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日本の贅沢。春桜を求めて自転車で秩父郡小鹿野町を周遊

コラムを書くときに、どのような内容にしようか考えることがある。日記的な記述にならないように、というのがひとつと、季節に因むような文章を四季ごとに書いてみることのふたつをとりあえず決めている。

とはいえ、趣味で写真をやっている以上、季節ものの写真は自分の手で撮りたいというささやかな願望があるのだが、すっかり「冬」を想起させるような写真を撮りに行けてないことで、記事をすっぽかしていることに気付き、自分自身の愚かしさに身もだえる今日この頃である。

春を全面的に助長するような記事に仕立て上げるためにバチバチの桜の写真を撮りまくろうと、2024年の春の記事は都内でサクッと撮りに行けるようなところではなく、少し足を延ばした秩父郡小鹿野町を拠点にしようと決めた。

予定を立てていた4月10日は晴天に見舞われたが、前日の4月9日は災害級の暴風雨ということもあり、桜の花びらが吹き飛ばされてなくなるのでは...と苛まれた。桜の命は二週間ほどで散り、咲くタイミングを逃すと一年後なので、何はともあれ現地に向かうことが先決だ。

今回の桜を撮る場所は五ヶ所に決めてある。羽黒神社・長留のしだれ桜・武州日野駅・昌福寺・清雲寺だ。桜の名所といえるのは清雲寺のしだれ桜だが、写真に撮りにいく身としては人ごみを避けたいというのが本音のところ。

事前にグーグルマップで拠点を確認しnotionでまとめているのだが、確認した五ヶ所は距離がそこまで離れていないことが分かった。電車で西武秩父駅まで向かい、駅から徒歩五分圏内にレンタサイクルがあったので、自転車で周遊を試みたのだが体験談からの注意喚起がひとつ。

結論から言うと、自転車を借りるなら電動自転車にしようということ。永遠に続くとも思えてしまう山道にかなりの頻度で遭遇した。グーグルマップは距離を割りだすにはベストだが、高低差を踏まえていないのでレンタサイクルするなら気をつけよう。

呼吸がきれぎれになりながらも最初の目的地である羽黒神社につくと、心配していた桜の花びら問題は春空へ霧散していった。ほぼ満開のソメイヨシノとしだれ桜がそこには咲き誇っていた。春爛漫の景色が目にはいると間髪入れず写真を撮ることしか考えていなかった。

羽黒神社での開花状況を自分で確認できたことで、自転車で山みちを登っていく試練のような体験が報われたような気がした。また、羽黒神社付近を流れる長留川沿いを下っていくと、川沿いはしばらく長留のしだれ桜が咲き誇っていた。

多少の上り坂を交えながらも下り坂に身を委ね、武州日野駅へとむかった。途中そば屋があったのだが、定休日ということで閉まっていた。秩父はそばがうまいということで、気には止めていたのだが楽しみは次回に。

140号線に出てから武州日野駅へ。小柄な木造駅舎と桜との親和性がすさまじい。駅の敷地内に駐車場もあるので、目についたらつい寄ってしまう気持ちになるのも頷ける。車内から武州日野駅がしれっと見えたのなら、車を止めてしばし日本のわびさびに触れるのもまた一興だ。

15分ほど自転車をこぐと、次の目的地は昌福寺だ。民家を抜けた山肌にあるのだが、向かう途中からすでにふっくらとしたしだれ桜が目にはいるので、方角に迷うことはないだろう。こじんまりとしたお寺で、鎌倉の杉本寺を思い起こさせるような雅な寺だ。

今回の最終となる目的地にしたのが、しだれ桜が有名な清雲寺だ。グーグルマップでそれなりの評価がついていたことから人の出入りが多いと判断し、現場調査を前提で臨んだが正解だった。夜間にライトアップもあるということなので、次回は夜桜を撮りに行こうと心に決めた。

2023年の秋には奥秩父の川又で、自然のなかで孤独を堪能した。今年の春は、自転車で桜を堪能した。都内から気持ちひとつでサクッとアクセスできる領域にありながら、ひと気のないような場所に向かえるという令和の贅沢。季節感を出せる記事にするため誠意思案中である。


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