見出し画像

サンフレッチェ広島の栄光に君臨した2人のチェコ人プレーヤー@チョコっとチェコ語講座③;チェルニーとハシェックとハーチェクと。。。

広島ビッグアーチ(現、エディオンスタジアム)と共にサンフレッチェ広島の歴史は紡がれてきた。去る土曜日のG大阪戦は3-0の完勝で見事にエディスタの有終を飾り、その一部始終は森保一、高木琢也ら多くのレジェンドにも見守られ、NHK広島放送局は佳境の大相撲九州場所中継を45分も削って広島県民に向け放映した。

Jリーグ草創期の1994年、早くもサンフレッチェはファーストステージを制覇してみせる。英国紳士、スチュアート・バクスター監督は寒い日にはベンチでアフタヌーンティーを啜りながらも洒脱なタクトを振るい、日本人の利点を英国式のプレースタイルに落とし込み、小都市・広島のチームがJ1で勝ち続ける為の戦術を一戦一戦叩き込んでいった。現日本代表監督・森保一や西ドイツでもプレーしたベテラン・風間八宏、アジアの大砲・高木琢也らが3本どころか11本の頑強な矢を束ね、地方都市・広島から華麗にビッグなアーチを敵のゴールに放ちまくった時季だった。そして、このチームの大躍進を語るに欠かせない2つのピースを埋めたのが、いぶし銀の輝きを放ったチェコ人プレーヤー、イヴァン・ハシェックと、パヴェル・チェルニーである。彼らと韓国人ストライカー・盧廷潤こそ、純国産ではJ1の頂点に登り詰め得なかったチームのベースに、その足りないポテンシャルを補って余りあった3本の矢であった。

ハシェックもチェルニーも、共産国家・チェコスロヴァキア時代から祖国を代表するフォトバリスタ(サッカー選手を意味するチェコ語)であり、現在もチェコのサッカーファンの中に彼らの名を知らぬモグリを見つける方が難しいほどのレジェンドである。
彼らのチェコスロバキア時代は、その共産主義国家体制故に国外でのプレーが禁じられ、自然、故国の強豪チーム、スパルタプラハやスラヴィアプラハ、チェルニーは郷里のフラデッツクラーロベーなどでもプレーする長い歳月を送った。
やがて、1989年に共産主義体制が崩壊するや、ハシェックは以前からラブコールを受けていたフランスのストラスブールなどで成熟したプレーを見せつけた。その後、チェコ代表でも同僚だったチェルニーが一足先にプレーしていたサンフレッチェ広島の紫のジャージに袖を通すことになった。ジーコがアントラーズに、カレカがレイソルに、ドゥンガがジュビロに、リトバルスキーがジェフに、ストイコビッチとヴェンゲルがグランパスに世界レベルのサッカーを伝えた様に、サンフレッチェ広島の土壌に欧州レベルの格の違うテクニックを植えつけたのがハシェックとチェルニーのチェコ人コンビであり、智将・バクスターだったわけである。

去る9月16日にハシェックは久々に広島ビッグアーチのピッチサイドに立っていた。チェコ滞在中だった私は、イバンは当然、プラハに居るものだ、との認識で、たまたまその前日に彼にメールを送っていた。電光石火でイバンがくれた返信には「明日、広島に向かうんだよ!」と悦び勇んだチェコ語で書かれていた。

ハシェックは選手としてのディープなキャリアを終えると、古巣のスパルタプラハでは監督として2連覇を成し遂げ、祖国チェコ共和国代表監督やチェコサッカー協会会長などを歴任した他、ヴィッセル神戸や古巣のストラスブール、中東の強豪クラブ及びレバノン代表監督としても指揮を執った。

一方で、プラハの旧市街に小さな寿司バーを長男と経営している。もともとは、日本人の板前を引き連れてオープンした所以で、その恩人ヨシさんと自らの名前ハシを半々で冠した【ヨシハシ寿司】と云う店名である、笑笑。
共和国広場【Náměstí Republiky】からブルタバ川に向かって歩くと、河畔に広島の原爆ドームに瓜二つな産業貿易省のビルが荘厳な佇まいでお目見えする。その中間辺りの電停・Dlouhá Třídaで路面電車を降りて数分歩くと、ハシェック氏のニッポン愛がギュッと握られた粋な江戸前寿司と、懐かしの輝かしい笑顔とスキンヘッドに出会えるのである、笑笑。

さて、末筆ながら、ようやくチェコ語のお勉強です。チェコ語の世界では、ハシェックはHašekと、チェルニーはČernýと、そしておそらく日本で一番有名なチェコのレジェンドフットボーラー、ネドベドはNedvědと書いて、実はネドヴィエッドと云う風に読まれます。
ハシェックのシェ、チェルニーのチェ、ネドベドのベの上に発音記号のハーチェクが振られていますね。だから、ハセックでもセルニーでもネドベドでもなく、ハシェック、チェルニー、ネドヴィッエド、と云う感じが正しいチェコ語の読ませ方になるわけです。
日本の近場では、難解なベトナム語に於いてもアルファベットに種々の発音記号が振られていて、見た目だけでノックアウトされそうになりますが、いざチェコ語の発音記号を知っていると、ABCDにかわいいオマケが付いて、かなり得した気分で自己満足に浸れます、笑笑。

追伸、先週まで隅田川に近い蔵前に在ったレアでコアなチェコ雑貨屋さん、チェドックザッカストアをご存知でしょうか?蔵前から近所の台東区三筋に移転するのを機に、店名が、そのハーチェクに変わるようです。ちなみに、チェドックはčedokと表記し、チェコの国営旅行代理店に因んだ名称です。また今回のサブテーマに取り上げたレ点の発音記号ハーチェクそのものも、háčekと表記します。このháčekを目にする度に、私はHašek氏を思い浮かべて、遠いプラハに想いを馳せています、いや、ハシェています、笑笑。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?