ハクのおにぎり食べたい。

『千と千尋の神隠し』を久しぶりに観た。
金曜ロードSHOWでたびたび放送されているので割と何回も観ているはずなんだけれど、最後に意識的に観たのは、そういえば大学生の頃だった気がする。

社会人になってからこの作品を観ると、感じ方がいままでとはぜんぜんちがうのでおどろいた。
中でもいちばん印象が違ったのが湯婆婆で、これまではただのこわい人だと思っていたけれど、実は経営者としてかなり信頼できる人なのでは、と感じた。

だって、「雇うよ」と言えばすぐに契約書を出してくれるし、教育係をつけてくれるし、礼儀作法も教えてくれるし、「そんなひょろひょろになにができるんだい」と言っておきながら、がんばればきちんと抱きしめて褒めてくれる。お腐れ神さまがやってきたときは機転を利かせてスタッフをまとめ上げ、お客に最高のサービスを施すし、カオナシが暴れたときは一本の電話で尻拭いに向かう。

湯婆婆、めっちゃええ人やん。

* * *

と、こんな話をしたいのではなかった。
本題はハクのおにぎりである。

ジブリ作品は、食べ物や食卓のシーンが実においしそうに描かれていることでも有名だろう。『となりのトトロ』でサツキがつくっていたお弁当。『天空の城ラピュタ』でパズーがつくる目玉焼きのせトースト。『もののけ姫』でジコ坊がアシタカにふるまった謎のおかゆのようなもの(よくわかんない食べ物なのに、あれめっちゃおいしそうじゃないですか?)。

そして、『千と千尋の神隠し』では、ダントツでハクのおにぎりがおいしそうに見える。海苔すら巻いていない、まっしろの(たぶん)塩おにぎり。ハクのかけたまじないのおかげもあるかもしれないが、千尋があれだけの勢いで食べて大粒の涙を次々と流すんだもの。米の甘みが際立った、ほっと安心できるようなおいしさだったに違いない。

あのシーンを観てどうしてもおにぎりが食べたくなってしまった私。CMの間に台所に立ち米を研ぎ炊飯器をセット、炊けたらおにぎりにし、鑑賞中に食べた。炊きたてのごはんはうまい。米の粒を舌で感じながら、これだけでなんだかあったかい気持ちになった。

映画に出てきたおいしそうなものは、一度は真似してつくってみたり、気に入ればしばらくの間食べつづけたりしてしまう。

たとえば。
これも先日地上波で放送していた『万引き家族』。映画館でも観ていたので鑑賞は2回目だったのだが、夕立控える湿気が多そうな日に信代(安藤サクラ)と治(リリー・フランキー)が食べていたそうめんがその当時よりおいしそうに見え、翌日すぐそうめんを買いに行った。湯がいて、キンキンに冷えた氷水に入れてコシを出し、めんつゆに浸して食べた。

『美人が婚活してみたら』では、主人公のタカコ(黒川芽以)がポップコーン好きで、劇中でやたらと食べるため、私の中でもブームがきた。ポップコーンって映画館でしか食べないイメージだったけれど、案外ふつうにスーパーのスナック菓子コーナーに並んでいるもんなんですね。塩味のポップコーンを深めの皿に入れて上にバターを置いて、それが溶ける程度に少しだけ温めてから食べるのがたまの贅沢になりました。

この小さい袋タイプには出会ったことないけど、どこにあるんだろう。
カルディとか?

それから『愛がなんだ』の筑前煮。
呼び出されたのに余計なことをしたせいで、夜にも関わらずマモちゃん(成田凌)に追い出されたテルちゃん(岸井ゆきの)。所持金不足の中たどり着いた友人・葉子の家で、ビールを片手につまんでいた。これがまたかなりおいしそうで(というか岸井ゆきのちゃんの食べるシーンはどれもおいしそうに見えるので彼女の食べ方が良いのかも)、映画が終わったらすぐにスーパーに行って食材を揃えてつくった。調子に乗ってしまったせいで結構大きめの鍋いっぱいにできてしまったのだが、おいしくて割とすぐになくなった。

* * *

食べ物がおいしそうな映画は良い。
スクリーンの中で、画面の向こうで、登場人物たちがきちんと生きているように感じられる。

生きるには食べなければいけない。
うまいごはんを食べる、好きなものを取り入れる。ただそれだけかもしれないけれど、そういうシーンはなるべく丁寧に描いてほしいなぁ、そして、そういう作品が好きだなぁと思ったのでした。


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