見出し画像

雇用と犯罪の関係性②

犯罪を犯した付近で、しかも犯行時と同じ服装でウロウロできる時点で、かなりヤバい奴ってのがわかっていただけるかと思う。

尾行開始

もちろん尾行を開始する。

立ち止まっては、色んな家を覗き込みながら歩くこの男の挙動を見ていると、窃盗常習犯なんだなというのがわかる。
調査員の私にとってこのまま自宅を割り出すことなんて朝飯前だが、尾行中に他の家の敷地に侵入して犯行を行なう事だけはやってくれるなよと思いながら約10分後、窃盗ジジイの自宅マンションが無事判明した。

予想通り近所だった。

ベランダを見ると、盗んだと思われる『オリーブの木』が見える。

『待ってろよ、必ず取り返す』

即座に警察に連絡し、一連の事情を説明して来てもらうことになった。
窃盗ジジイが否認したとしても『オリーブの木』の鉢には、これでもかってくらい私の指紋がついてるハズ。
マスクも手袋もせず、防犯カメラの存在に気づかないような奴は、指紋を拭き取るという事なんかきっと思いつかないだろう。
これで立証できるだろうと、思ってたら…

窃盗ジジイが出てきた!?

待てども待てども警察官は来ない。

まぁ、でも自宅を判明させたからもう大丈夫、ってこれが自宅じゃなかったらどうなるだろう。ずっと監視してないと逃げられるかもしれない…⁉︎二度と姿を現さないかもしれない…。
変なことばかり考えてしまう…。

すると、窃盗ジジイが出てきた!

何ィーー!しかもチャリンコで!
これじゃ逃げられちまう!

いや、もういくしかない、
こういう場合、お伺いは立てるような話し方はせず完全に決めつけた話し方をわざとする。相手に考えさせない。
おまえの事は全てわかっている、証拠も全て揃っているから逃げても無駄なんだということを短時間でわからせて、そして認めさせる必要がある。

自転車で逃げようとする窃盗の容疑者

私:『おい!人の物を盗むなよ』
男:『えっ、なんなんですか?』
私:『植物返せよ、犯行の証拠は全部揃ってんだぞ』
男:『!?』

窃盗ジジイのよだれが一気に噴き出した。
目がグルグル泳ぎだして、見るからにパニックを起こしているようだ。
自転車に乗って逃げの体制に入る…

私:『もうすぐ警察がくるから待ってろ』
男:『…』
私:『自首すれば罪は軽くなるからとにかく逃げんな』
男:『…』

全く耳を貸さない。
なんとか逃げようとする窃盗ジジイ。

自転車に乗る窃盗ジジイ

騒ぎで人が数人集まってきた。

見た目的には高齢者に文句を言ってる中年、どう見ても悪いのは私の方。
なんやかんやで、周囲に事情を説明しなくてはならなくなり、窃盗ジジイにとっては好都合の状況ができあがってしまった。

力づくで止めるわけにも行かず、結局逃げられてしまう。

『やっちまった…』
『もう、きっと戻って来ないぞ…』

その後、警察官数名と刑事の方が来られて事情を説明。

警察官に事情の説明

余計なことをしてしまった…反省。
とにかく、後は警察に任せるしかない。

調べていくと意外な事実も判明

当たり前の事ですが、窃盗ジジイは帰って来なくなりました。
警察の方には時間帯を分けて、ある程度の監視を数日間していただきましたが、部屋も真っ暗で帰宅してる様子もない。
野宿してるのだろうか。なんか心配になる。

一時はパニくって逃げたけど、たかが植物。
冷静に考えれば命懸けで逃げるほどの罪ではないっていう心境になればいいけど、他にとんでもない余罪があると考えればなかなか自首もできない事情もあるのだろうか。

あのヨダレの噴き出し方と、喋り方や挙動からして精神疾患がある人だとは思う。

そうこうしてる間に4ヶ月の月日が経ち、ベランダからオリーブの木も無くなって空き家になったようだ。
この時点で、もうこの件は迷宮入りがほぼ確定してしまった。

その後の調べで、窃盗ジジイに関してわかったこと。
判明した自宅マンションは賃貸ではなく分譲で、親から相続したものである。
窃盗ジジイは税金を滞納していて部屋を財産として差し押さえられ退去命令が出されていた。
そして、何らかの前科もある。

この3点だ。


財産があると生活保護は貰えない

当たり前の話だけど、財産があると生活保護は貰えません。
窃盗ジジイは、相続した親の財産(現金や自宅)があるから仕事をしなくても生活ができた、言い方を変えると財産があるから生活保護を受けれなかったとも考えられる。

一生遊んで暮らせるくらいの財産があるのかどうかは不明だが、彼が逃げる際に軽く会話した印象で考えると、まともに労働ができるような精神の人ではないと判断できる。

つまり、通常だったら生活保護を貰っていてもおかしくはない人ということ。


ここで、仮説を立ててみる。

親の生前中にも、何らかの精神疾患があったのがどうかわからないが、まともに仕事をせずに引きこもるような生活。

そんな中、親が他界して財産を相続。

タダで住める家と現金が手に入ったけど、裕福に暮していけるほどではなく、何も考えずそのままダラダラと暮らして、支払わなくてはならない税金等を放置。

相続税が発生するほどの財産だったのかどうかわからないけど、一戸建てだろうが分譲マンションだろうが、住んでる場所に対して一銭も何も払わなくていいことはなくて、マンション管理費や積立金、そして固定資産税が払えずに、その他色んな滞納が続いた結果、不動産を差し押さえられてしまった。
そして公売になった後も、居座り続けたので強制退去目前だったのではないかと思います。
もしかしたら引っ越ししたのではなく、強制退去があったのかも知れません。

こういう人って不幸なのかどうかわからないけど、世の中に結構いると思いますね。
親が死んだことを黙認して働かずに親の年金を貰い続ける人とかもそうだし、とにかくまともな思考じゃない。
少なくとも今回の男は、人の物を盗んで迷惑をかけているわけですから、こちら側からすると同情の余地はありません。

まとめ

今回、雇用と犯罪というテーマで書きましたが、無職の人の犯罪率は高いよねって話ではなくて、親の脛をかじって生きていた人の末路の例として、割と典型的と言うか、落ちぶれて無職になってしまったというより

『無職でも生活ができてしまっていた人』

こういう人は、多くの場合で今回の窃盗ジジイと同じような末路をだどる可能性が高いと感じます。

会社の立場で雇用というものを考えた時に、スケールしていく為の必要な戦力ということだけじゃなく、それ自体に様々な社会的意義があるし、救われてるモノもあるということを考えると、雇用を生み出せる会社の役割って、社会にとって重要なんだなと単純に思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?