見出し画像

猫には話しかけたくなる

 かなしいかな、たぶん私は動物の毛がダメだ。実家に帰ると父と母が飼っているインコの羽ばたきで目や鼻がかゆくなる。数日滞在すれば、洪水のような鼻水に見舞われる。先日行った飲み屋でも、看板犬のプードルを抱いて毛に顔をうずめたらくしゃみが止まらなくなった。転勤族で社宅暮らし、弟がぜんそく持ちという環境で育ったため、私はこれまで毛のあるペットを飼ったことがない。いや、実は小学生の頃、捨て猫を2週間ほど保護したことがあった。でも、外に置いたダンボールの中で世話をしていたので、同じ空間に住んだことがない。だからこれまで気づかなかったのだ、弟だけでなく私も動物の毛がダメだということ(これまで行った猫カフェやうさぎカフェでは平気だったんだけどなぁ……)。私自身は結構見境なく動物が好きなのだけれど、どうやら片思いのようである。

 ところで私は、猫を見かけるとどうしても話しかけたくなってしまう。彼らは気ままに過ごしているようで、話しかけたら耳だけこっちを向いていることがある。たぶん、私の話を聞いている。聞きながら、「ばかだなぁ」とか、「考えすぎだよ」とか、きっと思ってる。たまに適当に相槌を打ってくる子もいる。なんとなく会話が成立している、気がする。落ち込んだ時は、相手をしてくれる近所の野良猫ちゃんの元へ会いに行くこともある。最近見かけないけど、元気に過ごしているのだろうか。それだけが気がかりだ。

 そんな私にぴったりの、最高のコンテンツをNetflixで見かけた。ほのぼの癒される内容で、1話が短いものないかなぁと探していたら、たどり着いたのが『しまねこ日和』。テレビ愛媛が開局45周年記念で制作した番組らしい。1話12分。愛媛県大洲市の青島でのんびり暮らすしまねこたちの様子を映している。なんとこの島には猫が100匹も住んでいるとのこと! 島民は15人しかいないのに。まさに猫の島である。最近は猫の聖地としても有名らしいけれど、ぜんぜん知らなかった。

 本当に、猫たちが愛らしい。第2話の「たからさがし」で、海面をぴちぴちと跳ねている魚をどうにか捕まえようと必死な様子など、あまりのかわいさに画面越しに「がんばれぇ」、「うわぁ、海落っこちた! 濡れるのいややんなぁ」とやっぱり話しかけてしまう。この猫の引力、いったいなんなんだろう。なんだか、憧れすら覚えてしまうんだよな。気ままで勝手で、人間のことなんかまるで目に入っていないようで、でも構うとたまによろこんでくれたりして。こっちの思い過ごしかもしれないけど。

 ちなみに見出し画像にある猫は、昨年の夏に実家の近所の公園で出会った子だ。上京した友人と遅くまで飲んでいて、終電ギリギリで最寄駅についた帰り道。夜中なのにドラマの撮影中で(ばり東京っぽいエピソード。大阪やとバラエティの撮影にしか遭遇したことない!)、スタッフに迂回するよう指示された先に、いた。毛づやがよくて、ちょっと太っていて、めちゃくちゃ人懐こかった。なで回しながらひとしきり喋って、「じゃあね」と立ち上がると、行かせまいと脚を掴まれる。「ごめんな、帰らなあかんねん」と歩きはじめると、公園を出るまで追いかけてきて、心がぎゅっとなった。

 いつか。老後でもいいから、いつか。猫と一緒に暮らしてみたいなぁ。いやでも、私の身体が猫を拒否してしまうかもしれないので、猫を飼っている友人の家に遊びに行かせてもらうくらいがちょうどいいのかなぁ……。いいなぁ、猫……。


この記事が参加している募集

コンテンツ会議

最後まで読んでくれて、ありがとうございます!