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チャイコフスキー:ピアノ曲集「四季」 作品 37a

Pyotr Tchaikovsky:The Seasons OP. 37a
ピアノ:ワディム・ハイモヴィチ
Uproaded:2018年03月21日

00:00 1月 炉端にて : At the Fireside
05:21 2月 謝肉祭 : The Carnival
08:19 3月 ひばりの歌 : Song of the Lark
11:00 4月 松雪草:Snowdrop
13:51 5月 白夜 : White Nights
18:30 6月 舟歌 : Barcarolle
23:46 7月 刈り入れの歌 : Reaper’s Song
25:38 8月 収穫の歌 : The Harvest
29:06 9月 狩りの歌 : The Hunt
32:10 10月 秋の歌 : Autumn Song
38:36 11月 トロイカ : On the Troika
41:49 12月 クリスマス : Christmas

「ピアノ曲集「四季」作品 37a」 が作曲されたのは、1876年、彼が36歳の年、富豪の未亡人ナジェジダ・フォン・メックさんから資金援助を申し出られた年で、一躍有名人の仲間入りを果たして元気凛々の時期でした。

チャイコフスキーは、ピアノ協奏曲 第1番を作曲した1875年、
「ル・ヌーヴェリスト」と題された定期刊行物を編集していた出版社の
ニコライ・バーナードからの面白い提案を受諾します。

1875年12月、バーナードはこんな発表をしてロシア知識人読者たちを魅了しました。
「我らの、著名な作曲家 P.I.チャイコフスキー君が、1月から12月まで毎月、季節のテーマに沿ったピアノの作品を提供してくれることになりました!」

 この12の月毎のテーマに沿ってシリーズ曲を作る、という提案を受け入れ、 翌1876年、一年を通じて、チャイコフスキーは毎月の曲をきちんきちんと
書上げ、譜面を出版社に提供していきます。
毎月の作品にはロシアの人気の高い詩人の作品が選ばれ、チャイコフスキーはその詩に曲を付けていったのです。

これらの12曲は、美しい音による「絵画」でした。
洗練されたメロディと、詩とが結びついた感傷的な表現が組み合わさって、誠に幻想的でナイーブなピアノ曲集となりました。

チャイコフスキーは作曲の機会を与えられた喜びと同時に、ロシア知識人たちに高度な曲を提供できるか、彼らの評価を得られるか、心底ビクビクしていたと謂います。
その為でしょうか、曲集の最初の方は、少しばかりおっかなびっくりなメロディですが、次第に、堂々たる曲想に変化していきます。

彼の心配は”杞憂”にすぎませんでした。彼のピアノ曲集は、彼の天賦の才を見事に証明し、押しも押されぬ有名人に押し上げてくれたのです。


本日ご紹介する曲を演奏してくださった ワディム・ハイモビッチ
( Vadim Chaimovich ) さんは、リトアニアのピアニスト。
YouTubeで1億5000万回以上の視聴回数のフレデリック・ショパンのノクターンは、最も人気のある録音の一つと謂われています。

この『四季』という曲集の、素朴で、ひなびた、といいつつ、幻想的で
美しい旋律にピッタリの演奏をしてくれておられます。


以下は、蛇足かもしれませんが、よろしければお読みくださいませ。

ロシアの作家・翻訳家で、児童文学作家・詩人でもあったマルシャークが
書いた「森は生きている」という児童文学がありまして、私スピン幼少の頃の大の愛読書でありました。
この「森は生きている」というお話は、ロシアやチェコ・スロバキア地方で
広く知られた『十二の月たち』という民話を下敷きにした物語です。
『十二の月たち』の始まりはこうです。

心の綺麗な、そしてとびっきり美しい娘マルシュカは、森のなかの一軒家に継母と義姉と三人で暮らしています。

継母は自分の娘は可愛がりますが、家事や、きつい労働は全部マルシュカにやらせます。それどころか、何とかして追い出してやろうと企んでいます。

一月の或る日の夜のこと、「マルシュカ、山からマツユキソウの花をつんできてちょうだい」と言いつけます。
ロシアの厳冬の一月の雪の中、マツユキソウが咲いている訳はないのですが、そんなことには全くお構いなく「摘んで戻らないとただじゃおかないよ」と家から追い出してしまいます。

マルシュカが寒さに震えながら、森の中までやってくると、焚火が見えるではありませんか。そして、その火の廻りを囲んでいたのは…。

「12人の月の精」が火を囲んで新年を祝っていたのです。
白い髭をたくわえ杖を持つ威厳タップリの一月の精から、「お嬢さん、今はお嬢さんが一人で森の中にやってくる季節ではない。何かわけでもあるのかね?」と訊かれ、マルシュカが訳を話すと、若い素敵な青年の三月の精が、「それは可哀そうだ、何とかしてあげねば!」と・・・

続きは、https://cenecio.hatenablog.com/entry/2015/12/31/232653 にて
是非お読み下さいませ!


⇒ では、ここで、
  着実に作曲家の名声を高めていくチャイコフスキーを追いかけてくる
  ロシアの若い後輩たちの作品から、リムスキー・コルサコフ作曲の、
  交響組曲:シェエラザード 作品35 を、次にお聴きください。


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