「日程調整」から始めた理由【Spirは何を実現しようとしているのか①】
戦略的なタイムマネジメントができるビジネスカレンダー
こんにちは、Spir(スピア)の大山です。
Spirは、「相手も、自分も、思いどおりの調整を。」をキャッチコピーに、予定管理から日程調整まで、シンプルかつ戦略的なタイムマネジメントができるビジネスカレンダーです。
2020年11月にβ版をリリースして以来、登録者数が2万5000人を超え、順調に拡大しています。
これまでは、私個人のnoteとしてSpirのこれまでの成長を発信してきました。
このたびSpirの公式noteを始めることにし、第1回目は、なぜ、Spirがビジネスカレンダーを展開することになったのか、そもそも、Spirはどんな世界を目指しているのかについて、改めて、お伝えしようと思います。
なぜなら、「日程調整ツール」は最初に一歩に過ぎず、決してSpirのゴールではないことを知ってほしいからです。
米国ビザが更新できない──。それが起業決意のきっかけに
私自身はコンサルを経て、2012年にユーザベースに入社。SPEEDAのプロダクト責任者などを経て、2017年にはニューズピックスに転籍。創業者の梅田優祐さんと一緒に、NewsPicks の米国事業を立ち上げるべく米国に渡りました。
米国事業の責任者として、プロジェクトを推進する最中、当時のトランプ政権の移民政策の影響で、ビザの更新がストップ。しかたなく日本に一時帰国し、日本からリモートで事業開発のやり取りを進めていました。当初はすぐに下りるだろうと思っていたビザの再申請も、雲行きが怪しくなってきました。
ビザが取得できるあてもなく、14時間の時差のある米国とリモートで仕事をし続けるのは難しくなってしまったんですね。
ゼロからプロダクトをつくるチャレンジがしたい
これからどうしようか──。自分に改めて向き合ったとき、「自分でゼロからプロダクトをつくることにチャレンジしたい」という気持ちが湧き上がってきたんです。
それまで勤めていたユーザベースやニューズピックスでは、創業社長の参謀的な役割を担っていました。周囲も僕にはそういう役割が向いていると評価していた。
しかし、これまでは参謀という役割を引き受けてきただけ。「自分もイノベーターとしてチャレンジしたい」という気持ちがあることに気づいたんです。
もし外に出てチャレンジするとしたら、今が、そのタイミングだ。そう思ったら、ワクワクする気持ちが抑えられませんでした。自分の心に従おうと、ニューズピックスを辞めて、起業を決意しました。
つまり、アイデアより先に、とにかく「起業」がありました。
勝負をするなら興味関心のあるHR領域で
では、いったいどんなプロダクトをつくるのか。どうせやるなら、自分が興味関心のある領域で勝負したい。キーワードとして浮かんだのは、教育やダイバーシティ、グローバル、組織などです。
最初に注目したのが、採用領域です。HRの中でも採用は別予算が組まれているため、企業はお金を出しやすい分野です。
採用のプロセスは、営業プロセスと似ています。営業は、〈リード(見込み客)獲得→ナーチャリング(顧客育成)→案件成立→カスタマーサービス→クチコミによる拡散→次の顧客獲得>というプロセスを踏みます。
採用でも案件を管理する「採用管理ツール」は多くあります。しかし、採用したい人材をプールして、ナーチャリングするプロセスがマーケットでぽっかりと空白になっていました。
従業員データを結びつけて採用のナーチャリングができる人材データベースが構築できれば、この空白のマーケットが取れるはずだ。そんなふうに考えたんです。
ビジネスパーソンのデータベースとは
この人材データベースについてもう少し具体的に説明しましょう。人材データベースの中で、従業員データと照らし合わせて、自社と相性の良い人材をプールします。その人材が転職しそうになったらアラートが飛んできて、採用に結びつけることが簡単にできるようになる。人事にとっては、ハイパフォーマンスな人材を効率的に採用でき、その効果をフィードバックすることで、費用対効果も明確にわかります
これならいける! そう考えて開発を検討し始めますが、すぐにボトルネックがあることに気づきました。SNS上でのビジネスパーソンの動きをトレースできなくなったのです。
ちょうどSNS上で得た個人情報を他社に許可なく提供できないという規制がスタートして、Facebookでは友達リストの連携サービスが終了した頃でした。Facebookより規制がゆるいものにはTwitterがありますが、少なくとも当時はビジネスパーソン向けのSNSとはいえませんでした。
日本には名刺交換サービスのSansanもありますが、Sansanのデータは社内向けのクローズドです。つまり、誰がどんな人とつながり、どういう活動をしているかをトラックできる、元となるデータベースにアクセスができませんでした。
社外と簡単につながるチャットツールの可能性
ビジネスアイデアが行き詰まったかのように見えましたが、それが逆にピボットとなりました。ビジネスパーソンのオープンなデータベースがないのであれば、それをつくればいいじゃないか、と。
ビジネスパーソンのSNSを分析していくと、日本ではFacebook Messengerをビジネス用に使うケースが目立ちます。しかし、日本の使い方は世界では特殊ケースなので、FacebookがグローバルでMessengerをビジネス最適化することはなさそう。世界的なビジネスパーソンのSNSツールというとLinkedInですが、日本では普及にまだ時間がかかりそうです。
つまり、ビジネスパーソンのオープンなSNSデータベースは日本には存在していない。ここに、チャンスがある。では、どんなプロダクトをつくればいいのか。そう考えたときに浮かんだのは、Slackのようなチャットツールでした。
SlackやChatWorkなどのチャットツールは、まだ社内向けの位置づけが主流ですが、社外とも自由にチャットができるツールのニーズは確実にあります。今、日本でそれを担うのがFacebook Messengerですが、よりビジネス仕様に最適化したツールを開発すればFacebook Messengerをリプレイスできるはずだ、と。
チャットで面倒なのが日程調整だった
ただし、チャットツールの普及には、相手も使っていることが重要なポイントです。新しいチャットツールを開発して利用してもらうには、“乗り換えるきっかけ”が必要でした。乗り換えてもらうには、もっと簡単で便利、これまで面倒だったことを解決してくれるような何かが要るということ。
じゃあ、僕自身がチャットツールで面倒に感じていることは何だろうと考えて、行き着いたのが「日程調整」でした。みなさん、日程調整をするときは、メールやチャットツールとカレンダーを見比べて、日時をテキスト入力するという手間をかけているはずです。これって、ものすごくアナログで面倒な作業ですよね。
この日程調整をもっと簡単にできるサービスを展開する。それをフックにして、チャットツールに乗り換えてもらおうと考えたのです。
こうして今のSpirのビジネスアイデアの原型が決まったのは、ニューズピックスを辞めてからすでに4カ月が過ぎていました。
カレンダーだけでデータベースは作れる
早速、日程調整カレンダーの開発に着手するうちに、「チャットツールがなくても、カレンダーだけでデータベースになるのでは?」と考えるようになります。
カレンダーには、いつ誰と会うという情報が含まれていて、人の動きをデータとして蓄積できます。そう考えると、あえて新しいチャットツールをつくるより、日程調整の機能を最大限便利にしてシェアを拡大するほうが先決だと考えました。
そこでまずは、プロダクトを日程調整に特化。シンプルだけれどもカレンダー上で日程調整が完結できるものを目指して開発を進めることになったのです。
ただ、日程調整ツールをつくることが最終目標ではないのは、最初から明確です。プロダクトを最もよいものに成長させシェアを拡大する。その後、ベストなタイミングでチャットやプロフィールの機能を追加すればいいと今は考えています。
コロナ禍が転機。アプリからPCファーストに
紆余曲折を経て開発したα版が、2019年12月にようやくリリース。しかし、その直後にコロナ禍に突入してしまいます。外出先で移動時間に日程調整ができるようにアプリ開発も着手していましたが、外に出かけて人に会うこと自体が無くなってしまいましたため、アプリ開発を中止しました。
そこでzoomなどのオンライン会議ツールとの連携を急ピッチで進めると同時に、PCでの操作性アップに注力。これまでになかった新しい日程調整ツール「Spir」として2020年11月にβ版のサービスをスタートしたのです。
今は日程調整ツールを提供しているSpirが、実は、「その先」を見据えているということを知っていただけたのではないでしょうか。
次回は、社名「Spir」に込めた思いについてお伝えしたいと思います。
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