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「こどもたちに等しくスポーツの楽しさに触れる機会を…」スポーツ系公務員・伊藤遼平さんの奮闘

こんにちは。スポライブ編集部です。

突然ですが、みなさんは「スポーツに関わる仕事」と聞いて、どんな仕事を思い浮かべますか?

スポーツ選手、スポーツドクター、スポーツブランドの社員…ひとえにスポーツと言えど、仕事としてはさまざまな関わり方があると思います。

そんな中、公務員という立場から「スポーツの力で夢や感動を地域に届けよう」と知識や経験を活かし奮闘しているのが、埼玉県宮代町の役場で働く伊藤遼平さんです。

今回は、「スポーツ系公務員」である伊藤さんが推進する、スポーツの力で地域を活性化させる取り組みについてお伺いしてきました!

「アスリートと触れ合う機会には地域差がある?」そんな疑問から気づいたスポーツの情報格差

ーー早速ですが…、すみません。「スポーツ系公務員」ってどういうお仕事なのでしょうか…?

伊藤さん(以下略):あはは。実は僕が勝手に名乗ってるだけで、そういう役職があるわけではないんですよ。

僕は今、埼玉県宮代町役場の子育て支援課で働いているのですが、公務員になる前はバレーボールコーチとしてFC東京のチームスタッフをしていました。公務員になってからもその経験を活かした活動をさせていただいているので、わかりやすく「スポーツ系公務員」という肩書きを名乗らせてもらっています。

※FC東京とは…サッカーJリーグに所属するクラブ。バレーボールのプロチームも存在する。

ーーなるほど。ご自身のスポーツ業界での経験を生かして、スポーツを活用した地域の取り組みに貢献されているということですね! 今までどのような取り組みをされているのですか?

地域の子どもたちが参加するイベントでプロのアスリートと触れ合う機会をつくったり、地域のお父さん同士が交流するための体を動かすイベントを開催したり、主にスポーツを身近に感じられるような地域活動を行っています。

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テレビ会議での取材に快く応えてくださった伊藤遼平さん

ーーアスリートと直接触れ合えるなんて、素敵なイベントですね! 地域のファミリーイベントにスポーツを絡めるという試みはなぜ思いついたのでしょうか?

地域のために自分ができることを考えたときに、スポーツの分野が自分の知識や経験、コネクションを活かせると思ったからもありますが、チームスタッフとして働く中で、そもそも公務員に転職するきっかけにもなった「気づき」を得ていたからです。

ーーそれは…!?

地域によって、スポーツに触れる機会に「格差」があるのではないかということです。

クラブチームには「ホームタウン自治体」という制度があって、ホームタウンの小学校にはアスリートが訪問したり、サイン会が開催されるなどのイベントが開催されることが多く、僕も前職のチームスタッフ時に、その活動をしていました。

ーー「ホームタウン自治体」という制度があるんですね。すみません、知りませんでした…

いえ、ホームタウン自治体ではない地域の人は知らない人が多いと思います。僕も仕事で関わるようになってはじめて「あれ? 自分の地元ではアスリートとこんなに近くで触れ合える機会はなかったよな」と気づきました。

練習場があるホームタウンに住んでいると、コンビニに選手が入ってきたりするんですよね。とても身近なところに一流のスポーツが存在している。

かたや、自分の地元もそうでしたが、地方でスポーツに触れる機会といえば学校の授業や友だちと遊ぶくらいです。

つまり、スポーツにも地域で情報格差や体験格差があるのではないかと。一流と触れるだけで、そのスポーツに対するイメージや意識は変わってくるからです。そして、プロスポーツに携わった人にしか、その格差に気が付くことができない。

ーー地域によってそんなに差が出るものなのですね。正直、意識したことがありませんでした。

また、スポーツを選ぶ上での可能性にも差があると思っています。
学校の体育ができる人=スポーツができる人、というイメージはありませんか?

ーーはい、ありますね。

球技が苦手でも格闘技は得意な人がいるように、人には個性があります。1つのスポーツができないからといって、他のスポーツで輝けないとは限りません。

ただ、学校で教えられるスポーツの種類にはどうしても限界があって、やはりサッカーや野球などのオーソドックスなものが中心になります。「この子はこのスポーツに触れてさえいれば、輝いていたかもしれない」という可能性の芽を伸ばす機会が少ないのです。

だから、自分が関わるイベントは子どもたちに一流の世界に触れてもらう機会や、さまざまなスポーツを体験してもらう機会を増やすことを重視しています。

ーーあらゆる可能性を育むための機会を提供されているのですね!

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地域に格差のないスポーツ文化を根づかせるために…選んだ公務員へのいばらの道

ーーところで、先ほどから話に出ていましたが、伊藤さんは一度クラブチームに就職されていて、そこから公務員になられていますよね。かなりの路線変更だったと思いますが、なぜ公務員を目指されたのですか?

生まれた場所が違うというだけで、スポーツ文化に子どもの頃からたくさん触れられる人、触れられない人が分かれてしまっている。

その格差に気づいてからすぐ、その溝を埋めるにはどの職業の大人が頑張ればいいんだろうと考えはじめて、

「自分がチームスタッフの仕事で地域に行く時は、市の職員の人が誘致していたな。つまり、地域にスポーツ文化を持ってきて根づかせるのは、地域の職員の人かもしれない。
じゃあ、スポーツの知識を持っている自分こそ公務員になろう! 」って決めました。

ーーえ〜! ものすごくテンポよく決まりましたけど、一大決心ですよね!?

そうですね(笑)でも勢いで決めたわけではなくて、一生スポーツに関わって生きていきたいという自分の夢を叶えるために、今後どういう方向に進むべきかを真剣に考えた結果でした。

クラブチームにはバレーボールのコーチとして所属させてもらっていたのですが、やはり生涯現役は難しくて。おじいちゃんになっても子どもたちと同じ目線でがんがんスパイクを打てるかと言われると限界がありますから。

地域の職員としてスポーツに関わる仕事ができるなら、自分の今までの経験も生かせるし、やり方次第では一生続けられると思いました。

ーー確かにそういった目線を持った人は地域でも重宝されそうですね!

でも、正直決めてからはかなり大変でした(笑) 中学からバレーボール一筋で生きてきたので、人生初めての受験が公務員試験だったんです。もう、必死で…!

ーーたしかにそれはいきなりハイレベルな…!(笑) しかし、それをちゃんと有言実行されているのが、さすがスポーツで結果を残してきた人、という感じがします。

ーーいざ、公務員になられてから、それまでの仕事とのギャップはありましたか?

実は公務員になれてからも、すぐにスポーツに関する課に行けたわけではありませんでした。日々スポーツとは無縁の仕事をしながら、自分の強みはずっとスポーツに関わり続けてきたことだと信じて、周囲にアピールし続けました。

公務員になって4年目の今年、現在の課に異動になり、ついに地域とスポーツに関する取り組みができる様になったので、とても嬉しく思っています。

ーーおめでとうございます! 念願のスポーツ系公務員としての初仕事はいかがでしたか?

最初に企画したのは地域のイベントにバレーボール選手を呼び、子どもたちと一緒にボール遊びをしてもらうというものでしたが、正直、大成功とはいえませんでした。

情報が思った以上に地域の方に届いておらず、スポーツにおける地域活性の取り組みへの認知の課題を思い知らされました。

しかし、選手のみなさまがとても協力的で優しくせっしてくれたおかげで、イベントに参加してくれた方々の反応は上々で、ご家庭の事情でなかなかスポーツに普段触れられない子、引っ込み思案な子など、さまざまな背景を持つ子どもたちが皆、自らアスリートの方々との円陣パスに入っていき、みるみる笑顔になっていくのを見たときは「ああ、この仕事をしてよかったな」と心から思いました。

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そして、改めてアスリートたちの力はすごいなと感じました。彼らのエネルギーに引っ張られて、子どもたちが、地域が明るくなっていく気がしました。

スポーツ界にいた自分だからこそ、アスリートの方々の側の事情も理解できるし、ビジョンも伝えやすく、チームスタッフや講師の方々からも、どの公務員よりイベントの打ち合わせが話しやすいと言ってくださっています。自分の土壌を生かして地域に貢献できることが、今とても嬉しいです。

「誰でも平等に楽しめる」がモットー。オン/オフの自分を最大限に生かして目指す、アスリートと輝くまちづくり

ーーその後もさまざまな取り組みをされていらっしゃいますが、地域でイベントを開催するときに、伊藤さんが重視しているポイントがあれば教えてください。

なるべく誰でも、平等に、楽しめるスポーツイベントにすることをルールにしています。

例えば、今地域では子育てにおけるお父さん同士の交流機会の減少が課題になっています。
お父さんたちの交流を深めるために体を動かすレクリエーションは効果的ですが、その場合、フットサルなどのメジャーなスポーツを避けて、マイナースポーツや、誰でもできる簡単な体操などを中心に企画するようにしています。

ーー経験者とそうでない人に差が生まれないようにするためですか?

その通りです。その気はなくても、やはり経験の差がコミュニケーションをギクシャクさせてしまうことはあるものだと思います。であれば、地域交流が目的の場では、差が生じにくい環境を提供するべきです。イベントの告知も、あえてスポーツを全面に出さない形でプロモーションしています。

ーー全員が初めてやるスポーツとかであれば、運動神経などを気にせず、わきあいあいと楽しめそうな気がします。

最近はマイナースポーツ連盟の方やユニバーサルスポーツの関係者の方との交流も増えてきて、自分も新しい価値観を得ることができる機会をたくさんいただいています。
こういった経験をより多くの人に楽しんでもらえるように頑張りたいと思います。

それから…プライベートでもパパになるので、より地域の人に寄り添って意見を取り入れつつ、自分ができる最高のパフォーマンスを出していけたらいいなと考えています!

ーーわぁ! おめでとうございます!地域の方とアスリートの方、両面に寄り添って新しい地域活性の価値を生み出していく伊藤さんの活躍が楽しみです。

最後に、この記事を読まれている方にメッセージをお願いします。

「日本中の田舎まちにスポーツのチカラで夢や感動を届けたい」。この想いを胸に抱き、今後も「スポーツ系公務員」として、地域の方やアスリートの方に喜んでもらえるような企画をたくさん実施していきたいと思っています。
もし、何か課題を感じられていたり、一緒に何かやってみたいと感じてくださった方はぜひご連絡ください!

自分が働くまちや生まれ育ったまちの子どもたちが、当たり前にスポーツ選手に出会えて、一緒に遊べるような環境を目指しています。

はやく「Jリーガー」に会わせてあげたいですね!

スポーツ界から公務員の転職。
自分の職場では他に似たようなキャリアを歩んできた人や、志を同じにする人がいないので、進んでいく全ての道が初めて通る道で大変なことばかりですが

自分には「夢があるじゃないか」を言い聞かせて、これからもがんばります!

ーーありがとうございました!

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【イベントのお知らせ】
2021年4月2日には「埼玉西武ライオンズ・レディース」とのコラボイベント、4月11日には「次世代スポーツ」の体験会イベントなど、伊藤さんの企画されたイベントが続々開催予定です。ご興味ある方はぜひ宮代町役場のHPをチェックしてみてください!
http://www.town.miyashiro.lg.jp/0000016248.html
http://www.town.miyashiro.lg.jp/0000015827.html

その他のイベントは以下をご確認ください
http://www.town.miyashiro.lg.jp/0000016199.html
http://www.town.miyashiro.lg.jp/0000016319.html
http://www.town.miyashiro.lg.jp/0000016348.html
http://www.town.miyashiro.lg.jp/0000016328.html

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