【スプラ3】 現環境はバランスが良い?悪い? ブキの多様性を調査しました

こんにちはー! Splatoon 統計課 @splatoon_stat です。

はじめに

スプラトゥーンにおいて現実的なブキの選択肢が豊富にあるか否かはゲームを楽しむ上で重要な要素のひとつです。 スプラトゥーン3においては発売からしばらくの間シャープマーカーが人気ブキのトップを独走する状況が続きました。 このようにブキの人気に大きな偏りがある場合、プレイヤーが選択できる戦略の幅が狭くなりゲーム体験が単調になってしまう懸念があります。 ここ最近では v3.0.0 のブキ追加や v3.1.0 のバランス調整でブキバランスがよくなってきたとの声も聞くようになりました。

そこで今回は stat.ink の戦績データをお借りして、ブキの多様性を定量的に評価してみました。

ブキの多様性をどのように評価するか

ブキの多様性が高いとはどのような状態でしょうか。

例えば次のような2つの環境を考えてみます。
スプラトゥーンがまだ開発段階でブキは5種しかありません。 テストプレイヤー10名が各々自由にブキを選択します。 その結果ブキごとのプレイヤー数が各ブキ2名ずつとなった場合を環境A、1種のみ6名その他が1名ずつとなった場合を環境Bとします。

環境Aと環境Bとではブキの種類はどちらも5つで等しいですが、ブキのプレイヤー数がより均等に近いAの方が多様性が高いと言えます。このようにブキの多様性は、ブキの種類の数である「種数」とブキごとのプレイヤー数の均等さである「均等度」の2つを考慮して評価することができます。

シャノンの多様度指数

生物学の分野では生物の多様性を示す数値尺度として多様度指数というものがいくつか存在します。 今回は広く使われているシャノンの多様度指数を使ってみたいと思います。

種数 $${S}$$、種 $${i}$$ の相対的優占度を $${P_i}$$ とすると、シャノンの多様度指数 $${H'}$$ は以下のように定義されます。

$$
H' = - \displaystyle\sum^S_{i=1} P_i \log_2 Pi
$$

相対的優占度とは「種が群集の中で占める割合」であり、スプラトゥーンに置き換えると「ブキの使用率」とほぼ等しい概念となります。

それでは先程の環境Aと環境Bの例でシャノンの多様度指数を求めてみましょう。 環境Aでは5種すべてのブキで $${P_i = \frac{2}{10}}$$ となり多様度指数は2.32となります。

$$
\begin{align*}
H' &= - (\frac{2}{10} log_2 \frac{2}{10} + \frac{2}{10} log_2 \frac{2}{10} + \frac{2}{10} log_2 \frac{2}{10} + \frac{2}{10} log_2 \frac{2}{10} + \frac{2}{10} log_2 \frac{2}{10}) \\
&= 2.32
\end{align*}
$$

環境Bでは1種のブキで $${P_i = \frac{6}{10}}$$、その他4種のブキで $${P_i = \frac{1}{10}}$$ となり多様度指数は1.77となります。

$$
\begin{align*}
H' &= - (\frac{6}{10} log_2 \frac{6}{10} + \frac{1}{10} log_2 \frac{1}{10} + \frac{1}{10} log_2 \frac{1}{10} + \frac{1}{10} log_2 \frac{1}{10} + \frac{1}{10} log_2 \frac{1}{10}) \\
&= 1.77
\end{align*}
$$

確かに環境Aの方が値が大きくなりますね。
多様度指数は最小値 $${0}$$、すべてのブキの使用率が均等になるとき最大値 $${\log_2 S}$$ を取り、「種数」が多いほどそして「均等度」が高いほど値が大きくなる性質があります。

シャノンの多様度指数の直感的な意味は「他プレイヤーのブキを知らされたときに受け取る情報量の期待値」で単位は bit です。 もう少し平たく言うと「他のプレイヤーのブキを予想する困難さ」のようなものです。 人気ブキが偏っているときは他のプレイヤーのブキを予想することは難しくありませんが、逆に人気ブキが多数あるときは予想は難しくなります。

実際のデータからブキの多様性を評価する

それではいざ stat.ink のデータを基に多様度指数を算出してみましょう。

使用データ

今回は stat.ink に記録されている 2022/12/1 ~ 2023/4/13 に行われたXマッチ162,330戦の戦績を使用します。 流石に4ヶ月半のデータともなると膨大な量ですね。

ルール内訳とXパワー分布は以下の通りです。

調査に使用したデータは stat.ink の統計情報ダウンロードページからダウンロードできます。 stat.ink および関連ツール開発者に大感謝🙏
Directory Index of /splatoon-3/battle-results-csv

算出方法

まず日付ごとにブキの使用率を求めます。 ブキ使用率はいつもの通り stat.ink ユーザーの使用しているブキは集計から除外し、味方及び対戦相手の1バトルにつき7名の使用ブキから算出します。  またルールのバトル数の違いに影響されないよう、ルールごとにブキ使用率を求めてから平均します。
次に得られたブキ使用率から日付ごとの多様度指数を求めます。 ブキの種数はそのときのバージョンで選択できるブキの数(v3.0.0以前は67種、以後は79種、ヒーローシューターレプリカはスプラシューターと同一ブキとして扱う)とします。

なおフェスの日はXマッチを遊べる時間帯が短くデータが著しく少ないため集計から除外します。

調査結果

ブキの多様性の推移は以下のようになりました。 赤字はバージョンのリリースタイミングを示します。

v2.0.x
多様度指数は 5.3 bit 前後で横ばいに推移しています。 v2.0.0 ではXマッチが開始されました。

v2.1.x
多様度指数は一度 5.5 bit 近くまで上がり、その後 5.4 bit 台に落ち着いています。 v2.1.0 ではトリプルトルネードのダメージ増加やカニタンクの継続時間短縮などのバランス調整が入りました。

v3.0.x
多様度指数は v3.0.0 リリース直後から 5.6 bit 近くまで上がり、その後もじわじわと上がり v3.1.0 直前には 5.7 bit 付近に到達しています。 v3.0.0 では春シーズンが開始され、12種の新ブキが追加されました。 またクイックボムのインクロック増加やいくつかのスペシャルの対カニタンク性能強化などのバランス調整が入りました。

v3.1.x
多様度指数は 5.8 bit 前後に上がっています。 v3.1.0 ではブキの特徴をよりはっきりさせる意図のバランス調整が入りました。

考察

マイナーバージョンアップ以上の更新において多様度指数がどの程度変化したかをざっくりまとめると以下のようになります。

どのバージョンも前のバージョンより多様度指数が上がっており、ブキの多様性改善に対して一定の効果があったことがわかります。
特に v3.0.0 の更新は効果的だったと言えるでしょう。 v3.1.0 のブキ使用率を見てみると、シャープマーカーネオ、ラピッドブラスターデコ、ジェットスイーパーカスタム、.96ガロンデコ、ヒッセン・ヒューなど v3.0.0 で追加されたブキが最新のバージョンでも一定の人気を獲得していることが確認できます。

まとめ

ブキの多様性をシャノンの多様度指数を用いて定量的に評価してみました。 その結果継続的にブキの多様性が改善されていること、特に v3.0.0 の更新が効果的だったことがわかりました。 今後の更新にも期待が持てる結果ではないでしょうか!

それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。


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