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あの日のロケット

憧れの宇宙

子どものころから宇宙が好きだった。
「宇宙が好きだ」と自覚するずっと前から
身近な存在だったような気がする。

海の近くに住んでいて、
夜になると真っ暗な海の上に
キレイな星空が広がって、
遠くにあるはずなのにいつも近くに感じる。

それが私にとって最初の宇宙だった。

宇宙に憧れるようになったのは小学生のころ。
残念ながら数年前に閉園してしまったけれど、
宇宙をテーマにしたテーマパークがあった。
ジェットコースターやお化け屋敷なんかの
いわゆる遊園地のアトラクションも
たくさんあるのだけど
その中に月の石宇宙服
ロケットエンジンなどの
宇宙関連の資料などが展示してある
場所があった(と思う)。
その展示の中でスペースシャトルや
宇宙飛行士のことを知り
「こんなにカッコいい仕事があるんだ」と、
私は強く憧れた。

それがきっかけで
宇宙の本や図鑑を読んだり、
望遠鏡で星を見たり、
宇宙が大好きになった。

とは言え
子どものころの私には宇宙だけじゃなく、
他にも好きなことがいっぱいあったし
周りにもそんな話で盛り上がるような
仲間はいなかったので
大人になるにつれて、
いつの間にか興味も薄れていき、
子どものころ宇宙に憧れていたことなんて
すっかり忘れていた。

思うは招く

植松努さんのことを知ったのは、
数年前にたまたま見た
1本のYoutubeの動画だった。

このTEDのスピーチ動画は、
何百万回も再生されている有名な動画なので
知っている人も多いかもしれない。

植松さんは北海道の小さな町工場から
ロケット開発の夢を叶え、
現在もさまざまなことにチャレンジされている。
「どうせ無理」と言われながら
それでも諦めずに夢を実現してきた
植松さんの言葉のひとつひとつが、
「どうせ無理」と言われるのが嫌で
自分の夢や気持ちを言葉にすることが
苦手になっていた私の心に優しく響き、
涙が止まらなかった。

子どものころに飛行機やロケットに
夢中になった話を聞いて、
私も宇宙が大好きだったことを思い出した。

そして、その夢をずっと諦めずに持ち続け
実現した植松さんは
私の憧れの人のひとりになった。

今年4月。
福岡で植松さんの講演会と
ロケット教室が行われることを知り、
私はすぐに参加の申し込みをした。
(こういうときの行動力の速さは尋常じゃないと自負している。)

待ちに待った講演会当日。
その日はパラパラと雨が降っていた。
「憧れの植松さんに会える!」
ワクワクとドキドキが入り混じった私は
会場へと向かう。

講演会が始まり、植松さんが登壇される。

「違うってことはステキなことなんだよ。」
「夢はたくさんあっていいんだよ。」


植松さんの言葉には
本当に何度も勇気をもらってきたが
直接聞くお話は、さらに心に響いた。

あっという間の60分だった。

講演会の後、昼食をはさみ、
待ちに待ったロケット教室が始まった。

ロケットのつくりかた

植松さんのロケット教室で
つくるロケットは
小さいけれども
本物のロケットと同じ仕組みで
発射して0.3秒後には
時速200キロを超えるという。

このロケット教室では、つくり方を教えません。
設計図を見ながら自分の力で
わからなかったら周りを見て、聞いて、
みんなで教え合いながら
協力して
つくっていきます。」

最初に植松さんから説明があった後、
さっそくロケットづくりが始まる。

ロケット胴体の接続がうまく出来ずに
悪戦苦闘していると
ひとりのスタッフの方が声をかけてくれた。

「うまく行かないってことは、
もしかしてどこかが違うのかな?」

決して答えを教えるのではなく
気づくきっかけの一言。

そのおかげで私は手順を元に戻って
間違っていたところを見つけることができたし
無事にロケットを完成させることができた。

わからないところは助けを借りながらも
あくまで自分で考えて、自分の力でつくる。

あぁ、私は「自分で考える」ということを
いつの間にかやらなくなっていたな。

わざわざ自分から
「もっとこうしてみたら」
なんて言わなくても
その場をやり過ごせたら
何も問題は起きないし、

周りの空気を読んで
言われたことだけを
要領よくこなしていたら
すごく楽だったから。

だけど、自分で考えてやってみるって
こんなに楽しいんだ。ワクワクするんだ。

こんなにも自信が湧いてくるんだ。

そういえば昔はもっと
こんな気持ちになってたっけ。

ロケットをつくりながら
そんなことを感じていた。

LIFT OFF

ロケットも完成し、
打ち上げのころには
パラパラと降っていた雨も止み
曇り空になっていた。

発射台まではズラリと行列ができている。
空高くへと飛んでいくロケットを見上げ、
大人も子どももみんな笑顔を輝かせていた。

いよいよ順番がやってきて、
発射台にロケットを設置すると
私はドキドキしながら発射のスイッチを握った。

3、2、1

掛け声と共にスイッチを押す。

真っ直ぐに空へのぼっていくロケットと一緒に
私の中の“何か”が高く高く舞い上がった。

考えるよりも
すぐに行動してしまう性分だから
これまでもやりたいと思ったことは
割と実現できてきた。

「生きにくいなぁ」と
感じる時期もあったけれど
それでも今は楽しくて、
正直あまり悩みもないくらい
仲間にも日々の暮らしにも恵まれた
充実した毎日を送っている。

そんな私でも、まだどこかで
抑えている気持ちがあったんだな。

曇り空へと飛んでいくロケットを見上げながら
そう思った。

ロケットだってつくれたんだから
これから先、
どんなことだってできる気がしている。

まだまだ私が知らないワクワクは
たくさんありそうだ。

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あっという間に
半年もの時間が
経ってしまったけれど
あの日から私の胸は
ずっと高鳴りっぱなしだ。

まるでロケットの第一エンジンが
分離したみたいに心が軽くなって、
やりたいことに向かって
今でも気持ちはどんどん加速している。

これからも夢をたくさん持ちながら、
ずっとチャレンジし続けていきたい。

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