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#10 ダイエットのお話 その1~生活習慣病をなんとかしたい~

ダイエットは大切な薬の一つ

私は総合診療医で田舎で医療をしていました。そこは過疎地であり、外来はもちろん、病棟、救急外来、訪問診療をこなす必要があります。私にとってはとてもやりがいがあり、月に半分くらいしか満足に寝ることができない状態でも夢とやりがいをもって働いていました。

外来にはたくさんの患者さんがこられます。基本、私は遅刻はしますが、朝からはじめて、夜20時くらいまでご飯も食べずに外来をしていました。高血圧、糖尿病、脂質異常症、不眠症など多岐にわたりましたが、そのほとんどは生活習慣病から起因するものでした。もちろん関節リウマチなどの自己免疫疾患、悪性腫瘍の方々もおられますで、すべてではないですが、生活習慣によって引き起こされる疾患が多かったです。その疾患が進行すると、脳卒中や心筋梗塞を起こして、救急外来に運ばれてきます。苦しんでいる患者さん、ご家族を目の当たりにすると、患者さんが元気にこられる外来でどのようにアプローチしたら良いのか、考えるようになりました。

生活習慣を変えるアプローチをするのはとても手間暇がかかります。そして、生活習慣病は肥満から引き起こされる疾患がとても多いのが知られています。食事習慣も含めて相談することは、忙しい一般外来の中では十分にすることができません。だから、看護師、柔道整復師、マッサージ師、カイロプラティック、エステシャンなどの医療スタッフの方々と一緒にダイエットの勉強会を定期的に開いて、社会の中でダイエットをすすめていき、生活習慣病を改善していこうという戦略を立てて実行していきました。コロナ禍でいったん中断していますが、また再開したいと思います。

そこで話している講演内容を記事にしたいと思いました。私はまず状態を理解することが、人生を生きやすく幸せに生きる上でとても大事にしています。だからダイエットでもその原因を理解していきたいと思います。前半は医学的にどのように理解しアプローチできるかをお話します。後半は仏教の知恵をダイエットに役立てていこうという内容です。20話くらいの長い話になるかもしれません。よろしければお付き合いください。

カロリーのお話

そういう理由で肥満についての講演会をよくしていたので、今回その講演をまとめていこうと思います。最初は西洋医学的な話をしていきますが、のちの仏教の知恵から考えるダイエットの成功法則を話したいと思います。まずは肝中の肝、カロリーの話です。体重の維持や変化は、摂取カロリーと消費カロリーのバランスに依存します。摂取カロリーが消費カロリーよりも多い場合、体は余剰エネルギーを脂肪として蓄え、体重が増加します。逆に、消費カロリーが摂取カロリーよりも多い場合、体は脂肪をエネルギー源として利用し、体重が減少します。お金の収入と支出、貯金と借金の話を同じです。収入より支出が多ければ貯金として貯まり、支出が多ければ、貯金が減ったり、借金が増えたりするという話ですよね。単純な話ですがとても大事なことなので頭に入れておいてください。

消費カロリーについて

消費カロリーで最も大きな要素は基礎代謝です。体が生命を維持するために必要なエネルギーで、心臓の鼓動や呼吸、体温の維持など、安静時に消費されるエネルギーです。一般的に、全消費カロリーの約60-75%を占めます。そして、食事に付随して食事誘発性熱産生があります。食事により摂取した栄養素を消化、吸収、蓄積、利用する過程で消費されるエネルギーです。全消費カロリーの約10%を占めます。そしてみなさんがよくされている身体活動によるエネルギー消費があります。日常生活活動(例:歩く、階段を登る等)や運動(例:ジョギング、ウェイトトレーニング等)により消費されるエネルギーです。全消費カロリーの約15-30%を占めます。

一日の消費カロリーを計算しよう

消費カロリーは、その人の体重、身長、年齢、そして一日の活動量によって大きく変わります。基礎代謝率(BMR: Basal Metabolic Rate)を算出するための一般的な公式は、ハリス・ベネディクト方程式として知られています。これはインターネットでポチポチ項目を埋めるだけで計算してくれるサイトがたくさんあるので、わざわざ計算しなくて大丈夫です。このBMRが基礎代謝に必要なカロリー数を示します。しかし、これは完全な安静状態での消費カロリーなので、日常生活での消費カロリーを求めるには、さらに活動レベルに応じて修正する必要があります。例えば、あまり運動しない人はBMRに1.2を掛け、軽い運動をする人は1.375を掛け、適度に運動する人は1.55を掛け、激しい運動をする人は1.725を掛け、非常に激しい運動をする人は1.9を掛けます。この計算方法によって、あなたの一日に必要な消費カロリー(TDEE: Total Daily Energy Expenditure)を求めることができます。

基礎代謝の計算

一日に必要な消費カロリーの計算

自分のことを知ることから始まります

そして摂取カロリーと消費カロリーの収支バランスでエネルギーを脂肪をエネルギーとして蓄えるか、燃焼するかだけの話なのです。そしてこの単純な話ですが、それをコントロールするのがとても難しく、栄養学、運動学、料理、自己啓発といった多くのカテゴリーにまたがり、数えきれないほどダイエット関連の本が出版されている現実があるのです。それだけ種々にわたる本が出版されるということは、これといった打開策がないということです。万人に対して、これだけすれば大丈夫といったハウツーは存在しないことは、私たちが抱えるすべてのテーマに共通します。自分なりの考え方、やり方を見つけるしかありません。たくさん勉強して、たくさん行動して、たくさん経験して、たくさん感情を評価して、自分の考え方、やり方、生き方を見つける以外ないのです。その勉強の1つに私のブログを活用してくださったら、とても幸せです。

Reference: Tsuguya Fukui. The Ecology of Medical Care in Japan. JMAJ, 48(4), 163-167, 2005.
日本肥満学会(編) (2016). 肥満症ガイドライン2016
新谷隆史 (2018). 一度太るとなぜ痩せにくい?食欲と肥満の科学. 光文社新書
草薙龍瞬 (2015). 反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」. KADOKAWA/中経出版


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