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洗濯物の手洗い

極端に面倒くさがりの私は、家事があまり好きではない。
できれば目をつぶっていたい。

料理は好きだけれど、後片付け、つまり洗い物は苦手。掃除も、こまめにコロコロをしたりクイックルワイパーをかけたりはするけれど、掃除機を出すまではかなり腰が重い。洗濯など、文明の利器があるので人間は「干す」というもっとも簡単な行為しかしないのに、それでも気が進まない。

元来、なまけた人間なのである。


話は少し横にそれるけれど、ついに先日近畿地方も梅雨入りをした。
さすが梅雨、入った途端にこれかよ、と萎えてしまうくらい、湿気がすごい。空気が水分を含んで重い。その中に放り出されると、なにもしていないのに汗でじっとりとしてくる。気持ち悪い。くせ毛は湿気を帯びてくるんくるんだ。

そんな梅雨を、そしてこれから本番を迎える「クソ暑い」夏を越えるためのマストアイテムが、「リネン素材の服」である。「リネンは涼しい」というのは、知らない人はいないくらい当たり前の事項として世間に浸透していると思うのだが、天邪鬼な私は半信半疑だった。「なに着たって夏は暑いやろ」と。

でも、2〜3年前にはじめて取り入れて愕然とした。暑いことにはたしかに変わりない。けれど、リネン素材とそうでないのとでは不快指数がまったく違う。リネンは体に吸い付かない。いつでもサラサラだ。リネンをまとうだけで過ごしやすくなる。

以来、私はリネンに寝返ったのだった。


ところが、である。
リネンにもマイナスポイントはあった。汚れやすい上、洗濯機で洗えないものが多いのだ。やわらかい素材であるから仕方ない。洗濯機にかけたらシワシワになるしすぐヘタってダメになる。気づけばパンツもシャツもワンピースも、春夏用のジャケットでさえリネンであるのに。

あぁ、面倒くさい。

洗わなければ汚いけれど、手洗いはやはり面倒だ。ドライモードで洗濯機に放り込んであとは知らんぷりという手もあるけれど、さすがにパンツやジャケットは型くずれが気になる。

「私の体の形に沿って凹みができているんじゃないか」と思うくらい長時間転がりつづけていたベッドをのろのろと抜け出して、私は洗面台へ向かった。洗面器にぬるま湯をため、おしゃれ着洗剤を垂らし、リネンアイテムたちを手で洗いはじめた。

ジャケットは袖口や襟ぐりを、パンツは裾やウエスト周りを特に入念に揉んだ。洗って簡単にすすいだあとは、やっぱり洗剤が残っているのは嫌なので、洗濯機に入れて超短時間ですすぎと脱水だけした。

そうして洗ったものたちを部屋に干したら、なんだか晴れ晴れした気持ちになった。洋服たちをこんなに丁寧に扱うことは、ふだんはあまりない。でも、こうやって「手塩にかけた感じ」を自分で味わうだけで、なんだかうれしくなるものなんだなぁ。


月曜日の今日、洗いたてのリネンのジャケットに袖を通したら、心なしか前より生地がやわらかくなっている感じがした。洗剤の匂いもやさしく香っている。相変わらず外はじめじめしていたけれど、少しだけ、気分は晴れやかだった。


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設置していた質問箱にいくつか書き込んでいただいていたようで。近々お答えできればと思います。


最後まで読んでくれて、ありがとうございます!