【感想】初の横ミスホラの大賞受賞作、原浩の『火喰鳥を、喰う』は一気読みのサスペンスだった
こんにちは、山本清流です。
横溝正史ミステリ&ホラー大賞は、僕も応募していたので、個人的に受賞作は気になっていました。
今回、読了したのは、原浩のデビュー作、『火喰鳥を、喰う』です。普段は読了後に書評とか感想とか書かないのですが、この作品は面白かったので!
ストーリーとしては、戦争で亡くなった死者の日記が届くところから始まり、それをきっかけにして、周りで次々と怪異が発生していくのを、どうにか止めようと挑んでいく主人公たちの物語です。
映像的な美しさが随所に挿入されているのが個人的に好みだったのですが、それだけじゃありません。
まず冒頭で提示される死者の日記というのが、とても魅力的です。そこから引き込まれていって、さらに火喰鳥のエピソードで心は鷲掴みされました。そのあとはほとんど一気読みでした。
実は、ハリーポッターシリーズを読んでいる途中だったのですが、あのハリーポッターをさしおいて、読んでしまった小説です。
不気味な雰囲気がきっと僕は好きなのでしょう。
怖さという意味ではあまりですが、不気味という意味では十分でした。
オチは案外にストレートな感じがしましたが、そのオチに持っていくまでに読者を右往左往させる技量がある(僕は右往左往しました)し、必要十分な文章はとても読みやすいです。
タイトルには火喰鳥とありますが、単純に、怪物に襲われるだけのホラーにしなかったのも成功していると思えました。
現実が徐々に改変されていくという展開と、「こっちが立てば、あっちが立たない」というテーマ性がうまく絡み合っていて、ラストシーンではキレイなオチが決まった! スッキリ、という感じでした。
読むのが遅い僕ですが、この作家は追いかけてみたいと思いました。次作以降で、どんな世界を見せてくれるのか、期待したいです。
それに、今回の作品では設定上、恐怖を煽るというのは難しかったかもしれないですが、技量のある作者だと思うので、テーマの選び方によっては「怖い」作品も書けるのではないかという気がします。
ホラー作家よりもサスペンス作家としての適性がありそうな気はしますが、どういう方向に進んでいくにせよ、期待して待ちたいです。
ということで、ひさしぶりに一気読みさせてくれた『火喰鳥を、喰う』でした。
個人的なオススメです。
では。また今度。
(恐怖を味わおうと読むと失敗すると思うので、楽しくて不気味なサスペンスを読もうというスタンスがいいと思います。まあ、人によりますけど)