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UXデザイナーが「ユーザー中心設計」で新オフィスデザインに挑む

こんにちは。スパイスファクトリー(以下、スパイス)の劉です。
本記事では、スパイスのデザインチーム「Interface & Experience Design Division(以下、IXD)」でUI/UXデザイナーとして働く私が、新オフィスのデザインにユーザー中心設計(User-Centered Design:以下、UCD)アプローチをどのように取り入れたかをご紹介します。ユーザーとの共感を基点にして、ペインポイントを明確に定義するまでの一連のプロセスとその手法について解説します。


UI/UXとの出会い

私は中国出身で、千葉大学大学院で都市計画について学び、卒業後は商業施設のデザインや企画、開発、環境計画の業務に従事していました。
その後、デザインシンキングとユーザー体験を重視した領域で働きたいと思い、UI/UXの世界に飛び込みました。
スパイスの入社面接では真剣にポートフォリオを見ていただき、その姿勢に好感を持ちました。また、業務形態がクライアントワークなので、多様なプロジェクトで視野を広げながら問題解決スキルを向上させることができると考えました。併せてユーザビリティやエクスペリエンスへの理解を深める絶好の機会だと感じたため、入社を決めました。

UI/UXそれぞれの分野での業務

私はUXデザイナーとして入社しましたが、現在はUIデザインも担当しています。要件定義や情報設計などユーザー体験に関わる課題に対処しながら、同時に表層のデザインやプロトタイプの制作と言った具体的なインターフェースのデザインも手がけています。クライアントの要望や期待への理解と調査や分析を通じた客観的なデータの収集により、ユーザビリティの向上や問題の解決に取り組んでいます。

社員のニーズを色濃く取り入れた新オフィスデザイン

デジタル分野でのUXデザイナーとしての強みを、実際の空間デザインにどのように活かし、どのような意義ある成果を生み出すことが可能でしょうか?

1.チームメンバー

新しいオフィスへの移転プロジェクトの一環として、5人の社内チームを結成しました。このチームには、UXデザイナー2名、総務担当者、ディレクター、エンジニアが含まれています。インテリアデザインに関しては、外部のインテリア内装会社に依頼しました。

2.私たちの強み

前職では公共空間デザインの仕事を担当しており、利用者と直接交流することが難しく、提案後はデベロッパーに委ねられる形でした。長い施工プロセスを経ても、利用者のニーズが本当に満たされているかは確認できませんでした。
それに対し、UXデザイナーの強みはユーザーへの共感とユーザー体験の向上にあります。デジタル分野に加えてリアルな環境においても、デザインに取り掛かる前にしっかりとユーザーの視点に立つことで、素晴らしいものづくりが可能です。

3.新オフィスデザインのプロセス

UCDは、製品やサービスの設計プロセスにおいて、最終的な利用者や顧客のニーズ、期待、行動パターンに焦点を当てるデザインのアプローチです。
UCDでも取り上げられている「User First」は、スパイスのコアバリューでもあり、新オフィスデザインプロジェクトの基盤となります。また、私たちはデザインシンキングで挙げられる「共感する」、「定義する」も意識的に取り入れました。

※コアバリューについては以下の記事をご参照ください。

3.1.現地調査と行動観察

旧オフィスを分析すべく、現地調査を実施しました。社員たちの行動を観察し、習慣やペインポイントを特定しました。

旧オフィスの写真
旧オフィスでの会議の様子

3.2.社内アンケートとユーザーインタビュー

全社員へのアンケートを実施し、不満点や新オフィスへ期待すること、会議室の使用状況など幅広い意見を収集しました。また、「設備」、「作業環境」、「コミュニケーション」、「休憩スペース」といった項目のシステムユーザビリティスケール※で評価を行いました。
その結果、移転前のような部署毎に分かれているフロア配置や限られたパブリックスペースでは、活発なコミュニケーションが困難だったことが明らかになりました。そのため新オフィスでは、少人数で意見交換が可能で景色の綺麗な窓際のスタンティングデスクや広大な休憩スペース、東京オフィス出社社員が全員で集合できるスペースなど環境が整備され、社内のコミュニケーションが活性化しました。

※システムユーザビリティスケール:ユーザーに一連の質問に同意するかを問う単純なアンケート。回答者は5段階で回答する。

他にも、アンケート結果からは突発的なコミュニケーションを促進するためのアイデアが多く浮かび上がり、フリーアドレス制度やアート空間、雑談と作業を組み合わせたスペースなどが導入されました。

不明瞭だった具体的なニーズや課題についても、各部署の社員1〜2名にインタビューすることでインサイトを得ることができました。エンジニアは作業に集中するために個室が必要と考える一方で、「集中スペースに閉じこもると仕事が滞ることがある」といった建設的な意見もありました。

最終的に、個人で参加するオンラインミーティングから3〜5人の会議、そして全社員が参加するイベントまでさまざまな場面に対応できる多様なスペースを実現することができました。

3.3.空間形態のプランニング

分析結果を「要望リスト」にまとめて、インテリア内装会社と協力し、ユーザーのニーズを踏まえた空間プランを策定しました。

UXデザイナーが携わったオフィスデザイン

昔は空間デザイナーとして、クライアントの好みを優先することで利用者の本当のニーズを見失っていた時期がありました。しかし、新オフィスプロジェクトではUXデザイナーとしてデザインシンキングを駆使し、UCDの原則にしっかりと基づくことを第一に考えました。その結果、インテリア会社に自信を持って要望を伝えることができ、ユーザーの実際の体験や期待を重視したデザインの決定に繋がりました。
改めて、「User First」なデザインの力強さを感じました。

新オフィスに移転した結果と今後期待すること

新オフィスでは、パブリックスペースがランチタイムや会社イベントなど様々なシチュエーションで活用され、社内のコミュニケーションが活発になりました。また、問題解決や機密性の高い会議に利用できる多様なミーティング空間が整備され、前のオフィスでは難しかった部署横断のコミュニケーションが実現しました。

新オフィスのコミュニケーションスペース

新オフィスに対する期待と願いは大きく、今後も協力とイノベーションを促進していくことを期待しています。例えば、Scrum@Scale※チームがオフィス利用に関する調査や改善を行い、社内の利便性向上を検討するなどのプロジェクトもありました。新しい環境が組織全体の発展に寄与することを期待しています。

※Scrum@Scale:チームだけでなく、組織全体にアジャイルを発展していくためのフレームワーク。

新オフィス:オフィス中央に位置し、東京オフィス出社社員が全員で集合できるスペース

記事を読んでいる方へのメッセージ

スパイスは私にとってプレイグラウンドのような存在です。業務においても積極的に提案・実践できる環境があります。個々の能力を発揮し、成長できる機会が豊富なこの環境は、達成感に満ちていて非常に贅沢で充実した体験が得られます。このボトムアップの姿勢が、スパイスをより良い場に進化させる一助となると信じています。

Writer: [Interface & Experience Design Division UX Designer] Yixuan Liu


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