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変えるべき「ただ1つ」のこと

去年から、JHL(ハンドボール)を実際に何度か、訪問し、観戦し、先日もWリーグのアルビBBラビッツ対トヨタアンテロープの試合を、長岡で観戦し、チームスタッフともいろいろ意見を交わした。馬瓜シスターズも含めて、五輪の銀メダルメンバー、3X3のメンバーも多くいて、豪華な布陣で、かつ、2000円という安価で試合もめちゃくちゃエキサイティングだったが、観客はまばら。バレーボールも、V2のヴォレアス北海道の試合を観戦し、社長・GMを含め、いろいろ話をお伺いすることができた。女子ソフトボールリーグも、来年からJDリーグとなり、先日、ニトリがリーグ冠になることが発表された。私も、JDリーグ化に向け、マーケティングのアドバイザーとして、パートナー・スポンサースキームの構築や価値提供メニュー・企画などを行なった。
昨日、Vリーグ1部のFC東京(バレーボール)が休部されることも発表となった。コロナ前に、FC東京の選手に促されて、墨田区体育館でFC東京の試合を観戦し、試合の内容がエキサイティングで、満員。バレーボールってこんなに面白いんだ、と再確認させられた。ずっと以前に、Coca-Colaの仕事、資生堂の仕事で、ワールドカップバレーや日本代表の試合も観たが、Vリーグも物凄い面白いと思った。同時に、いくつかの課題も感じた。
・立ち見が多い
・飲食をほとんど販売していない、食事は体育館入り口のレストラン
・東京ガス関連以外のパートナー・スポンサーをほとんど集めていない
・グッズも売っていたかどうか記憶が曖昧 など。
去年、JHL(ハンドボール)を湘南台とスカイホール豊田で観戦したが、エントリオでも観戦しようと、チケットを買って、新幹線で東京から名古屋に向かい、エントリオでのJHL・トヨタ合成の試合を楽しみに向かった。しかし、新幹線の車内で、TWITTERを見ていたら、試合が中止になりそうだ、と。しばらくして、別なツイートで、東京からのチームの選手に感染者がいるらしい(事実は、検査が間に合わず、結局感染者はいなかった、と聞いた)とのこと。しかし、公式の情報が全然でてこない。東京から向かい新幹線のチケットも買い、名古屋に着く直前である。結局、MSBS(ミッションスポーツビジネススクール)の第1期の皆さんの機転で、スカイホール豊田での別な大崎電気などの試合を見ることができた(急遽、豊田に移動)。
その後、ハンドボール関係者と意見を交わしたが、私が、
「試合の中止の発表も遅いのはまだしも、それの告知・説明も情報が足りないし、払い戻しや代替試合の有無などの情報もよく分からない。チケットを買ったお客に対して、全然コミュニケーションしようとしていないのではないか」と話すと、「極端にいうと、別に、お客と思っていないのではないですか」と。根本の課題が分かった気がした。

ハンドボール、バレーボール、ソフトボール、女子バスケットリーグが変えるべき「ただ1つ」のこと

変えるべき「ただ一つ」のことは、「顧客思考」である。「ファン」と「地域」と「パートナー企業」を「顧客(お客様)」として「顧客起点」からすべて、仕組みやコンテンツを創っていく、実装する。ここに挙げた、ハンドボールリーグ、バレーボールリーグ、ソフトボールリーグ、女子バスケットリーグは、すべて実業団とプロの混成、または実業団リーグである。ここで、長年染み付いた固定観念の壁がある。”実業団チームは、社の福利厚生が目的で設立されたので、ファンサービスやスポンサーシップ・パートナーシップ活動はほとんどしない。できない。歴史的にもそうだ”。”プロ化しないとファンサービスしない、スポンサーも獲得できない”。これを、ずっと今も、スポーツ関係者なども言う。しかし、これは、間違った固定観念である。よく考え、事実を見てほしい。これらのリーグの実業団チームの企業・責任企業・オーナー企業は、トヨタ、パナソニック、サントリー、東京ガス(今回バレーボールは休部)、富士通、ホンダ、久光、トヨタ系列・トヨタ関連など、”超”大企業、”超”優良企業が華々しく並んでいる。それを、ほとんどの人達は、優良企業だから財務力があり、チームをもつ”余裕”がある。選手の人件費も含めて”負担”する力がある、と言う。またはそういう認識である。だが、考えてほしい。なぜ、これらの企業は優良企業で、超大企業であるのか。それは、顧客に忠実に、真摯に、商品、サービス、価値提供をして、お金(キャッシュ)・売上・利益をあげ続けているから、である。スポーツ界より、これらの企業は、「顧客体験(CX)」の超プロフェッショナルである。つまり、顧客に対してのサービスや価値提供は凄まじくレベルの高い企業群なのである。車のユーザー、医薬品のユーザーや医者、システムを導入する企業や自治体に対しては、凄まじいまでの価値提供、顧客満足の機会を提供し続けているプロフェッショナルなのである。つまり、今までは、これらのリーグの多くのチームやリーグ関係者、運営の方達(地元の協会や教職員も含めて)は、観戦にくるファン、地域の人たち、パートナー・スポンサー企業の人たちを、『顧客』と思っていなかったのではないか。「顧客=お客様」と捉えていたら、立ち見席はありえないし、トイレは綺麗にすべきだし、いちいち靴を内履きを用意させるとか、飲食が無い・できないとか、試合情報・試合会場・チケット販売情報をどんどんSNSで発信しないとか、あり得ない。スポンサーに対しても、価値提供メニューを構築して、日々報告や提案をしない、とかあり得ない。「ファン」と「地域」と「パートナー企業」を「顧客(お客様)」として、リーグやクラブ全体で認識、シフトをしていない。もちろん、ヴォレアス北海道のように、顧客視点をクラブ全体に徹底して、クラブの理念とともに、実装している団体もある。
親会社大企業は、福利厚生目的の実業団は、マーケティング活動ができない、という偏見・固定観念を打破すること。もともと、その企業は「顧客体験(CX)」のプロフェッショナル。ファンや地域やパートナー企業を「顧客」と強く捉え直し、組織もシフトしたら、実業団チームのままでも、観客は増え、チケット単価は上がり、グッズも売れ、パートナー企業も増えて、メディアにも取り上げられ、価値も上がり、収益も増えるはずである。これを現業で各責任企業はやっている。既存の顧客に対して。その顧客の定義に、ファンと地域とパートナー企業も組み込む。

トヨタやホンダは、ドライバーが、喜ぶこと、ワクワクすること、安全に運転できることに対しては、物凄い注力をして、顧客に合わせて商品も開発し、顧客を喜ばせるプロである。BTOB企業も、取引先企業が満足すること、安心すること、喜ぶことには、注力する。

懸念は、それぞれのリーグが、「ガバナンス」だ、「制度設計」だ、新しいチェアマンに期待、理事に優秀な人たちが来た、リーグや連盟がもたついてる、リーグが何もしない、などと、「内向き」の話、「連盟・リーグのキーマン」の話ばがりが目立つ。もちろん、ガバナンスも制度設計も重要だが、それよりも、ファンは満足してるのか、情報発信・コミュニケーションは継続的にされているのか、観戦環境はどうなのか、パートナー企業への価値提供はどうなのか、地域と選手たちは、毎週のように交流しているのか、地域のスターになっているのか、地域のアイコンになっているのか。

制度設計やガバナンスについて、議論や研究をするのもいい。しかし、顧客視点や顧客との仕事の経験がない(優秀そうな)人たちで、海外事例を参考に、制度設計しても、ファンは、パートナー企業は、地域は、ついてこないだろう。例えば、リーグの制度設計議論で、「オープン型(昇格・降格もふくめて、トップリーグに参入できる)」「クローズ型(リーグの構成数を限定的にして、あまりチーム数を増やさない)」の視点がある。サッカーのヨーロッパスーパーリーグ構想が出た時、何人かの評論家は、欧州サッカーも米国プロスポーツのような「クローズ型」に向かってる、とかトンチンカンな言説も出回った。これに関しては、長くなるので、シンプルにいうと、米国プロスポーツの「クローズ型」の本質は、ウェーバー制ドラフトも含めて『ファンが、各チームの力が均衡していた方が、毎年、試合を楽しめる』というのが根本にある。一方で、欧州サッカーは、『上位チームが毎年おなじような状態でも、降格・昇格もあり、上位がUEFAチャンピオンズリーグとELに参加できるシステムを、現状選ぶ』状態である。それもひとつのやり方であり、制度設計である。

ファン・地域・パートナー企業は「顧客」である。

別に、お客さまは神様ではない。無理にぺこぺこする必要もない。しかし、リスペクトをもって、お金を出す、地域の環境を提供している、「顧客・お客」に対して、きちんとサービスや感動や喜びを提供し、対価として堂々とキャッシュを頂く。それは、実業団チームでも可能である。たったひとつ変えるべきは、『顧客思考』へのシフト、である。

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