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【コラム】上野のアートで自然に寄り添う『大地に耳をすます|気配と手ざわり』

東京・上野に、自然に寄り添った作品たちが集結している。「大地に耳をすます 気配と手ざわり」というタイトルで、5名のアーティストがそれぞれ自然をテーマにして、インスタレーションや写真、ドローイング、ライブペインティングなどで表現されているのだ。

展覧スペースへ足を踏み入れると川村喜一のインスタレーションが視界に入ってくる。入場料の1100円を支払いエスカレータを降りると、ドローイング・写真・創作物を使っての作品群が展示されているエリアへ入る。

壁にカンヴァスがあったり、写真がぶらさっがっていたり、フロアーに創作物が展開されている。ひとつの方法で世界観を提示するのではなく、それぞれに見合った見せかたで、北海道の生命力が立体的に表現されているのだ。川村喜一は今も狩猟しながら知床で生活している。

次のフロアへ足を運ぶと環境音が聞こえてくる。藍と漆をつかい作品を表現するふるさかはるかは、木版画や紙への刷り込みを作品として昇華させている。藍と漆を原料で観れるのも貴重だ。水が滴る音が空間に響き、目だけでなく耳からも自然の気配を心地よく届けてくれる。

フロアを下がると鮮やかな色彩が視界を占拠する。ハイコントラストの作品群はミロコマチコによるカンヴァスへのペインティングと、中央に鎮座するインスタレーションだ。ライブペインティングで表現された作品は、強かに、そして自由に空間を振る舞っている。

隣の空間では倉科光子による草花のドローイングが展示されている。タイトルのほとんどが座標で、リアルに咲いている場所を示すものだ。キャプションにはそこで咲く理由が添えられている。津波で種が運ばれ、ありえない場所で根づき、繁栄する自然の生命力が感じとれる。

北海道根室にアトリエを構える榎本雄一は、冬の景色に魅了されて自然をテーマに表現している。縦長のカンヴァスには、黒いベースに白でペインティングされている。見れば見るほど黒と白の表情が浮かび上がる。シンプルな抽象画ではなく、根室の景色なのだ。

5名のアーティストによる表現と、自然との向き合いかたが展示されていた。カンヴァスにペインティングしたりカメラで写真を撮るだけでなく、より立体的に魅せる態度や見てもらうための工夫を凝らし、自然と向き合っているのだ。表現者たちはどこかで静かに生み続ける。


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