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■夏きたる。アニメと、音と、小説と。

季節は夏である。春・夏・秋・冬という4つのレイヤーがあるが、次の季節へ移るための準備期間にも、日本には移りかわりの趣がある。まさに今なんかは春から夏にかけての夏準備ゾーンと呼べる境地で、カッと晴れる日もあれば、しとしと雨が一日中降ってたりする。

夏本番を前にして、おのずと自然にとる行動がある。テーマや背景が夏の作品に触れることだ。服がまとわりつくじめっとした季節に、突き抜けたような青を夢見てしまうのだ。アニメ・音楽・小説、どの媒体においても日本は本当に抜かりなく夏作品が揃っている。

アニメでは夏の定番として新海誠の作品があるが、メジャーな夏作品として『君の名は。』『天気の子』がある。美しく魅せることが本当に上手な新海作品は、梅雨にぴったりのアニメもキッチリ装填済みで、文学と梅雨をおり交ぜた『言の葉の庭』が秀逸だ。

梅雨とは対をなすように、どこまでも晴れ渡るような作品『サイダーのように言葉がわきあがる』では、俳句にしないと自分の気持ちを言葉にできない少年の物語がまぶしい。たくさんのペンギンたちとの謎解きが心地よい『ペンギン・ハイウェイ』も心を晴れやかにしてくれる。

夏に聴きたくなる音楽も日本は万全である。『真夏の果実』をはじめとしたサザンオールスターズは夏ソングだけで何曲もある。松任谷由実『真夏の夜の夢』のイントロは耳に残るし、米津玄師『カムパネルラ』は何回聞いたかわからない。

夏を感じる小説は、本屋と図書館でも待ち構えている。森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』は京都を舞台にしたポップな世界観が楽しい。米津玄師『カムパネルラ』のベースになっている宮沢賢治『銀河鉄道の夜』で星座を眺め、太宰治の『斜陽』は詫び寂びが梅雨にぴったりだ。

「夏」というタグに的を絞ると、夏色の作品群が大量に待ち構えている。梅雨に突き抜けたような空の青さを求め、待ち遠しくジタバタするのが日本人としての正しい態度なのだ。これからはじまる夏祭りや花火大会にむけて、ざわつく魂に寄り添い、夏らしく振りまわされよう。


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