01.声が消えてゆく恐怖の中で(プロローグ)
何も気にせず夜が過ぎ、また夜がくる。何十年と変わらず歌い続けた帰り道の河原でいつかの一言を思い出した。
「その声でよく持つなぁ、、」
私は、十五歳から音楽の道へ進んだ。全てはそこから始まる。
音痴だし歌う事が大っ嫌いで過ごして来た幼少時。そんなに綺麗な声ではなかった気がする。そう、少し痰が絡んだような声だった気がする。
しかし、そんな昔のことなど鮮明に覚えている訳もなく …。
あっ、でも、時折母が私に「んんっ!ってやってから話をしなさい!」と
言ってた記憶がある。(んんっ