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curry menu archive 15 タイカレー

15皿目はタイカレーです。

タイカレーといえばココナッツミルクのグリーンカレーを想像しますが、「もらった卵を使わないとなあ」
という不純な動機から始まった、全く違う角度のエキセントリックなカレーです。

『明太子とムール貝のトムカーイカの塩辛と大葉バター付き、無水チキン、豆カレー。
副菜に山芋のアチャール、蕎麦の実ペースト、卵のブリック、いちごのライタ、コゴミの天ぷら。』

当時のインスタに書いてありました。

ライスの上で割れているのが今回のカレーの発端である卵のブリックです。

ブリックってなんだろうと調べてみたけど、出てきませんでした。
おそらくブレクというトルコ発祥のパイのような料理だと思います。
Wikiによると東ヨーロッパのあたりで食べられているようです。
卵と一緒に詰められているタネはカレー風のマッシュポテトです。

久しぶりに豆カレーと無水チキンが登場しています。
固定メニューから離れてしばらく経っていますので、往年のOBの感がありますが、タイカレーの中にはまだ居場所がありました。
安定のスペックで、新しいカレーのまとめ役でしょうか。

ここまではタイの要素はなく、肉体労働者カレーという雰囲気ですが、そこに忽然と現れたのは、明太子とムール貝のトムカーという国籍不明の新人です。

トムは煮る、カーは生姜系のタイの野菜、明太子とムール貝のタッグで酸味強めのシーフードカレーに仕上げています。
前々回の高知福岡カレーで明太子の威力を実感したということで、連投に近い頻度で登場しました。
今回のタイカレーの花形です。
イカの塩辛大葉バターを添えてコクと旨味を抜け目なく追加しています。

最初はのびるという山菜でしたが途中でこごみへスイッチしました。
油でさくっと天ぷらにしています。
伸びるから屈みという流れはおそらく偶然でしょう。
カレー全体でいうと苦味のアクセントだと思われます。

そばの実のペーストは、そば粉でないところを鑑みるに、色の濃いそばがきのようなものだったのだと思われます。
東京では更科と呼ばれるまっ白なそばが好まれます。(落語調べ)そば殻は完全に排除して、そばの実のコアの部分を贅沢に使った高級品です。
殻ごと挽いた灰色のそば粉で打ったそばは田舎そばと呼ばれますが、(そば好きの基礎知識)そばの実のペーストということは田舎そばがきということになります。
ざらざらとした食感と素朴な野の趣です。

天ぷらとそばのコラボは蕎麦屋では定番ですが、タイカレーの副菜としてこっそり入り込んでいました。

山芋のアチャールは食感と酸味をプラス。アチャールはこちらを参照。

カレーにかかっている薄ピンクの輪がイチゴのライタです。
メニューを考えながら八百屋をぶらついていて何気なくいちごを手に取ったがいいお値段。
むう、と唸って勢いで買った成果がこのピンク色です。
フルーツに傾倒しているヨシフジの心情が表れています。

このワンプレートがタイカレーなのだそうです。

タイ料理に通底する味のバランスをヨシフジ流に別の形でアウトプットしたらこうなったということで、タイ人の味覚別解釈カレーといえそうです。

「このカレーで、関連のない食材を、味の予測を便りに狙って合わせにいく、ということができるようになった」

ということで、カレーはいよいよアートの領域に近づいています。
発端は卵の処理でしたが、心は錦です。

izonのタイカレーを食べた記憶のある方からのコメント、ご連絡をお待ちしております。
リアルな感想が発掘できれば随時追記予定です。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。
つづく。

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