見出し画像

【マンデルフレミングモデル、財政政策編】マクロ経済学part15

 もしも政府が財政政策をしたとして、それが無意味になった場合を考えたことがありますか?無意味になると考える論理が経済学にはあるのです。
 それは、為替相場制にあります。変動相場制と固定相場制の違いに着目して、財政政策の効果を見ていきましょう。

 前回はここから!


マンデルフレミングモデルと財政政策

基礎の知識

 マンデルフレミングモデルは開放経済の下でのIS-LM分析をするようなものです。これは、財市場と金融市場の関係を考えています。
 財市場と表す、IS曲線については

$${Y=C+I+G+NX}$$

をGDP$${Y}$$と利子率$${r}$$の関係で示すものとなります。これは右下がりのグラフとなります。

財市場では利子率rとGDP Yは右下がり

 金融市場については、LM曲線で表します。貨幣需要である$${L}$$と貨幣供給である$${M}$$を$${L=M}$$で均衡させます。これもGDP$${Y}$$と利子率$${r}$$の関係で示すものとなります。これは右上がりのグラフとなります。

金融市場では利子率rとGDP Yは右上がり
2つの曲線を結んだもの
この交点が財市場、金融市場の均衡する利子率とGDPの組み

財政政策とは

 財政政策とは政府支出$${G}$$を増加させることで、$${\Delta G ×\frac{1}{1-c}}$$だけの$${Y}$$(GDP)を上げることができることでした。詳しくかここから!!

財政政策はIS曲線を右に動かす

 財政政策を行うとIS曲線が動くことになります。

変動相場制の場合(資本移動完全の場合)

 変動相場制の場合に財政政策を行うとどうなるのでしょうか。まず、IS曲線は右にシフトします。すると利子率が上昇します。

縦軸に注目、利子率rが増加する

 ここで為替の動きに着目します。資本移動が完全なので、利子率が上昇すると、円高になります(利子を求めて、ドル売り円買いが起こるため)。
 円高になるとどういうことが付随するでしょうか。答えは、輸入が活発になります(円が強いので買う力が強くなるため)。つまり、輸入が活発になると純輸出$${NX}$$は減少してしまいます
 すると、IS曲線は元の位置に移動するまで、$${NX}$$が減少してしまうのです。

 この話をまとめると

  • 財政政策でIS曲線が動き、利子率が上がる

  • 利子率が原因で円高になり、輸入が増える

  • 輸入が原因で、IS曲線が元の位置に戻る

つまり、マンデルフレミングモデルの理論だと、変動相場制の場合は財政政策は無効になってしますのです!

せっかく右に動かしたIS曲線が、左に戻る

固定相場制の場合(資本移動完全の場合)

 固定相場制での財政政策を考えてみます。

  • 財政政策でIS曲線が動き、利子率が上がる

  • 利子率が原因で円高になり、

までは流れは同じです。前回の話から、固定相場制では為替を一定に保つために、円高になった場合、円安にしようとどうにかします。
 円の価値を下げる場合は、中央銀行が貨幣供給を増加し、円売りドル買いをして円安にさせます。この売る円を必要とするために貨幣供給が起こるのですが、このためにLM曲線が右シフトします。

為替を維持するためにLM曲線が動き、政策は有効

 なんということでしょうか、IS曲線とLM曲線がともに動くことで、GDPが2回も増えました。
 固定相場制の下での財政政策は有効ということです。

資本移動がない場合(応用)

 難しい話なので、飛ばしてもらっても大丈夫です。資本移動がない場合、利子率が上がっても円高になりません。為替による円買いドル売りが起きないからです。

IS曲線が動くと利子率の他に$${Y}$$(GDP)が上がりますこちらに着目します。

 資本移動がない場合の流れをまとめます。

  • 財政政策により、GDP $${Y}$$ が上がります。(IS曲線が右シフト)

  • GDPが上がると、円安傾向になります。($${NX}$$が増えるため、輸出有利な円安気味になる)

  • 固定相場制では、円安気味の為替を抑えるために、円高にします。つまり、LM曲線が左にシフトしてしまいます(金融機関は円買いドル売りをするために、円を回収するため)。よってGDPは増えないまま、利子率が上がる結果となり、無効になります。

  • 変動相場制では、円安気味な為替からそのまま輸出が進んでいくので、IS曲線がさらに右にシフトします。よって、GDPは増え、有効です

固定相場制の場合、為替を維持するためLM曲線が逆向きに動き、政策は無効となる。
変動相場制の場合、為替に制限がないので、円安が進みIS曲線は動き続けるので、政策は有効である。

 「資本移動がある場合は、利子率上昇に着目して円高になる。資本移動がない場合は、輸出増に着目して円安になる。」というのが違いですね。

 最後まで見ていただきありがとうございました!いいねとフォローをいただけると嬉しいです。次回はここから!!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?