見出し画像

「実践文法」ってなんだ?

定期レッスンのリストに、いつもある「実践文法」。でも、一体何をするレッスンなのかよく分からないため「教材による文法学習とはかなり異なります」と注を付けましたらば。
「それってなんですか?」と質問をいただきました!

説明不足でごめんなさい。
異なるなら、何が異なるのか説明が必要ですよね。

ということで久々のポストは、実践文法レッスンの「内容」について、もうちょっと詳しくご説明したいと思います!


文法のレッスンとは

皆さんもご想像の通り、最初に本文(スクリプト)があって、新出単語を学んだら、その課に学ぶ文法の説明を聞き(読み)…
これがいわゆる、教材をなぞっていくタイプのスタンダードなレッスン。

もちろん、それは必須の学習内容です。
しかし、同時に悩んでいませんか。
教材の内容は理解できるし問題もきちんと解けるけど、実際は「学んだことが活かせていない」「会話が全然できない」と。

教材と現実には、大きなスキマが立ちはだかっています。みなさん、そこにハマってしまうのです。
考えてみてください。教材にあるスクリプトのやりとりを、実際にそっくりそのまま言う時は訪れますか?きちんと解ける練習問題を、答えの通りに答える機会は?
きっとありません。
あなたの話したい理由と、登場人物のそれは異なるでしょうし、そこにいる相手はあなたの友達にはなりません。
では、我々は教材から何を学んでいるのでしょうか。
そして、なぜこんな風に、スキマができてしまうのでしょうか。

あなたの答え

基本的に、教科書や試験に出てくる問題には答えがひとつしかありません。
文章は、誰が読んでも誤解の無いように構成され、また、答えが複数あると考えられる問題は、試験ではご法度、つまり無効とされます。
ですから、必ず答えはその課で、あるいはそこまでに学んだ内容で答えられるようにできています。

つまり一番基本の「型」を提示してくれ、そこに出てくる言葉を他の単語に「差し替える」、そういう方法を学習(=練習)していくのが教材です。

そこに、あなたの答えはないのです。
あなたが使いたい言葉はないかもしれません。
自分で、差し替えて練習しなければならないのです。
教材で学習して来たみなさん、それをやってきましたか?
ご自身の事を話すために「あなたの答え」を言うための練習を、してきましたか?


教材の現実

では、学習したことが活かしきれないのは、本当にあなたの練習量だけの問題なのでしょうか。

言葉を正しく使う方法を提示してくれる教材ですが、そこにある問題の一部には、状況が設定されていません。話者が置かれた状況、つまり細かいシチュエーションは書かれていないことが多いのです。
どういう意味でしょうか。
これまで、あなたが出会ってきたであろう類の問題から、例を出してみます。

「キボムさんは何時に帰りますか。」
これを韓国語で言ってみます。
教材マスターの皆さんなら一発で丸がもらえる答えが出せるはずです。
それでは、声に出して言ってみて下さい。どうぞ。





"기범 씨는 몇 시에 집에 가요? / 돌아가요?" 
このあたりの回答で、丸がもらえることでしょう。

では、以下の状況ではどうですか。

キボムさんは自分の息子の友達です。
我が家でチキンとビールを楽しんで、酔っぱらったキボムさん。床で寝てしまっています。時間はもう23時。正直ちょっと迷惑です。早く帰って欲しい。あなたは息子になんて言いますか?

"기범 씨는 몇 시에 집에 가요?"
のような、平坦な言い方をするとは思えません。

"야, 기범이가 도대체 몇 시에 집에 가는 거야..?"
私ならこれくらい言いたいです(笑)。

教材が求めてくるのは、
「キボムさんが何時に家に帰るのか訊ねる」
というタスクをこなしましょう、ということだけです。
キボムさんは誰なのか、また言うべき台詞は誰の、誰に対するものなのか、またここはどこなのか。そんなことは、問題には載っていません。

「早く帰って欲しい」という気持ちであることも書かれていませんし、キボムさんは寝ているのですから、キボムさん本人へのセリフではないわけですが、それも書かれていません。当然、語尾が 가는 거야..? になることは想像し難いでしょう。

もうわかりましたよね。あなたはこのシチュエーションに置かれたとき、自分の「早く帰って欲しいのに…」という気持ちを表現することができない可能性があるということです。


状況を設定すると見えてくること

先ほど、ご自身のことを話すため、あなたの答えを言うための練習が必要だと書きました。キボムさんの例でも感じたように、教科書に書かれている日本語を韓国語に直すことと、あなたの頭や心の中身を韓国語で表現することは同じ行為とは言えないのですから、別途の練習が必要だと言うことになります。

問題に答える前に、自分で状況設定をきっちりする。そうすると、答えにはいくつものパターンが生まれることが分かります。
これらの沢山のパターンに触れておくこと、そしてそこから言葉を紡いでいく練習をしておくこと。この経験がなければ、いざ会話!となっても、感情のない、ただの文章を、声に出して読むだけとなってしまうでしょう。


では、さっそくですから、ひとつやってみましょう。

「お腹がすくでしょう。」

これを、韓国語で言ってみましょう。

あなたは今どこにいますか。誰といますか。
ひとりごとですか。誰かに言ったのですか。
誰の「お腹」について言ったのですか。
「すく」のはいつですか。いつもですか。数時間後ですか。
そもそも、なぜお腹がすくのですか。

会話は、これらに代表される「状況設定」が大前提となって進んで行きます。つまり、状況によって、答えも、台詞の内容も、時制も、話し方も、全て変わってしまうのです。
答えは、ひとつじゃないのです。

あなたの答えは何ですか。
それは、あなたが判断し、決めなくてはいけません。
それが出来てやっと、その時の状況や自分の感情に見合った文法項目や表現方法を選ぶ段階へ進むことが出来るのです。


朝から町内会のごみ拾いに参加。町会長さんがおにぎりを配ってくれました。 「お腹がすくでしょう?」これでも食べて。

娘は友達と映画に行くようです。11:45上映のものを予約して、お昼ご飯は終わってから食べると。えっ、そんなに遅い時間に食べるの?「お腹すくでしょう…」

育ち盛りの男子学生って、すぐ「お腹すくでしょう」。だから、からあげも、卵焼きも、焼き肉も、ご飯も大盛りですよ。


どうでしょうか。日本語は一緒でも、全て異なる表現になるはずです。状況設定が異なるからです。
どうですか?あなたの答えは、ありましたか?
相手が聞きたいのは、模範解答ではなくて、あなた自身の答えなんですよ。


実践文法、一緒にやりましょう!

多くの韓国語学習者は、何度も「日本語と似ている」「前から順番に入れ替えるだけ」という文言を見聞きしてきているはずです。確かに、そういう一面もあります。また語順のみならず漢字語が多用されることなど、日本人にとってかなり得な言語であることは皆さんもよく知っている事実でしょう。

ですが、これらの言葉をそのまま鵜呑みにして学習に活用し、硬い盾にしてしまっては、より自然で、より多様な韓国語表現を練習に取り入れることへの障壁となってしまうかもしれません。
韓国語で話そうとするならば、韓国語で考え、韓国語で相応しい言葉を選んで並べていくのが本来の形のはずです。

自分がなにか言う時に、どんな部分に注意し、どの言葉を選び、セリフをどう終えるか。その道筋を立てるための実践練習こそが、発話や会話が苦手な人に必要なことではないでしょうか。

そして私は思います。
与えられた状況に合った言葉を選ぶという作業を、なかなか出来ずに苦しむ方が大勢いるのに、そこに手を差し伸べない、そういうレッスンが用意されていないのはおかしいのではないのか?
話せる人達の会話を聞いて、立ち去るだけの会話レッスンに、本当に意味はあるのか?

だから、自分の力で、置かれた状況を理解し、どんな言葉を取り出してくるべきか?なぜそれを言うのか?をしっかり理解し使い分ける。
その練習と実践の場を「実践文法」レッスンとして準備しました。

興味のある方は、ぜひお問合せ下さい。

サポートしてくださったら飛び跳ねて喜びます🤹‍♀️✨ 学習イベントの準備に使わせて頂きます📖 감사합니다.ありがとうございます🙇‍♀️