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BOSEという至高のラッパー

日本人ラッパーのレジェンドは誰か、と問われたら
誰の名前が多く挙がるだろうか。
ZEEBRAやDEV LARGEだろうか。あるいは般若、KREVAあたりか。
ANARCHY、TOKONA-X、SEEDAあたりも候補になるだろう。
いとうせいこうや高木完あたりはよく分からない。
そういったアンケートがあった場合、
おそらく上位5名には入らないであろうラッパー、BOSE。
しかし、私は彼もレジェンドの一人として推したいのでこの記事を書く。

1. BOSEとは

BOSEはスチャダラパーに所属するラッパーである。
1990年にデビューし、数々の名曲を生み出してきている。
特に1994年に小沢健二とスチャダラパーで出した「今夜はブギー・バック」は若い世代でも知っている曲ではないだろうか。
ギャングスタライクなハードコア系のラッパーが好まれていた時代に、
真逆である一般人の日常の楽曲を出していた。

2. BOSEの何がすごいのか

端的に言うと「リスナーを乗せる力が圧倒的」である。
具体的に項目分けすると、以下の3点に圧倒的な才能を持っている。
①冒頭のリリックの引きが強い
②独特なワードセンス
③耳障りの良いフロウ

3. 冒頭のリリックの引きが強い

夜の赤レンジャーことボー様 生まれながら立ち位置は真ん中
役割的にはとっかかり スムースな出会いのきっかけに
『ジゴロ7 / 5th wheel 2 the coach』
はいはーい 注目 キッズたち フラットな昼をダラっと過ごし
マイクチェック1.2.3.4 B.O.S.E
『5th wheel 2 the coach / 5th wheel 2 the coach』
Check it, B to the O.S.E. モチ 帽子のマークはB
Bはbeat そしてbeautiful 後の方の意味はみんなに送ろう
『From 喜怒哀楽 / 5th wheel 2 the coach』
そこの面々 女子に少年 レディース&ジェンツ 含む主婦連
鼻で確かめ 耳でたしなめ 要は要チェック BOの暴言
フォームでたらめ ボーク寸前 コース見極め 今日を表現
きれーに流され ライナー性 転がてんてん そんで延々
『転が... / fun-keyLP』
YES YES YO オレをのせろ おだてろ 脳を天気にしてやっぞ
勘当覚悟でもっとのせろ ドロップするアーバン文法
西日背にしてBOSE登場 満場一致であきれ顔
『アーバン文法 / fun-keyLP』

いずれも、曲の頭でのリリックである。
挨拶ライクな始まりが多いことがわかる。
聴く者にとって、頭からこの感じで来てくれるのはとっかかりが良く、
まさに「スムースな出会いのきっかけ」になっている。

4. 独特なワードセンス

一億総スカン覚悟で 朝から飛ばす モダンな余談
操る最新スチャダランゲージ 綴るオレ百科事典の1ページ
『No.9/ 偶然のアルバム』
とにかく明るいわけではない 噛み分けていく酸いと甘い
アイアムそういうタイプのガイ
『レッツロックオン/ あにしんぼう』
ブーツでドアをドカーッと蹴って 「ルカーッ」と叫んで
ドカドカ行って テーブルのピザ プラスモーチキン
ビールで一気に流し込み ゲップでみんなにセイハロー
『今夜はブギーバック / スチャダラ外伝』
1. 2. サンライズ to サンセット 慢性の垂れで埋めるライムページ
I ain't no 解説 やがて見えてくる点と線と面
余計な知恵と体験 丹念に塗り分け MIC in my hand
いつかしみるまで未完成 発明発見の調べ
『トリプルショット / fun-keyLP』

これは本当にすごいと思う。ワードセンスで勝負するラッパーにとって、
語彙力の差が楽曲の良さに差を付けることは大いにある。
BOSEはオリジナルワードを生み出していることが多々あったり、
ダジャレ的に言葉を繋げることも多い。
これは「おもろラップ」で当初売り出していたスタンスが功を奏している。
また、BOSEはシチュエーション描写がとにかく上手い。
『「ルカーッ」と叫んで』なんて端的でパンチがあって、どんな状況かすぐ分かるワードなんて他に使えるラッパーはいるのだろうか、と。

5. 耳障りの良いフロウ

これはもう聴いてもらわないと分からない。
昨今のフリースタイルラップバトルでよく聴く「おれはこんなフロウできちゃうぜ」みたいな下りのやつ、あの謎の「メロディお経」みたいなものとは全く異なるものである。BOSEは音楽をやっている。
※聴くアルバムとしては「fun-keyLP」が一番良いが、年々ラップが上手くなっているので新しいものでも良い。

6. 最後に

BOSEは日本人ラッパーとして稀有な存在である。
ラッパーとして必要な要素は全部持っていて、ギャングスタではない。
これだけで充分に日本音楽界に需要があり、貢献している。

アメリカでネイティブタン・ポッセが流行ったように、
本当なら日本にも後続が出てくるはずだったのだが...。
その話は後々に回す。

そして恐ろしいことにスチャダラパーにはもう2人の才能がいる。
ANIはまあ面白い枠として、DJのシンコのビートは天才的。
恐ろしいユニットであり最大限のリスペクトをすべき対象。

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