見出し画像

0220あたしのこと自慢したほうがいいよ

私は制作ディレクターをしてご飯を食べている。
過去には現場でグラフィックを作ったりなんかもしていた。
まぁでもセンスや才能が無いんだ。
経験や知識でカバーできる内容には限界がある。
しかし「わけのわからない要望を言語化して視覚化する」センスと才能はあったみたいでなんだかうまくいっている。

それでも現場が嫌いな訳では無い。
私だって創りたい。
幸い私にその砂場を与えてくれる人がいる。
要点だけ伝えてあとは好きにさせてもらえる。
資料を作るのも得意なので(それが本業みたいなもんだしね)クリエイティブを作ったあと資料に落とし込むところまでできる。
私は一人でできることが好きだ。
楽しい。

しかし稀にそんな私の幸せの砂場に刺客が現れるのである。
要望が細かい割に軸がブレブレでわけがわからない注文をしてくるタイプだ。
最近対峙した刺客はなぞのイラストを持参してきた。
ここに貼り付けられるならば貼り付けたいくらいだ。

言葉で説明するとなると、そうだな…
謎の半面の顔から直接足のようなものが生えていて、おそらく口と思われる部位からヒゲなのか腕なのかわからないものが出ている。
私は送られてきたそれをそっと閉じて一旦見なかったことにした。
本業のクライアントより500倍厄介である。
だって「お客さん」でもないのだもの…プロボノですから…

しかし現実逃避もしていられないのでそのよくわからない顔みたいなものをふざけてgifアニ化して「こうかなあ」と動かして送ってみた。
なんでやねん待ちだったが、なぜだが刺さってしまった。
これはこれで使いたいと。
むしろなんでやねん。

ただ肝心の制作物が一向に進む気配がないので直接対面で話してその場でまとめることにした。
これぞ本業なので無敵である。
私はこれで食っている。
色々とこだわりのコンセプトを話してくれるのだが、いやブレブレやないかい。
「見ればわかります」タイプの客や…。
関西人ではないのに関西弁にさせてくる刺客よ。

しかしディレクターであれ制作現場であれ共感できるあの感覚がある。
カチっとはまる音がして何を作るべきが一気に鮮明化するのである。
ここからは割と無敵だ。
ゾーンに入る感じ。

皆に言いたい、ゾーンに入っているクリエイターの画面を覗き込んで途中で注文をするのはやめてあげてほしい。
終わったら聞いて調整しますから。
そこからはサクサク進んで微調整をしてさっさと終わった。

個人的に好きなクリエイティブが仕上がったかというとそうでもない。
でもいいんだ、依頼主が嬉しそうにしているのだから。
ただ砂場にはあまりお招きしたくないタイプの制作なので、セラピー的にすぐに別のものに着手した。
こちらは割と自分の采配で好きにできるほう。

クリエイティブを信頼しもらっていることがわかっているのって嬉しいとかいうより快感なのである。
まあ、そんな砂場をくれてる人、好きな人なのですけど。
彼に招かれざる刺客が送り込まれても嫌とは言えない。
恋愛とビジネス(ってほどでもないけど)を混同させるのはあまり頭の良い決断ではないという一般論もあるだろうが、後者ありきで出会い付き合いもできたので当たり前の感じもする。
これはこれ、それはそれ。
仕事の相性が良い人物と必ずしもプライベートでも仲良くなれるわけではないのと同じで、それが恋人となってくると更にハードルが高いように感じる。

多分私がやっぱりやりたくないといえばそれはそれで何か変わるわけでもないと思うし、私も無理をして何かをしてあげたことはない。
強要も期待もない(全く無くはないと思うけど)ので彼もやってもらえたらボーナス的に嬉しいし、義務も無理もなく好きにさせてもらえるので私は私で承認欲求が満たされる。
結果皆幸せなやつだ。

なんやかんや言って、結果的に彼の需要に私のスキルの供給が合ってよかった。
愛と存在しか提供できない恋愛なんてつまらんよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?