍛える必要があります。背筋を安定させるための運動は、プランクなど大きな動きのない(体を安定させる)じわじわしたトレーニングが本来の目的にかなっているでしょう。

マッチョな人にあるあるの腰痛
 全てに当てはまるわけではありませんが、見せる筋肉を付けるためにウェイトトレーニングをしていて、そのウェイトに見合った分のスタビライザーの力がないと、関節や筋肉に過剰な負荷がかかってしまいます(下の図)。姿勢の問題もあると思いますが、スタビライザーのトレーニングが足りないのも一因だと思います。地味でもスタビライザーの力をつけましょう!

もう一つのピットフォール(アドバンス編)
 モビライザーによって、その深層にあるスタビライザーが働くのを抑えられてしまうこともあります。同じ動きをするのにも、人によって使っている筋肉が違うことがあるのです。説明は詳細になってしまうので今回は割愛します。モビライザーのトレーニング中心の人もスタビライザーのことを忘れないで

まずは体幹を安定させよう!
 トレーニングの仕方は個人の自由ですが、見せたいあなたもスタビライザーを鍛えて、モビライザーもつけていくのがよさそうです!

スタビライザーのトレーニングとはすなわち体幹トレーニング
 あなたが、運動不足で健康増進や腰痛膝関節痛予防のために運動を始めるのであれば、スタビライザーのトレーニングをおすすめします!これがいわゆる体幹トレーニングなのです。

好きなトレーニングをやってみよう
 ネットにはたくさんの体幹トレーニングの例が出ています。自分のできそうな、続きそうなものを選んでまずはやってみましょう!10種類を一週間しか続けられず挫折するより、何ヵ月も続けられそうな2-3種類を選ぶ方がいいです。

【まとめ】
・筋肉にはモビライザーとスタビライザーという2種類の役割がある。
・モビライザーは表層にある大きな筋肉が多い。
・スタビライザーは深層にある小さな筋肉が多い。
・スタビライザーが不十分だとモビライザーが強くても痛みや怪我の原因になる。
・運動を始める人はスタビライザーをトレーニング(体幹トレーニング)しましょう!
・自分で続けられる体幹トレーニング2−3個から始めてみよう!

一度よい体が手に入ると、日常生活がかなり楽になります。そうすれば、運動が楽しみになる?!みなさんが前向きで、元気な日々をおくれますように。

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