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理想の富士山を追い求めて清水へ ~富嶽三十六景と天の気分~

カメラで写真を撮り続けるためのコツとして、僕はテーマを決めている。毎回テーマに従って写真を撮りに行くというよりも、時間が確保できたら遠くへ行けるので、そんな時はテーマの中の行っていない場所へ向かう、というスタンスをとっている。

テーマは「富嶽三十六景」で、どこかしらに富士山が入るという構図だ。この富嶽三十六景というのは、今は亡き世界的なアーティストである、日本人画家の葛飾北斎による作品群である。とある場所から富士山をみるとこんな景色に見えるよ、という俯瞰図だ。

wikipediaで調べればサクッと作品群が調べられるので、ライトなテーマとして構えていたのだが、実際にその場にいくと軽くショックを受ける。富嶽三十六景という作品通りに見える場所と見えない場所があるのだ。

今回は静岡県の清水へ向かうことに決めていた。そして、富嶽三十六景のなかで清水をとり扱っている作品はNo.18の「駿州江尻」ということで、写真撮影の参考に照らし合わせてみると、いったいどこらへんで撮ったのかわからない。

グーグルマップで「江尻宿」と調べると旧東海道の江尻宿をフォーカスするのだが、これっぽっちも駿州江尻感がないのだ。写真撮影において個々人の表現は自由なので、全く同じものは撮れないと早々に断念し、「富嶽三十六景の駿州江尻っぽい写真」へマインドを変えた。

No.18の「駿州江尻」は、街道を歩いている商人の持ち物が強風で飛ばされているシーンだが、野原の街道を歩いているように見える。少ない情報から手繰り寄せた結果、清水の風通しがいい場所で撮影を試みようということに決めたのだ。それが三保の松原だ。

三保の松原に決めたパワーワードは3つ。松の木・強風・ひらけている、ということ。ここまで決まればあとは三脚をたてて撮影するだけ。ただ、今回は写真を撮ることができなかった。曇りのち晴れという天気が変わり、翌日まで曇りとなってしまった。

富士山だけを気にかけていても一向に表情を見せる気配がしないわけで、雲を拝み続けることでしかなくなってしまった。「富嶽三十六景の駿州江尻っぽい写真」を撮るというテーマは消化できなかったので、またいつの日にか持ち越しとなった。写真あるあるだ。


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