昔、失明した事がある
そう言うと大体の人は信じてくれない。
今、見えてるから。
当時も普通に生活していたから。
なるほど、確かにその通り。
失明したのは今から14年前の
次女が産まれて2ヶ月の頃。
41.6℃の高熱で緊急入院し、集中治療室で
生死をさまよった。
意識は途切れ途切れで観る夢とうつつ。
目を閉じればまぶたの裏はチカチカと眩しく光り、目を開ければ病室の天井が赤黒い。
その時見た夢はお花畑ではなく、ベルセルクの世界だった。
そんな状態が2~3日続き、起き上がれるまでに回復してからはじめて、目が見えない事に気付き驚いた。
視力は昔から良い方だったので、見えない世界は初体験だ。
廊下を壁伝いに歩くも、トイレの看板も見えない。足音ですれ違う人がいるのはわかるけど50cmも離れると、輪郭もあやしい程だった。
退院後に受診した眼科で
『光を感じる細胞の一部が死滅しています。つまり失明です。治療法はありませんが経過観察で』
と診断され、大学病院へ紹介状を書いてくれた。
タイトルでは失明と書いてますが、正確に言えば『部分失明』で目の焦点が合っている部分が失明し、外側はぼんやり見えているという状態で、視力は両目ともに0.1
我が子の顔も見られない、泣き声だけが頼りの新生児育児が始まった。
乳幼児検診等でママ友に会うと
『へ〜大変だね。』
『メガネをかければ?』
という反応。
なるほど。
失明=メガネで矯正できないものという概念は、失明した人にしかわからないようだ。
唐突過ぎていまいちピンと来ませんよね。
一番困ったのは、運転ができない事。
当方、車がなければ生きてけない田舎住み。
こればかりはひとに頼らざるを得ない。
車で15分の実家の父にお願いしていた。
ある日、実家の母に
『なんで自分で運転しないの?』と聞かれ
『失明したから運転できないの』と答えた
お互いに驚いた。
父から聞いてるだろうと思っていたし
ちょくちょく実家に顔を出しているので
見ればわかると思っていた。
言葉にしなければ伝わらないとは言うけれど
ここまで伝わらないものだとは・・・。
例え親子でも、こんな大きな変化でも
言葉で伝えなければわからない。
むしろ親子だからこそかもしれない。
ある程度成長した頃から、
『詮索しない方が善し』とお互いに報告待ちのスタンスが、コミュニケーションを取りにくくしているのかもしれない。
一緒に住んでる夫にも状況を伝えていたけれど、やはり全てを理解してもらうことは不可能で、今まで通りにできない事もあり、落ち込む事もたくさんあった。
あまりに伝わらず、周りは通常運行で
私だけがパラレルワールドに来ちゃった感じの疎外感があった。
思い通りに動けず、伝わらない孤独感もあった。
しかし、家事、育児は待ったなし。
落ち込んでばかりもいられない。
身動きが取れず、不便もあるけれど
なんとか生活していかなければならない。
動けない時を切り抜けるために実践した3つのこと
新生児育児ということもあり、半年ほどは自宅で引きこもり生活を過ごした。
そこから徐々に周囲との関わりを取り戻して行くために意識して実践した事が3つあります。
①期待を捨てる。
まずは全てを理解して欲しいという期待は捨てること。
伝わらない事や理解されない事も相手の立場に立って見れば『そりゃそうだ』と思えるものが大半だ。
その立場に立たなければ学べないことってたくさんあると思います。
苦労が多い人生は学びが多い。
人は学ぶために生きているのだから
私はしっかりと人生を歩んでいるのだ。
目が見えなくなっていなければ解らなかった事がたくさんある。
すれ違っても友達に気付かないけれど、声をかけてもらって初めてわかる。
声だけでも誰だかわかる自分すごい!
声フェチで良かった!
そんな発見もいくつもあった。
②プライドを捨てる。
これが一番難しかったのですが
できない事を認め他人に頼り、お願いする。
○○だからこれはできない、今は○○ができない等、明確に伝える努力をする。
なにせ、私は『プライドの塊』
できない事をできないと言える人を尊敬します。とても大事な事だから。
目が見えるのであればまず、苦手なこと、できない事をnoteに書き出すところから初めてみても良いかもしれません。
③自分にできる事は全てやる
自分にできない事を人に頼む代わりに、自分ができることはできる範囲で進んでやる。
色々できない事はあっても
『できることは全部やる!!!』
の精神が大事だと学びました。
自分にできることも伝える。
○○はできるから○○だけお願いします。
というように全部やってもらうのを避けるのは精神衛生上とても良いように思います。
ずいぶん時間がかかったけれど、しばらく足止めされているようで、学んだことや、得たことはたくさんありました。
知ってますか?
失明したら真っ暗になると思ってましたが
チカチカ光って見えることがあります。
個人差はあると思いますが、私の場合は視界の中心部分にカメラのフラッシュの残像のような光が見えています。
カメラのフラッシュや太陽などの強い光を見ると、中心部分に残像のように光が見えると思います。
それは通常すぐに回復すると思いますが、一時的に失明しているそうです。
ひとりひとり観えている景色は違えど、これからもあなたの未来を描いていけますように。
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