STEMIでの責任血管と誘導


①前壁梗塞:LAD(前下行枝)
・典型的には,V1-V4のST上昇といわれている.
・その中でも,
V1が上がっていれば,#6.
V2,V3が上がっていれば,#7.
V4が上がっていれば,#8.
が目安になる.
・Ⅱ,Ⅲ,aVFのreciprocal change(鏡面像)が現れるが,そこまで感度は高くなく信頼をおいていい所見ではない.
・Ⅱ,Ⅲ,aVFのreciprocal change(鏡面像)が強く,ST変化が1mm以上であれば近位LAD,ST変化がそれ以下であれば遠位LAD,というのがある程度参考になる.

②側壁梗塞:LCX(左回旋枝)
・Ⅰ,aVL,V5,V6のST上昇が現れるのが典型的.
・Ⅲ,V1のreciprocal change(鏡面像)が見られることもあるが,これも信頼をおいていい所見ではない.

③下壁梗塞:RCA(右冠動脈) or LCX(左回旋枝)
・Ⅱ,Ⅲ,aVFのST上昇が現れるのが特徴的.
aVLのreciprocal change(鏡面像)が現れることがあり,これがST上昇に先行する場合もあり,非常に重要な所見.
・ST上昇がⅡ>ⅢであればLCXの梗塞,ST上昇がⅡ<ⅢであればRCAの梗塞.
・aVLのST変化>1mmであればRCAの梗塞,<1mmであればLCXの梗塞.
(下壁梗塞は後下降枝が責任血管であり,これは80-90%でRCAから分岐するが,残りはLCXから分岐する)

④後壁梗塞:RCA(右冠動脈)
・V1-3でST低下,R波増高,T波増高,などの所見がが現れる.
・V1-3でR波/S波>1(R波のほうが高い)が現れる.
・通常の心電図撮影においては,これらのreciprocal change(鏡面像)の情報を拾い集めるしかない.
・実際に後壁梗塞は急に発症したAVB・SSS,心エコーの所見,などで拾い上げるべき.
・これらの情報から後壁梗塞を疑えば,背部誘導(V7-V9)のST上昇を確認.

⑤右室梗塞:RCA(右冠動脈)
・V1誘導や右胸部誘導(V3R-V6R)でのST上昇があることが多く,特にV4RでのST上昇が右室梗塞に特異的.
・Ⅱ,Ⅲ,aVFのST上昇が同時に現れることがある.(下壁梗塞に合併することが多いため)
・後壁梗塞と同様に右室梗塞は通常の誘導だけでは拾い上げにくく,急に発症したAVB・SSS,心エコーの所見,などで拾い上げるべき.


まとめ
①ST変化のパターンからある程度責任病変の予測ができる.
②aVLのST低下は下壁梗塞に先行する可能性があるため早期発見に役立つ.
③後壁梗塞・右室梗塞は通常の心電図撮影では拾い上げにくく,症状などから疑った場合は右胸部誘導や背部誘導の撮影を躊躇しない.


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