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宝塚歌劇団「ロミオとジュリエット B日程版ブルーレイ」がでることのすごさ

先日、私の愛する宝塚歌劇団から、ある商品がリリースされた。

それがこれ

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ミュージカル『ロミオとジュリエット』 B日程版ブルーレイ

である。

「いや、普通に宝塚のミュージカルのブルーレイでしょ?よくあるグッズじゃない?」
と思いのノット宝塚ファンの方に、今日はこのブルーレイがどれだけすごいのかをお知らせさせていただきたい。

①宝塚におけるロミオとジュリエット(特に今回)

 そもそも宝塚において「ロミオとジュリエット」は「ベルばら」とまではいかないのかもしれないけれどかなりのヒット作で、すでに色んな組で、いろんな人たちによって再演されている。

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(久しぶりに見れた公演ということもあってしょっぱなから泣いてしまいましたことをここに告白します)


 ストーリーは皆様ご存知シェイクスピアの悲劇「ロミオとジュリエット」がベースになっている。ヴェローナの街の二大名家であり、永遠の憎しみの関係にあるキャピュレット家とモンタギュー家、そこの娘であるジュリエットとロミオが恋に落ち…王道オブ王道の悲恋物語だ。
 
 もともとは2001年にフランスで上演されたミュージカルをベースとしているのだけれど、宝塚だけのオリジナル要素として、「愛」と「死」という二つの概念が役として存在しており(元のミュージカルだと「死」だけが存在)、セリフは一言も発しないのだけれど、華麗なダンスと動きによって物語に緩急と言うか号泣をつけている。

そして今回のロミオとジュリエットは、礼真琴さん率いる星組が上演した。
 この「礼真琴」×「ロミオとジュリエット」という組み合わせが、ファンにはえげつないのである。

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(左の薔薇持ってるイケメンが礼真琴さん…ちなみにここにうつってる人皆女性です…かっこよすぎんか。)

 今まで宝塚で上演された「ロミオとジュリエット」5回のうち3回に出演。『愛』の役では慈愛に満ちた踊りを披露し、『ベンヴォ―リオ』の役では優しさに満ちたロミオの親友役を、そして新人公演(七年目以下の団員のみで公演中期間中に一回だけ行われる)で射止めたロミオ役ではその後のスター街道を感じさせるようなロミオっぷりを見せてくれた・・らしい。この頃はまだ宝塚ファンじゃなかったから見れていないのが悔しくてならない。

 そして今回は満を持してのトップスター就任後、つまりは礼真琴の本気のロミオが見れる・・・!となって、礼真琴ファン、星組ファン、宝塚ファンの目を開演前からハートにさせたのである。

・・・いかん、こんなことではいつまでたっても本題にたどり着けない!

そろそろブレーキをかけて、次は日程について説明したい。

②そもそも「日程」とは。

 ミュージカルや演劇の世界ではWキャストというものがしばしば存在する。
 
これは、例えば「ミュージカル 桃太郎」というものがあったとして、

「主役の桃太郎は、A日程の場合は1号さんが、B日程の場合は2号さんがやるよ!」という風に、日程によってその役を演じる人が変わる、というシステムだ。

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これには色々なメリットが多分あって
 ①一つの舞台で色んな人を出すことが出来る=色んな人のスキルアップにつながる
 ②色んな人が出るということは色んな人を客として呼びやすい
 ③体調管理がしやすい
 というものがある。(のだと思う)

 ところが宝塚はこのWキャストの代わりに「役替わり」というシステムを採用している。
 これは
「A日程の時には桃太郎役を1号、鬼役を2号さんがやるよ!でもB日程の時には桃太郎役は2号さんで鬼役は1号さんがやるよ!」
 というもので、つまりは同じ舞台で立ってる人も同じだけど演じてる役が日程によって違うというシステムなのですね。

やくがわ

(ある時は桃太郎、ある時は鬼。それが役替わり)

 これがどれだけハードなシステム化というと

①同じ舞台で自分が演じている役を別の日には他の人がやっているからごっ ちゃになる(対立する相手役とかを演じたりする)
②つまりは覚えるセリフ・踊り・歌が倍
ファンは色んな●●さんの一面を見れて何回もいきたくなるから金がいくらあっても足りない
 という、「これって誰か得してるんだろうか…」と文字だけ見ると思ってしまうシステムなのだ。

 そして今回のロミオとジュリエットでは、トップとトップ娘役によるロミオとジュリエットこそ固定されているものの、後はA日程B日程で色んな役替わりが起きていたのだった。

 そして、ここで一番肝心となるのが、宝塚の今までの役替わり公演(つまりはロミオとジュリエット)で、DVD等で販売されるのは「A日程」の方で、B日程はそのおまけで「B日程ダイジェスト映像」などが着いてくるだけだったのだ。

ここ、超重要ポイントです。

③今回のロミオとジュリエットB日程で起きた奇跡「愛ちゃんの死」

 そんなハードスケジュールのロミオとジュリエットにおいて、今回は化け物のような奇跡が生まれてしまった。それが

 愛ちゃんの死

 である。これはツイッターのトレンドにも上がってきて、知ってる人は涙を流しながら頷き、知らない人は「え、なんじゃこりゃ?」となるものだった。ちなみにこの時某卓球選手の色んな問題があった時期なので、このトレンドで全然違うことを考えた人もいたらしい。

 この「愛ちゃんの死」は、きっちり訳すと

 ロミオとジュリエットB日程で愛月ひかるさんが演じる「死」の役がやばい。言葉にできないくらいかっこいい。やばい。

 ということである。

 愛ちゃん、こと愛月ひかるさんは宝塚歌劇団星組のナンバー2で、クールな顔立ちとキレッキレの踊りに定評のある、けれどトークをさせるとめっちゃ面白いという強靭なハートの持ち主で、今回のロミオとジュリエットでは 

 A日程=ティボルト(ジュリエットのいとこ役 ある意味悲しい青年)
 B日程=死(全体に漂う死の概念を具体化した役)

 の役替わりをしていた。

 そして、このB日程で演じていた「死」が、かっこよすぎたのである。

 宝塚を見ていて「かっこいい」なんて日常茶飯事だ。そんなの宝塚に行ってミュージカルを見たら百万回は言ってしまう言葉だ。「キャーカッコいい!」と男の僕も我を忘れて心の中で叫んでしまうのである。

 けれど、愛ちゃんの「死」は違う。
 銀の長髪に黒い衣装を着、ある時は本当に空気が切れるんじゃないかと思うような踊りを、ある時は本当に時間を止めるんじゃないかと思うような舞を、僕らに見せつけてくる。

 口をポカーンと開けたまま
「え…かっこよすぎる…」
 と言ってしまうくらいのカッコよさだったのだ。

 あえて言うなら「絶望的なカッコよさ」とでもいうのだろうか。このカッコよさの前に人はもう何も抵抗できないし、圧倒的にそのカッコよさに飲み込まれるしかない…みたいな。気になる人は本当にどうにか見ていただきたい。すごいから。生で見たらもっとすごかったから。

 この愛ちゃんの死かっこよすぎる事件は、多くの宝塚ファンを巻き込み、口を開けば「もう、死がかっこよすぎて…」というどこの中二病だと言いたくなるような言葉が出てきてしまうのである。

 けれど同時に、この段階ですでにロミオとジュリエットのブルーレイについては「A日程の販売で、B日程はダイジェストで見れるよ」というアナウンスが宝塚からされていた。
 僕らは「そりゃそうですよね…」と思いながらも、「B日程が全部見れるものがあれば…」と思いつつ、夜空にそっと願いを託したりしたのだった。

 そう、ここまで来たらもうお分かりですね。
そんな願いが叶い、ある日宝塚からアナウンスが出たのです!

「ご好評につき、B日程版のロミオとジュリエットも発売します!」と!

 これは宝塚歌劇団の長い歴史の中でもかなり異例のことだと思うし、きっとそれだけ「B日程だけのブルーレイがあれば…」と夜空に願う人が多すぎて、本当に隕石か何かが宝塚に落ちたのかもしれない(だとしたら物騒だけど)。

いずれにせよ、ファン歓喜。即予約。昨日到着。即日鑑賞。なのである。
 
ご自宅で何回も見れる「愛ちゃんの死」のすさまじさ。そしてブルーレイだからこその迫力ある映像、画面の大きさ…最高。

 それにしても最近は世の中に「何かを願っても無駄だ」なんて無力感が溢れることも多い。

 けれど「いや、願ったら叶うし、思いは届くんだ…」という、この世の見方すら変えてくれるのが、このB日程版ブルーレイなのだ。だって、絶対生まれなかったものを、願いによって生み出せたのだから。

④そうするとA日程も欲しくなる

 B日程を満喫できる環境が整ってしまい、もはや敵なしに思われたのだけれど、そうなると今度は「え、じゃあA日程もみたくなってきちゃった…」となるのが人情ってものである。結局僕は多分近々A日程のブルーレイも買って「あぁん!愛ちゃんのティボルトもすてきぃ!」と叫ぶことになるのだろう。

 そういう意味では完全に宝塚の手のひらでころころ転がされてるような気もするのだけれど、それでもいい、このころころ転がされる揺れの中で、今は穏やかに眠っていたいの…とファンとしては思いつつ、次のチケットこそSS席取りてぇなと思うのであった

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 ちなみに全然触れてませんでしたが、トップの礼真琴さんもあほみたいにカッコよくて、トップ娘役の舞空瞳さんが本当にかわいすぎて死ぬかと思いました。あと、乳母もいいんだ、乳母も…(永遠に感想を述べながらフェードアウト)

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