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タッチフット戦術クルーズ

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タッチフットボール(アメフト)の戦術・技術・トレーニングについて解説します
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#フラッグフットボール

タッチ&フラッグドリル|頭上を越していくパスをカットしよう

DBの見せ場、頭上のパスカット今回は、下の動画で、ダリアス・ウィリアムズが見せたような、素晴らしいパスカットに近づくドリルを紹介します。 冒頭のパスカットと、33秒からのパスカットで、ジャンプしながらギリギリまで手を高く伸ばしてボールを指先ではじいているところに注目してください。 このようなプレー、つまりタッチ&フラッグフットボールで、「自分の頭上を越していくパス」をカットするときには、指先でボールの「腹」を「横から叩くイメージ」をもっていると上手くいきます。 指先カッ

さくらボウル 最後の3プレーが不必要とされる理由

さくらボウル2021に関して、追記しておきます。 武庫女大が26-6とリードした第4Q、残り時間16秒、敵陣12yds付近で攻撃権を得た武庫女大オフェンスは、ニーダウンせずに3度攻撃しました。 私は、選手の気持ちも理解できるものの、こうした場合に、観客の「居心地の悪さ」はどこから来るのか、その理由を①から④まで述べます。 ①残念ですが、勝敗に何ら影響を与えないと分かっている攻撃は、フェアプレーといえないであろう。アメフト的なスマートさ(限られた時間の中での勝利可能性の最

女子タッチフットボール全日本王座決定権 さくらボウル2021について 結果 武庫川女子大学 26-6 虹翔♾

快足TDと2インターセプトで魅せた虹翔 虹翔の攻撃は、武庫女大の早いラッシュを浴びつつも、隙間にパスを通しながら、特長であるエース#18モエ選手の快足TDにつなげたところはとてもよかったです。 第3Qに、全部を使い切る長いオフェンスドライブを見せましたが、あれを始めに出せていれば、戦術的に効果的だったでしょう。 ディフェンスも、あれだけ速い武庫女大のラン&シュートに対応した箇所が多く、その中で#42梅原選手が2本のインターセプトをとっています。好選手揃いだと思います。

「弾道」を意識してパスの投げ分けを上達させるドリル

タッチフット 2020ファイナルタッチ 一般女子決勝の記録

今回、ファイナルタッチの一般女子決勝をオンラインで見る機会を得ましたので、戦術面で気づいたことの記録をしておこうと思います。 最初に、選手・関係者それぞれに葛藤を抱えたシーズン運営の中で、タッチフットボールを愛し、できる限りの活動をした皆さんに敬意を表します。 結論 右サイドの慎重さが攻防に影響虹翔∞ 25 - 13 ワンパック ワンパックは強い、しかし、守備の右サイド(SCB側)がやや慎重だったため、意図せず全体の動きが「反時計ローテーション」になり、その結果、QBロ

動画あり|対空力について考え、鍛える~タッチフットの『それ以外の部分』

空中戦に強くなるには?タッチ&フラッグのコーナーバックの皆さん、いつもレシーバーに取り負けていませんか? 私もそうでした笑 しかし、それは対空力のスキルを高めることで改善することも、賢く回避することもできます。 下の図を見て下さい。 (画像出所:NFL YouTube channel) この空中戦を制した、ホプキンスは身長185cm、他方ビルズの3人のDBの身長は #21 ポイヤー 183cm #23ハイド 183cm #27ホワイト 180cm と、ホプキンスはサ

タッチフット 2020秋 関西一般女子決勝の記録

今回、関西一般女子トーナメントの決勝を見る機会を得ましたので、感じたことを個人的に記録しておこうと思います。 このゲームでは、チームを引っ張る選手の気迫と、コンディション、タッチにおけるフラッグ経験者のプレー特徴が目を引きました。 試合のおおまかなポイント優勝チームは「虹翔∞(にじかけるえいと)」 強豪の関西アウィリーズとの対戦で、先制したのち一度は逆転される難しいゲームを19対18で制しました。 虹翔∞は、QBのミヤ選手、そしてNTのモエ選手の二人のコンディションが良

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タッチフットの『それ以外の部分』~カットバックの縦上がりトレーニング

私たちはアスリート能力に自信がなかったので、『それ以外の部分』での優位性を追求してきました。 この動画は、タッチフット初心者にカットバックを身につけてもらうための、最後の段階のドリルです。間合いに入るときの足運びと、その後の縦上がりの感覚を習得します。 ※練習中なので、精度は高くありません(特に縦上がりができていません)。 これは、スポーツで初めてカットバックを踏むという人に、効率的なステップを理解してもらうメソッドです。 当時はアメリカのYouTubeやアメフトの英書テキストが情報元でしたが、カットバックを基本から説明する資料は見つかりません。 ハンドボールの日本代表コーチに聞いても、女子選手向けのカットバックメソッドは「特にない」とのことでした。 そこで、実際のゲームのビデオからステップの理論を確かめて、誰でも基礎から学べるようにしました。 ところで、ランアフターキャッチを「団体戦術」として考えたときに、優れたキャリアーとは「ブロッカーの背中をうまく使える」キャリアーです。 ブロッカーの背中を上手く使うためには、状況判断と競技特性に合わせた効率的なステップワークが必要になることは言うまでもありません。 では、タッチフットボールの競技特性に合ったステップとは何なのか。それは次回にします。

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タッチフットの『それ以外の部分』~スナップ前にDFのゾーンをずらす仕掛け

今日も思いつきでタッチフットの楽しさについて書きます。 前回「シフト」で使ったプレーを、今回はモーションに変えて、ディフェンダーの認知のずれを誘います。 前回紹介した動画 https://note.com/ishidatomohiro/n/n424f0193079a と今回の動画は、別のゲームですが、同じシチュエーション(ゴール前3ヤード、DFは3-3システム)です。<左右は逆です> 前回のプレーでは、レシーバーがシフトして、SF(3-3のDBの中央)の視線を外したところへのGパスでしたが、今回はレシーバーがモーションして、タイトエンドくらいの位置まで動かしたところで即スタートします。 前回は、3-3のDBのうち中央に位置するSFの視点を外すのが目的でしたが、今回は、画面手前側の左CBのゾーンの変化の瞬間をついています。 微妙な位置へのモーションによって、アサインメントミスが生じ、左CBのゾーンがドロップダウンする(下がる)左エンドのゾーンとかぶり、中央のゾーンが空きました。 細かく言うと、DFは手前側のエンドが引いてのエンドゾーン4分けという任務です。 セット → 左CBの任務は左から2番目のゾーン → モーション → 一番左のゾーンに変わるか変わらないかのところ → スタート → 一番左のゾーンに変更するもエンドに伝えることができない → モーションマンに2人カバーした →中央のゾーンが空く → センターにパスがヒット ところで前回のDFはエンドゾーン3分けに漏れをセーフティー、という任務でした。相手のアサインメントを完全に見切ることはできませんが、ある程度は傾向を調べて、DFの認知をずらす仕掛けを考えます。 相手チームは、日本一の常連で、本当にタフでタイトなディフェンスを敷いてきます。ガッチリ向き合うとオフェンス選手にほとんどスペースを与えてくれない厳しい相手です。 こうした、技術優位、スピード優位などの優位性がなかなか発揮できない状況でも「認知の揺さぶり」を仕掛け続けることで、ディフェンスを崩すチャンスが生まれてくると考えています。 ▼その他の「揺さぶりの戦術」については、 https://note.com/ishidatomohiro/n/n40109760cf68 に書いてありますので見てください。

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タッチフットの『それ以外の部分』~横に入るブロック練習のファーストステップ

タッチフットの楽しさについて続けます。 今回の動画は、パス以外のゲインを優位に運ぶためのブロック練習のまさにファーストステップのドリルをおこなうシーンです。ブロック練習をする初日の映像です。 これは、初めてタッチフットをする人に、効率的なブロックの概念を理解してもらうためのメソッドです。われわれの最強ブロッカーはいつもここから生まれます。 練習では「縦に組まずに横に入る」ことを確認します。ブロックできても縦に組むのは次につながりません。この動画のようにDFが次の瞬間に動くであろうポイントに入り込むことを身につけます。 この戦術的なポイントは「体力を使わずに判断を向上する」ところです。 全国のうち限られた3~4チームを除いては、最後に必ず自分よりも運動能力が高い選手とマッチアップすることになります。(私たちはいつも全国ベスト8かベスト4でそうなります) そのときにフィジカル優位で身につけたプレーは通用しないため、あらかじめ体力を使わずにフィジカル劣位で通用するプレーを体得します。 (われわれはいつも小チームで攻守兼業の中、大きなチームと戦いますので、その意味でも『エコモード』とよぶスタミナを使わない戦術を必要とします) タッチフット(アメフットもフラッグフットも)のパスゲームは「パスを捕球するまでのゲーム」と「パスを捕球してからのゲーム」という二種類のゲームがミックスされた構造だと以前述べました。 そのうち、捕球してからのゲームを優位に進めるファクターは、ブロックと走法(カットバック)です。 タッチフットは自由なスポーツなので、自分で好きなように上達すればよいと思いますが、チームの全員が素質によらずに確実なレベルアップをするには、適当で易しい練習メソッドが役に立つのは言うまでもありません。

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タッチフットの『それ以外の部分』~判断を重視するサイドスクリーン

近めのバブルスクリーンを例に「それ以外の部分」について書きます。 毎日頭の中身を書くと自分の浅さがさらされますが、何もさらさないよりはマシです笑。 1プレー目、タイトレシーバーが、遠ざかりながら受ける 2プレー目、ゴール前で便利に使う など、色々なルック(見た目)から展開することで、多少の使い回しが効きます。この『ルック』も心理戦の上で大変重要です。 戦術的な使い方としては、たとえば、左右のCBが固定のチームに、相手CBに不慣れな下級生などが入っているサイドで、こちらのベストブロッカーを当てます。<技術的優位> 相手CBの足が止まった後半に初めて出すと、さらに有効なようです。 さて、このサイドスクリーンの特徴は、ブロックはレベルの高いものが必要になりますが、パスのやりとり自体が簡単にできる点です。 スピードに乗ったレシーバーにパスを次々ヒットさせるのは、アメフットの華ですが、それを強豪レベルにするノウハウをあいにく持ち合わせませんでした。 そこで、差別化をコンセプトにして、他のチームが目をつけない部分を徹底することにしました。 プレー内容をシンプルにして、その分「自己判断」を重視するのもそのひとつです。「判断力」を高める練習に多くの時間を費やします。 ところで、1プレー目と2プレー目のあいだは、実は3年がたって、チームの判断レベルが上がっています。 1プレー目の頃は、ラインマンが自己判断にまだ不慣れで、どう動いていいか迷いながらプレーしています。 しかし、2プレー目の頃は、ラインマンは自分と相手の動きを予測して状況判断をおこなっているため、動きに迷いがなく、見るからにブロッカーの機能性が上がっています。

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タッチフットの『それ以外の部分』~スクリーンブロック

今日もタッチフットの楽しさについて、思いつきでお話しします。 これも第一級に楽しいシーンです。プレーはオフセンターのランです。 少し地味ですが、右レシーバーのブロック意欲をみてください。 そこまでやるかというくらいに最高です。 私たち<郡山勢>はアスリート能力に自信がなかったので、徹底的に『それ以外の部分』での優位性を追求しました。 今回の『それ以外』はスクリーンブロックです。 われわれの流儀は、エースを助けるセカンドレシーバーに「もっともブロックが上手なレシーバー」を置くことです。(タイトエンド的な選手) 全国レベルの男性選手たちが言及するように、タッチフットではパスプロがもっとも重要です。 それは「パス」というゲームを成功させるためにQBに時間が必要だからです。 一方で、アメフットのパスゲームは「パスを捕球するまでのゲーム」と「パスを捕球してからのゲーム」という二種類のゲームがミックスされたゲーム構造をしています。 このとき、あらゆるチームが「パスを捕球するまで」に磨きをかけてきますので、われわれはそれに比べて激戦化していない、「捕球してからのゲーム」つまり、ランアフターキャッチの部分での優位を磨くことにしました。 ランアフターキャッチの部分は、突き詰めればその技術は、ブロックと走法(カットバック)になります。 この部分を強化することで、自然に、ランプレー、キック&パントのリターン、そして、インターセプト後のリターンが強力になっていきます。

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タッチフットの『それ以外の部分』~スナップ前の仕掛け

タッチフットの楽しさについて、思いつきでお話しします。 この動画は、最高に楽しい、ちょっとした仕掛けのシーンです。 その仕掛けは、スナップ前のシフトです。 この状況では、ツインでセット → SFの位置が悪い(OFにとって空いていてほしいスペースをウォッチしている) → オーディブルで内レシをシフト → SFが移動・アサインメント変更 です。 ※SFは3-3配置のDB3人のうち中央 何が効果的かというと、SFはシフトによって役割と視座が変わり、フォーカスポイントがリセットされます。ついでに身体の角度も変えさせます。 これはマジックでいう「フォーシング」に似ていて、OFを動かすことで、DFのフォーカスを「見てほしくない」ものから外すことが狙いです。フォーカスが外れた瞬間、そのゾーンやレシーバーはマークしづらくなります。 理想的には、あと半タイミングスナップ出しを早くすればよいと思いますが、ゲーム中のQBになかなかそこまでは要求できません。 この仕掛けで、なお感じが悪いときは、強行、または勝負所であればタイムアウトです。タイムアウトでは「思った位置取りに動かせなかったので」と伝えます。 頻繁には出さず、勝負所かDFを心理的に崩しやすいタイミングを待って引き出しを開けます。 定理: タッチフットでは、DFの並びはOFが決められる 私たち<郡山勢>はアスリート能力に自信がなかったので、徹底的に『それ以外の部分』での優位性を追求しました。 また何か紹介できればと思います。